コリン・ファレルが第79回ヴェネチア国際映画祭にてヴォルピ杯男優賞、第80回ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)を受賞した『イニシェリン島の精霊』が1月27日(金)に日本で公開されます。ファレルはマクドナー監督と『ヒットマンズ・レクイエム』『セブン・サイコパス』に続き、3度目のコラボレーション。親友からの突然の絶縁に悩む主人公の悲喜劇を大胆かつ繊細に演じました。親友コルム役には『ヒットマンズ・レクイエム』でもファレルと共演したブレンダン・グリーソン。お二人のインタビューをお届けします。(構成・ほりきみき)

巧みにコントロールされている悲喜の機微

──マーティン・マクドナーの映画に出演することの面白さはどんなところでしょうか。

ファレル:マーティンはとても真剣に、熱く目標を達成させようとします。目標を達成させるためにするべきことが分かっているので、それが舞台の稽古場であろうと、脚本家兼監督として映画を撮る場合であろうと作品のために全力を注ぎます。

それと同時に、マーティンには何ごとも楽しんでしまう度量があります。深く、心のこもった、優しさと思いやりによって生み出される、くらくらする感覚と遊び心がマーティンの作品を考えられないほど奇抜で、心から共感できるものにしています。観客は、映画の登場人物に自分を投影することができます。

喜劇と悲劇を混ぜたのは、マーティンが最初ではありませんが、同じシーンの中で次から次へと2つの要素を混ぜ、紡ぎ合わせるその巧みさは他に類を見ません。このシーンは悲しくて、あのシーンは楽しいといった単純なものではありません。ひとつのセリフの中で悲喜が入れ替わることさえあり、腹を抱えて笑ったかと思うと、心痛やる方ないという風に驚くほど広い振れ幅で変化します。

もちろん、ニュアンスに対する感覚は主観的なことで、ある人は感動的に感じることも、ある人には爆笑ものであったりします。しかしマーティンの作品では、そうした機微が実に巧みにコントロールされています。本当に見事なものです。

マーティンの脚本には独自のリズムというか、確固とした音楽性があります。しかし、それに縛られてはいません。はみ出したり、また戻ったり、役者の直感に預けて自由に解釈させたりと、とてもオープンです。役者のアドリブに対してマーティンがアイデアを出し、役者に広げてもらったりもします。とても素晴らしいやりとりで、映画に積極的に関わりたくなります。

マーティンには映画に対する驚異的な視点があり、その作風はくせにならざるを得ないのです。前にタッグを組んだ2作品より、この作品ではそれを一層強く感じました。マーティンは自信を深めていますが、いつもの繊細さも失っていません。というよりも、その自信がゆえに、より聞く耳を持つようになり、他の人の持ち寄るアイデアに今まで以上に興味を示しています。

コリン・ファレル Colin Farrell

アイルランド随一の人気俳優。『マイノリティ・リポート』、『マイアミ・バイス』、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』といったハリウッド大ヒット作から、『タイガーランド』、『クレイジー・ハート』、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』といった独立系映画のヒット作まで幅広い役どころを演じてきています。

ヨルゴス・ランティモス、スティーヴ・マックィーン、テレンス・マリックといった監督の食指を動かしてきた名優です。2008年にはマクドナーの初長編作品『ヒットマンズ・レクイエム』でブレンダン・グリーソンと共演。2人が演じる殺し屋コンビが殺しの依頼を受け、ベルギーに飛ぶものの仕事が中止となるという抱腹絶倒の作品で、ファレルはゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞しました。2012年に『セブン・サイコパス』に主演し、マクドナーとの再タッグを果たしています。

ブレンダン・グリーソン Brendan Gleeson

その卓越した演技で3度のアイルランド映画テレビ賞、2度の英国インディペンデント・スピリット賞、プライムタイム・エミー賞を受賞。大型作品では、ハリー・ポッター・シリーズの当たり役マッド・アイ・ムーディでその名を馳せ、『ブレイブハート』、『マイケル・コリンズ』、『ギャング・オブ・ニューヨーク』、『マクベス』といった映画にも主演しています。

また、テレビドラマ「チャーチル 第二次大戦の嵐」でのウィンストン・チャーチル役でもエミー賞を受賞している世界の至宝です。脚本家・監督マーティン・マクドナーとの初タッグは、マクドナーのアカデミー賞初受賞となった短編『SIX SHOOTER』(原題)。その後、2008年には、忘れ難い名コンビを生んだマクドナーの初長編作品『ヒットマンズ・レクイエム』でファレルと共演しました。

映画『イニシェリン島の精霊』は1月27日(金)全国ロードショー

画像: 『イニシェリン島の精霊』予告編│2023年1月27日(金)公開! www.youtube.com

『イニシェリン島の精霊』予告編│2023年1月27日(金)公開!

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<STORY>
本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの孤島、イニシェリン島。島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。賢明な妹シボーンや風変わりな隣人ドミニクの力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる。美しい海と空に囲まれた穏やかなこの島に、死を知らせると言い伝えられる“精霊”が降り立つ。その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた…。

『イニシェリン島の精霊』
1月27日(金)全国ロードショー

監督: 監督・脚本:マーティン・マクドナー「スリー・ビルボード」
出演: コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガンほか
2022年/イギリス・アメリカ・アイルランド /原題: The Banshees of Inisherin
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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