ハリウッド映画史上、最も愛された監督ともいえるスティーヴン・スピルバーグ。半世紀の間に彼が生みだしたヒット作、名作は興行収入記録を塗り替えた『ジョーズ』(1975)『E.T.』(1982)から近年の『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015)『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)まで枚挙にいとまがないが、そんな不世出の名匠が自らの半生を基に脚本を執筆(トニー・クシュナーと共同)、監督した自伝的ドラマ。先日のゴールデングローブ賞で作品賞(ドラマ部門)を受賞。第95回アカデミー賞でも作品、監督賞など7部門ノミネートされている。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

<アカデミー賞監督賞ノミネート>スティーヴン・スピルバーグ監督インタビュー

─── 演出中は自分の身に現実に起きたことを観客として見ている気分だった

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『フェイブルマンズ』はスティーヴン・スピルバーグ監督の少年時代を基にした家族のドラマだ。

「この作品で描いているのは比喩ではなくて記憶なんだ。たとえ他人の脚本で自分は演出するだけの映画でも、そこに意志とは関係なく監督自身の人生が否応なく零れ落ちてしまうもの。どんな監督でもね。ここでも最初は自分は医者でキャストは患者というような関係を築こうと思ったが難しかった。物語を追っていると自分の思い出が蘇ってくるし、現実に自分の身に起きたことが目の前で再現されるのを観客として見ている気分になるんだ。でも結局、最高の経験になったよ」

自分の体験をどの程度取り入れているのだろう。

「物語をあまり美化せずに、誰もが共感できるものにしたかった。そうすれば観客もその中に自分自身の家族を見出すことができるからね。ここでは両親、きょうだい、親戚や、いじめ、成長期の喜び悲しみを描いている。でもポール(ダノ)とミシェル(ウィリアムズ)が昔の両親の服とそっくりのレプリカの服を着て現われた時、一瞬すべてがスローモーションになったね。私の父アーノルドと母リアそのものだった。子供のころのホームムービーの再現も楽しかった。我慢できずに少し改良してしまったけど(笑)。ユダヤ人であることでいじめを受けたことが自分の人生を定義づけたわけではないけど、確かに自分に起きたことだ。でもこの経験があったからこそ私は反ユダヤ主義に対して多くの気づきがあり、これに関する映画をいくつか撮ることになったのだから」

自身の分身ともいえるサミー役のキャスティングについて。

「ガブリエル(ラベル)のような私よりずっとハンサムな俳優を探していたんだ。そうすれば実際の私よりも女の子にもてる設定にできるだろう? そしてガブリエルは好奇心も旺盛なんだ。私自身も好奇心の塊だったから、そういう人をキャスティングしたかった。ZOOMで会話している時から彼のすべてに疑問を持ち、どんな答えも受け入れる姿に繋がりを感じるようになっていったんだ。好奇心があってこそ、私も様々なジャンルの映画を作ることができたのだからね」

画像: 自身の分身ともいえるサミー役のキャスティングについて。

フェイブルマンズ
2023年3月3日(金)公開
アメリカ/2022/2時間31分/東宝東和
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン、ガブリエル・ラベル、ジャド・ハーシュ

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