天才的なひらめきで事件の真相を見破っていく探偵助手のアンナ(広瀬すず)と、ポンコツだが人望に厚い自称天才探偵の風真(櫻井翔)が様々な依頼に挑む。『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』は日本テレビ系列で放映されたドラマ「ネメシス」の映画版です。新たに脚本家として起用されたのは『アンフェア』シリーズの原作者・秦建日子。サスペンス映画のヒットメーカーである入江悠監督がミステリーの名手として知られる秦氏と組んで、数々の超難解な映像トリックを仕掛けていき、テレビでは描くことができなかった巨大な謎を映画ならではの壮大なスケールで描きました。今回、入江監督と秦氏にインタビューを敢行。見どころをうかがいました。(取材・文/ほりきみき)

ドラマの制作陣が絶対に思いつかないプロット

──本作は日本テレビ系列で2021年に放送されたテレビドラマ「ネメシス」の映画版ですね。企画のきっかけからお聞かせください。

入江悠監督(以下、入江):『22年目の告白 私が殺人犯です』『AI崩壊』を一緒にやった日本テレビの北島直明プロデューサーと「また何か一緒にやりたいね」という話をしていたことからドラマの企画がスタートしました。探偵モノを選んだのは僕が好きだったからです。

画像: 入江悠監督

入江悠監督

ドラマ制作のときから「映画もやりたい」と話していましたが、そのときはあくまでも夢物語。ドラマをご覧になった方々から「映画化してほしい」というメッセージをいただき、キャストも「また集まりたい」と言ってくれたので、映画化が現実になりました。

──ドラマの脚本は監督と片岡翔さんが担当されましたが、映画では秦建日子さんに脚本をお願いしたのはどうしてでしょうか。

入江:ドラマでアイデアを出し尽くしてしまったので、新しい風を吹かせてくれる方にお願いした方がいいということになって、秦さんのお名前が挙がりました。

画像: 秦建日子

秦建日子

秦建日子(以下、秦):突然のオファーだったので、びっくりしました。話題になった連続ドラマに映画化の話があること自体は驚きませんが、その作品から自分がお声掛けいただけるとは思っていなかったのです。

──タイトルに入っている「黄金螺旋」という言葉は華やかさを感じさせつつ、何を意味するのだろうと興味を引くキーワードですね。しかも、しっかり物語の根幹をなしています。

秦:何かが主人公にどんどん近づいてくる。その動きを螺旋の線みたいなものにしたらどうかと考えたのです。

広瀬すずさんと橋本環奈さんが会うシーンはかなり早い段階から自分の中で思い浮かんでいて、そこではちょっとカッコいいことを言わせたかったのです。それで黄金螺旋を提案しました。

──物語のプロットはみなさんで相談して作っていかれたのでしょうか。

入江:ドラマ版ではこんなことをやったので、映画では違うことがやりたいというざっくりしたお願いだけして、すべて秦さんに作っていただきました。ほとんど丸投げでしたね(笑)。

秦:逆にやりやすかったです(笑)。ライターとしてやりがいがありました。

北島さんから「どんな方向性なのか、まずはプロットのようなものを書いていただいてから打ち合わせをしましょう」と言われたのですが、自分が考えたことをうまくプロットにできない。前半部分のシナリオをいきなり書いて、「こういう感じでやりたいのですが、プロットにできないので、シナリオで読んでください」と持って行きました。すると、そのシナリオに監督が乗ってくださり、そのまま気持ちよく後半も書かせていただきました。

──キャストのみなさんが「映像化が想像出来ない!」とコメントされています。シナリオを書くのも難しかったのではないかと思っていました。

秦:シナリオを書くのは簡単でした。むしろ、映像化して作品にするのは難しいだろうなと思いながら書いていました。脚本家は全員、シナリオを書いているとき、それなりに映像を思い浮かべていると思いますが、脚本家が1シーンごとに思い浮かべているのと、映画としてきちんと繋がった1つの作品にするのはまったく別の作業なのです。「どう撮ればいいか、僕にはわかりませんけれど、内容としては面白いと思うものが書けたので提出します」みたいな感じでお渡ししました。それこそ丸投げです。監督がどう撮られるのか、ドキドキワクワクしていました。

入江:初稿ができ上って読ませていただいたときに、まず「すごいな」と思いました。自分で執筆すると、演出するのが大変なことに対しては無意識にストッパーが掛かってしまいます。その点、秦さんの構想はドラマの制作陣が絶対に思いつかないプロットでした。

そもそも、ネメシスという3人だけの探偵事務所だけでなく、チームネメシスと呼ばれる仲間がいて、橋本環奈さんが演じた菅朋美との因縁もある。それを整理するだけでもけっこう大変ですが、さらに黄金螺旋という数学的な骨が加わった。それでこんな脚本があがってくるんだとびっくりしました。

個人的にも監督として今の自分の力量を試されているというか、挑戦し甲斐のある脚本だと思いました。

秦:僕はいちばんの新参者です。レギュラーメンバーの方々にはこの作品に対して、計り知れない思いがありますから、「脚本家が変わったら、おれだけ出てないじゃないか」と思わせるわけにはいきません。とにかく僕の仕事は全員が不自然ではなく、出られる外側を作ること。あとはドラマを通じてキャストのみなさんと世界観を共有されている監督にお任せするつもりで書きました。

──ドラマから2年後の設定ですね。

入江:ドラマ終了から2年後に映画が公開されるので、設定も2年後にしました。アンナが1人暮らしを始めたことによってネメシスの一体感が弱くなり、それぞれが独立した感じになりました。そのため風真が怪しくなったなど、キャラクターが変化したところが描けたので、結果的にドラマと地続きにしなくてよかったと思っています。

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