タクシーの走行シーンはスタジオで撮影
──タクシーの中でのマドレーヌとシャルルの会話が中心ですが、撮影はどのようにされたのでしょうか。
リーヌは当時93歳でしたから、実際にパリの街中でタクシーを走らせて撮るのは体力的に厳しいだろうと思いました。ですからスタジオの中でLEDスクリーンシステムを活用して撮りました。普通はグリーンバックを使って撮り、景色はポストプロダクションで加えますから、俳優たちは景色が見えないまま演じます。LEDスクリーンシステムではタクシーを囲むようにL字型のスクリーンをいくつか立て、そこに事前に撮影しておいた景色を映し出すのです。景色は荷台付きトラックに複数のカメラを載せて、あらゆる角度から撮影しました。そのシステムのお陰で、リーヌとダニーは自転車がタクシーを追い越していったときは目で自転車を追っていました。まるで本当にパリの街中を走りながら撮影していたかのようでした。
──パリの名所が次々と登場しますね。
シャンゼリゼ通りや凱旋門、エッフェル塔などいろんな場所が出てきます。マドレーヌが人生を振り返るために寄り道をしてほしいと頼んだのですが、いわゆるパリの観光的な場所と実際にタクシーの運転手が走る日常的な場所とを対比させてみました。
──次はどのような作品を考えていらっしゃいますか。
ある小説の版権を手に入れました。NYのマフィアのゴットファザーとユダヤ教のラビがあり得ない出会いをし、マフィアが占領されていたイタリアからユダヤ人を逃したという1943年の話です。
──これからご覧になる方に向けてメッセージをお願いします。
私として作品に込めた思いはありますが、それをどう受け止めるかどうかは観客のみなさまに委ねたいと思います。どうぞ作品を楽しんでください。
PROFILE
クリスチャン・カリオン
1963年1月4日生まれ。フランス北部・カンブレー出身。13歳から映画製作への情熱を持ちながら、家族の希望でフランス農務省付属の工学部に入学。しかし、その後映画への情熱が抑えられず、映画を撮り始めた。2001年に初の長編映画“The Girl from Paris”(原題)の監督を務め、240万人以上のフランス人映画ファンを魅了するヒット作となった。その後、監督・脚本を務めた『戦場のアリア』(05)が、第63回ゴールデン・グローブ賞最優秀外国語映画賞、第78回アカデミー賞®国際長編映画賞(旧外国語映画賞)、第39回セザール賞の作品賞とオリジナル脚本賞、第59回英国アカデミー賞外国語映画賞ほかにノミネートされ、その年の映画賞を席巻した。その他の代表作に『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』(09)、『戦場のブラックボード』(15)などがある。2017年に監督した『凍える追跡』は2021年にジェームズ・マカヴォイ主演で、自身で英語版リメイクを手掛けた。
『パリタクシー』4月7日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国公開
<STORY>
パリのタクシー運転手のシャルルは、人生最大の危機を迎えていた。金なし、休みなし、免停寸前、このままでは最愛の家族にも会わせる顔がない。そんな彼のもとに偶然、あるマダムをパリの反対側まで送るという依頼が舞い込む。92歳のマダムの名はマドレーヌ。終活に向かう彼女はシャルルにお願いをする、「ねぇ、寄り道してくれない?」。人生を過ごしたパリの街には秘密がいっぱい。寄り道をする度、並外れたマドレーヌの過去が明かされていく。そして単純だったはずのドライブは、いつしか2人の人生を大きく動かす驚愕の旅へと変貌していく!
<CAST&STAFF>
監督:クリスチャン・カリオン
出演:リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン
2022年/フランス語/91分/スコープ/カラー/
5.1ch/原題:Une Belle Course/日本語字幕:星加久実
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給:松竹
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