7部門を受賞し今年のアカデミー賞の顔になった『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。本作で主演女優賞を獲得したミシェル・ヨーと助演女優賞を受賞したジェイミー・リー・カーティスはどちらも映画界の大ベテランで、初候補初受賞という快挙を成し遂げました。偉業を果たした2人の女優コンビに迫ります。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
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オスカー2023を沸かせた2人
様々な話題を提供してくれた今年のアカデミー賞。その中でユニークな組み合わせが注目されたという視点から、今気になる2人を3組ピックアップ。彼らの栄光への道のりを探ってみましょう。

大ベテランの2人の女優が『エブエブ』でバトル&ロマンスを展開!

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ミシェル・ヨーとジェイミー・リー・カーティス

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「女優は年齢を重ねるほど機会が巡ってくることが少なくなる。あなたが一番輝ける時期はもう過ぎたなんて誰にも言わせないで」とアカデミー賞主演女優賞受賞のステージで高らかに宣言したのは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨー。20代のころから様々な映画に出演してきた60歳の彼女はもう引退すべきと言われたこともあるとか。そんな彼女が放った言葉には重みがありました。

また同作で助演女優賞に輝いたのは、ミシェルと同じように20歳のころからあらゆるジャンルの映画に出演してきた64歳のジェイミー・リー・カーティス。彼女も長い経歴で今回が初のオスカー候補でしたが見事にチャンスをものにしました。古いタイプの映画界を生き抜いてきた2人の女優が新時代の映画界を象徴するような作品で共演し、キャリア最高の栄誉を手にする快挙は痛快そのもの。この2人のここまでの道のりを振り返ってみましょう。

主演女優賞受賞 ミシェル・ヨー

ミシェル・ヨーはマレーシアで生まれ、15歳でロンドンに留学。バレエを学んでいたもののケガで断念。帰国後ミス・マレーシアに選ばれた才媛です。ジャッキー・チェン共演のCMで芸能界入りし、香港へ。『レディ・ハード 香港大捜査線』(1985)『皇家戦士』(1986、真田広之共演の日本デビュー作)などでアクション女優として知られるように。

映画会社社長との結婚を機に一度女優業を引退しましたが、3年後離婚と同時に女優業を再開して1992年の『ポリス・ストーリー3』で共演のジャッキー顔負けのスタントを披露しみごとなカムバックを果たしました。その後1997年に『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』で国際派女優に。2000年にはアン・リー監督の武侠映画『グリーン・デスティニー』に出演し演技力も発揮。

そして『宋家の三姉妹』(1997)『SAYURI』(2005)『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』(2011)など非アクション映画でも存在感を示して大きく飛躍。『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』(2008)で『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーと共演したのもこの時期です。

近年は『クレイジー・リッチ!』(2018)『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)などに出演しましたが、たしかに彼女の言う通り、以前より役柄は小さなものになっていたかもしれません。ところが『エブエブ』では堂々の主演でアクションを含む様々な演技を披露。これもこれまで演じてきた多彩な役柄の集大成と言えそうです。

助演女優賞受賞 ジェイミー・リー・カーティス

一方ジェイミーもミシェル以上に長いキャリアで、演じた役柄の種類もさらにバラエティに富んでいるエキスパート。ジェイミーは往年のハリウッドの大スター夫妻、『お熱いのがお好き』(1959)などのトニー・カーティスと『サイコ』(1960)などのジャネット・リーの次女として誕生。

映画デビュー作『ハロウィン』(1978)や『ザ・フォッグ』(1980)など最初はホラー映画に次々出演し、絶叫クィーンと呼ばれました。やがて『大逆転』(1983)『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1988)などコメディでも才能を発揮。『ブルースチール』(1990)『トゥルーライズ』(1994)などアクションにも出演と、ジャンルを問わない演技巧者として長い女優生命を保ってきたと言えるかもしれません。

それでもやはり「ハロウィン」シリーズのローリー役は彼女の当たり役で、2018年に始まった新3部作でもローリー役を演じ、『ハロウィン THE END』(2022)まで同役を7回も演じるほど本人も入れ込んでいる様子です。

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ただ『エブエブ』で演じた冷徹な税監査官は、幾多の役を演じた彼女でも初めてのように思えるタイプのもので、外見から心理的な表現まで細かく作り込んでいて、やはり演技派と納得させられます。しかもマルチバースを舞台に、ミシェル演じるエブリンと別世界での風変わりな(?)ロマンスまで展開して、一筋縄ではいかないジェイミーの真骨頂。

ここまでやりきるという彼女の姿勢に映画界のリスペクトが集まって念願のオスカーに結びついたのでしょう。授賞式で彼女が「パパもママも異なる部門で候補になりました。私はいまオスカーを手にしたわ!」と天国の両親に向って叫んだ様子は、父母が果たせなかった偉業を自分の手でつかんだ安堵と喜びに溢れたものでした。

私たちが最高に輝くのはこれから

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ミシェル・ヨーとジェイミー・リー・カーティス

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今回ベテランの域に達した2人の女優が成し遂げたオスカー受賞は、多くの同世代に希望を与えたはず。ミシェルはこの後『アバター』シリーズの3作目などに出演が決まっており、ジェイミーはディズニーの『ホーンテッド・マンション』などに出演と、期待の新作が続くことからもまだまだキャリアを順調に重ねていきそう。まさに「私たちが最高に輝くのはこれから」ということかもしれません。

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