天涯孤独のシェフが移民の少年たちと料理で心を通わせ、彼らの生きていく道を支援していく。映画『ウィ、シェフ!』は移民大国フランスの実在するシェフ、カトリーヌ・グロージャンをモデルに物語を構築した社会派コメディです。主人公のカティを演じたのは『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』に出演したオドレイ・ラミー。移民の少年たちを支援する施設の責任者ロレンゾを『最強のふたり』の大富豪役で日本でも人気のあるフランソワ・クリュゼが演じています。脚本も書いたルイ=ジュリアン・プティ監督に企画のきっかけやキャストに対する思いを語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

フランスの有名店で6か月間料理修業して演じたオドレイ・ラミー

──料理を通じて、同伴者のいない未成年移民について描くというソフィー・ベンサドゥンのアイデアを聞いて面白いと思ってリサーチされたのが企画のきっかけだと聞きました。

ソフィーはドキュメンタリー映画の監督ですが、モデルとなったカトリーヌ・グロージャンと時間を過ごし、彼女のことをプロデューサーのリザに話しました。そしてリザが私にカトリーヌに会いに行くことを勧めてくれたのです。元シェフだったカトリーヌは移民の若者たちに料理への愛を教えていて、素晴らしいと思いました。

画像: ルイ=ジュリアン・プティ監督

ルイ=ジュリアン・プティ監督

それでまず、料理人の世界の仕組みなどについて調べ、その後、現在のフランスの移民の置かれている現状について学びました。彼らがどのような方法でフランスにやってきて、どのような施設に受け入れられ、その後どのような支援を受けていくのか。そういったことがそこでわかったのです。ラストはまだ頭に浮かんでいませんでしたが、ストーリーと人物を膨らませて、その流れで最後は現代風の終わり方にしようと考えました。

しかし、できあがった脚本は当初、思い描いていたものとは大分、違いました。カティを作っていく上で参考になる材料をソフィーが話してくれ、リザがテレビ番組の空間撮りについてアドバイスをしてくれたのです。緊張感のある、面白い脚本になったと自負しています。

──本作は社会派コメディですが、ラストは感動で胸が熱くなります。脚本におけるコメディと感動の塩梅をどのようにされましたか。

まさにそこが難しかった点です。コミカルに傾き過ぎて現実味がなくなると、この映画の本筋からはずれます。とはいえ、厳しい現実を忠実に描き過ぎて、悲観的な感じにもしたくない。コメディという武器を使って、移民の統合問題というテーマをより多くの人から共感が得られるよう、じっくり1年掛けて取り組みました。

──主演のオドレイ・ラミーは監督の『社会の片隅で』(2018)でも主演されています。彼女はカティ・マリーをどのようなアプローチで演じていたのでしょうか。

前作『社会の片隅で』の撮影が終わった後、オドレイとはまだやり終えていない仕事があると感じ、彼女のためにこの作品の脚本を書きました。ルイ・ド・フュネスを思わせるコメディを演じる上でのテクニック。その一方で感情の起伏をはっきり見せる、彼女特有のコメディの表現方法。オドレイはカティ役をやるための全てを持っていたのです。

画像: カティ(オドレイ・ラミー)

カティ(オドレイ・ラミー)

役作りは一年かけてじっくり取り組んでくれました。まず料理に関しては、マチュー・パコーの店「アピシウス」、クリストフ・ヴィレルメの店「ル・ディヴェレック」で6か月間研修を受けてくれたのです。内面的には特徴のある歩き方や大人になりきれない若者のようなふるまい方でカティを作ってくれました。少年たちとは事前に顔を合わせることはせず、カティが初めて移民の少年たちと会うシーンは本当に初めての対面でした。演じるのではなく、感情が内側から自然と出てくる感じでカティを演じてくれ、少年たちはオドレイのことを役名のカティ・マリーと呼んでいました。素晴らしい女優さんだと思います。ママドゥに「シェフ、大好きです」と言われるシーンは彼女自身も私もとても感動しました。

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