この世界は絶望しか見えない。それでも救うべきなのか? 身寄りを亡くし、自身の生きる希望を失いかけていた女子高生が “信じてくれた人達のため”という想いと“こんな世界終わっちゃえばいい”という感情に戸惑いながらも世界を救うために奔走する。映画『世界の終わりから』は紀里谷和明監督が企画から脚本、編集までこなし、孤独と絶望に満ちた世界を必死に生きる主人公の葛藤を描いています。公開を前に、この作品で最後と言い切る紀里谷監督にインタビューを敢行。テーマに対する思いやキャストへの演出について語ってもらいました。(取材・文/ほりきみき)

圧倒的な存在感がキャスティングの決め手

──志門ハナを伊東蒼さんが演じています。キャスティングの決め手を教えてください。

志門ハナはものすごく負荷のかかる役どころ。それを背負い切れる演技力が必要。しかも高校生に見えなくてはならない。思いつく方がいなかったのですが、キャスティングディレクターが伊東さんを提案し、『さがす』を拝見してノックアウトされました。とにかく伊東さんの存在が圧倒的。ぜひお願いしたいと思いました。

当時、伊東さんはまだ高校生だったので、長期休暇しか撮影に入れないと言われて、撮影期間が夏休みと決まりました。

──ハナを作っていくために、伊東さんとはどのような話をされましたか。

今回、リハーサルをする時間があったので、そのときにありとあらゆる話をして、伊東さんという人を探っていきました。例えば、江崎が運転する車にハナが乗るシーンがありますが、その状況と関係性のとき、伊東さんだったらどこに座るのか。他にも、喋り方、髪形、服装、立ち居振る舞いまで、伊東さんならどうするかを聞き、伊東さんの中にハナを入れ込んでいったのです。ですから生理的に言えないセリフがあったら、それは脚本に欠陥があるということ。そこはセリフを調整していきました。逆に僕としては「これで大丈夫かな?」と思っていたところが、やってもらうと「大丈夫です。このセリフは言えます」ということもありました。それを全キャラクターでしています。

──ユキを演じた増田光桜さんも過酷なシーンがあり、大変な役どころでした。

増田さんのキャリアはまだ始まったばかりですが、すごく素養がありますね。今回、かなり練習しましたが、最後まで頑張って食い下がってついてきてくれました。彼女の年齢の頃は成長が早く、アフレコはクランクアップした後にしましたが、その時点でさらに成長していました。

──ソラを演じた冨永愛さんは出番こそ少ないものの、印象に残ります。

冨永愛さんと最初に会ったのは、彼女がまだ高校生だった頃でした。僕がカメラマンで、彼女がモデル。それ以来の付き合いなので、ほとんど妹のような存在。今回、ソラの役で冨永愛さんの名前が上がり、僕が彼女に気持ちを聞いたところ、ぜひやりたいと言ってくれました。しかし、彼女にはそこまでのお芝居の経験がない。彼女自身も不安だったと思います。それでオーディションにさせてもらいましたが、その場で修正をお願いするとちゃんと応えてくれる。オーディションまでにかなり練習してきたのを感じました。それで彼女に決まったのです。

画像: ソラ(冨永愛)

ソラ(冨永愛)

ただ、ソラの孤独という感情を表現するためには、トラウマを含めた過去にアクセスする必要がありました。本来ならば使わない方がいい手法ですが、ソラと融合するための時間がなかったのです。かなり辛かったと思いますが、やってくれました。

──老婆の夏木マリさんはあて書きだそうですね。

脚本を書いていると、老婆のセリフは頭の中で夏木さんが喋っていました。しかしあくまでも僕が想像していた夏木さん。老婆を等身大で演じてほしいと思っていましたから、リハーサルのときにいろいろ話をさせていただきました。そのときにお互いの共通言語は何なのかと考えたら、音楽だったのです。もう少しグルーヴを出してほしいとか、リズム感が違うとか音楽的言語でディレクションすると、スムーズに理解していただけました。

画像: 老婆(夏木マリ)

老婆(夏木マリ)

とにかくエレガントな方でした。説明しなくてもわかってくれる。もしかすると前世でもお会いしてるのかもしれません(笑)。

──本作はプロモーションやマーケティングは一切行わないと聞きました。

ぜひ劇場で見てほしい。それくらい画にも音にもこだわって作りました。僕はこの作品の力を信じています。脚本を読んだ岩井俊二監督に「この予算と日数でどうやって撮るの?」と言われましたが、終わったときに岩井さんが来て、「すごいね、できるものなんだね」と驚いていました。

今までの作品のような派手なプロモーションはしませんが、ご覧になればわかっていただけると思います。そのためにこれまでになかったような前代未聞の施策を行いますが、それでみなさんのところに届くと思います。

PROFILE
監督/原作/脚本:紀里谷和明

15歳で単身渡米、NY在住時に写真家として活動開始し、以降数多くのMVを作成し映像クリエイターとして脚光を浴びる。2004年にアクション映画『CASSHERN』で映画監督デビューを飾り、2008年には江口洋介が主演を務めた映画『GOEMON』を発表する。2015年にはクライブ・オーウェンとモーガン・フリーマンの共演で話題となった『ラスト・ナイツ』でハリウッド・デビューを果たす。

『世界の終わりから』2023年4月7日(金)全国公開

画像: 映画『世界の終わりから』本予告 www.youtube.com

映画『世界の終わりから』本予告

www.youtube.com

<STORY>

高校生のハナ(伊東蒼)は、事故で親を亡くし、学校でも居場所を見つけられず、生きる希望を見出せずにいた。ある日突然訪れた政府の特別機関と名乗る男から自分の見た夢を教えてほしいと頼まれる。

心当たりがなく混乱するハナだったが、その夜奇妙な夢を見る。。。

<STAFF&CAST>

原作・脚本・監督:紀里谷和明
撮影:神戸千木
照明:阿部良平
衣装:福士紗也佳
録音:島田宜之
音響効果:大塚智子
編集:江橋佑太 紀里谷和明
音楽:八木信基 

出演:伊東 蒼、毎熊克哉、朝比奈 彩、増田光桜、冨永愛、高橋克典、北村一輝、夏木マリ

配給:ナカチカ

2023年/日本/135分/カラー/シネマスコープ/5.1ch 

Kiriya Pictures

公式サイト:https://sekainoowarikara-movie.jp/#modal

This article is a sponsored article by
''.