カバー画像:『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)Photo by Getty Images
オードリー・ヘプバーンが一世を風靡した1950年代
多くのSCREEN読者が好きな恋愛映画として挙げた『ローマの休日』(1953)は、1950年代を代表するラブストーリー。ローマで一日限りのデートを楽しむ王女と新聞記者。ふたりは強く惹かれ合うが、王女は思い出を胸に、自身の使命を全うする。
本作が今なお人気なのは、主演オードリー・ヘプバーンの魅力もあってこそ。『麗しのサブリナ』(1954)、『パリの恋人』(1957)でも、オードリーの可憐な魅力とロマンチックな恋模様を堪能できる。
1960年代はファッショナブルな作品が豊富
1960年代は、ニューヨークを舞台に同じアパートで暮らす男女の恋を描く『ティファニーで朝食を』(1961)、戦争に翻弄された男女の悲恋を描くミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)など、ファッションや音楽が魅力的な作品が豊富。
たびたび映画化されてきた戯曲の名作『ロミオとジュリエット』も、1968年にレナード・ホワイティングとオリヴィア・ハッセー主演で製作された。
SCREEN読者からは『卒業』(1967)を推す声も。将来に希望が持てないエリートの青年が人妻との情事に溺れるが、その娘と出会い、真実の愛を知る。
1970年代では“美しい愛”に注目
1970年代に入ると、愛することの美しさを描いた『ある愛の詩』(1970)がヒット。一流大に通う御曹司とイタリア系移民の女子大生が親の反対を押し切り結婚するが、病魔が彼女を襲う。
『追憶』(1973)も主人公カップルの出会いは大学だが、政治的信条の違いから別々の道へ。
『アニー・ホール』(1977)で描かれるのは、自己肯定感の低い40歳の主人公と、歌手を目指すヒロインの関係。恋の始まりには気にならない価値観の違いが、倦怠期には大きな違和感となってしまう様子がリアルだ。
読者の支持が厚い『小さな恋のメロディ』(1971)は、初めての“好き”という感情に素直に、結婚式を挙げようとする少年少女のひたむきさがいじらしい。
若者に焦点を当てた作品が豊富な1980年代
1980年代は、若者の恋愛と青春を描いた作品が豊富。『愛と青春の旅だち』(1982)は、海軍士官学校に入学した青年の心の成長と恋愛の物語。
ティーンの恋愛映画に定評のあるジョン・ヒューズが脚本を務めた『恋しくて』(1987)では、幼なじみに片思いする女子高生が描かれる。友情が壊れるのを恐れ、彼の恋を応援してしまう姿が切ない。
男女の友情といえばメグ・ライアン主演の『恋人たちの予感』(1989)も欠かせない。会えば口論ばかりだった男女が、11年かけてお互いの大切さに気付く。
1990年代はヒットした恋愛映画が盛りだくさん
好きな恋愛映画として読者から多く挙がったのは、1990年代の作品。豪華客船で出会った男女の運命の恋を描く『タイタニック』(1997)を筆頭に、亡くなった男性が幽霊として恋人を守り続ける『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)、人気シンガーと彼女を命がけで守る男性の愛を描く『ボディガード』(1992)、ジュリア・ロバーツ演じる娼婦のヒロインのシンデレラストーリー『プリティ・ウーマン』(1990)と、ヒット作が並ぶ。
ジュリア・ロバーツとメグ・ライアンは“ロマコメの女王”と呼ばれ、『ノッティングヒルの恋人』(1999)、『ユー・ガット・メール』(1998)などでキュートな魅力を発揮。
ロマンチックな恋はアニメーションでも描かれ、ディズニーの『美女と野獣』(1991)と『アラジン』(1992)は主題歌もヒットし、広い世代に愛された。
王道の恋愛映画が人気を博す一方で、設定や描写にひねりの効いた作品も。
ハサミの手を持つ人造人間の純愛を描く『シザーハンズ』(1990)、ウィーンでデートを楽しむ男女の自然な会話に引き込まれる『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995)。性格に難アリの中年男性が主人公の『恋愛小説家』(1997)は、価値観が確立された大人だからこその恋愛の難しさを温かく描く。
監督の感性が冴えわたる、ミニシアター系の作品も充実。レオス・カラックス監督がパリを舞台に描いた『ポンヌフの恋人』(1991)は、ホームレスの青年と失明の危機にある学生の純愛と狂気の物語。
ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』(1994)は、香港の街の熱気と鮮やかな色彩が二組の男女の恋を彩る。孤独な男性と少女の淡い恋を描いた『バッファロー’66』(1998)は、ヴィンセント・ギャロの才能が光る一作だ。