世界中で愛されてきたアニメーションの名作を、最新の映像技術で実写化した『リトル・マーメイド』が公開中。アリエル役のハリー・ベイリーは、その勇気と美しい歌声を私たちに完璧に魅せ、多くの子供たちの希望となりました。(文・清水久美子/デジタル編集・スクリーン編集部)
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画像: 『リトル・マーメイド』ロングレビュー/知性と勇気に満ちたアリエルの大冒険!

『リトル・マーメイド』

好奇心旺盛な人魚のアリエルは、まだ見ぬ人間の世界に憧れていた。ある日、父である海の王トリトンに禁じられているにも関わらず、彼女は人間の世界に近づき、嵐で難破した船からエリック王子を救う。

運命の出会いにより、人間の世界への思いが抑えきれなくなったアリエル。そんな彼女に海の魔女アースラが近づき、3日間だけ人間の姿になれる代わりに、自分の美しい声をアースラに差し出すという、恐ろしい取引を持ちかける…。

アリエルを演じたハリー・ベイリーの勇気と魅力的な個性

画像: アリエルを演じたハリー・ベイリーの勇気と魅力的な個性

公開中の実写版『リトル・マーメイド』(『シカゴ』(2002)『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014)のロブ・マーシャル監督作)は、一言で言って最高だ。ただただ素晴らしく、135分心地良い空間に身を置いている気持ちになる作品と言える。

ディズニー・アニメーション映画の実写化は、これまでも『アラジン』(2019)や『美女と野獣』(2017)など大好きな作品が多く、『リトル・マーメイド』の実写化の話を聞いた時は、大きな期待を抱いた。

何より、オリジナルのアニメーション版は「アンダー・ザ・シー」をはじめとする名曲の多いミュージカル作品なので、歌唱力に長けたキャストの出演に期待したが、主人公アリエル役にハリー・ベイリーが抜擢されたと知り、洋楽ファンとして「R&B姉妹デュオ“クロイ&ハリー”のハリーなら歌の巧さは抜群なので安心だ!」と、さらに期待が高まった。

画像: ロンドンプレミアにてゲストの 少女たちと触れ合うハリー photo by Getty Images

ロンドンプレミアにてゲストの 少女たちと触れ合うハリー

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ハリーによるアリエルのビジュアルを最初に見た時も、あまりにもキュートだったのでワクワクが止まらなかったが、アフリカ系アメリカ人である彼女が、アニメ版では白い肌でストレートの赤毛だったアリエルを演じることを批判する人たちがいると知ってとても悲しくなった。完成した映画を観てもいない内に、人種だけで判断するとは何てもったいないんだろうと思った。

ハリーは激しいバッシングに泣いたこともあったそうだが、勇気を持ってアリエルを演じ、それは世界中に素晴らしい影響を及ぼした。

予告編を観た大勢の黒人の少女たちが「私と同じ肌!」と喜び、感激する様子がTwitterにたくさん投稿されたのだ。今回のアリエルの髪はドレッドヘアーで、ハリーの個性が生かされているのも素敵だ。

今作をより鮮やかにした豪華キャスト&作曲家たち

画像: エリックの愛犬マックスを撫でるアリエル

エリックの愛犬マックスを撫でるアリエル

アリエルは好奇心旺盛で、未知の世界への憧れが強い女の子。本編を観るとよく分かるが、ハリーはアリエルそのものという印象で、彼女の全身からヒロインの魅力が感じられる。もうとにかくキュートで、観ている間ずっと頬が緩みっぱなしになってしまった。

特に、予告にもあるハリセンボンと一緒にほっぺを膨らませるシーンはかわいくてたまらない! そして、ハリーは期待を上回る歌唱力で、名曲「パート・オブ・ユア・ワールド」や新曲「何もかも初めて」を熱唱している。

画像1: 今作をより鮮やかにした豪華キャスト&作曲家たち

アラン・メンケン(『美女と野獣』『アラジン』)とリン=マニュエル・ミランダ(『モアナと伝説の海』『ミラベルと魔法だらけの家』)が共作で書き下ろした新曲はほかに、エリック王子のパワーバラード「まだ見ぬ世界へ」や、カモメのスカットルとカニのセバスチャンが歌う「スカットル・スクープ!!」がある。

数度のアカデミー賞受賞を誇るアランはアニメーション版からの参加となるが、作詞を担当したハワード・アシュマンは他界したため、実写版には新たにリンが加わった。リンは名曲「キス・ザ・ガール」のアニメ版の歌詞を現代に合わせて調整したり、「スカットル・スクープ!!」は彼が得意なヒップホップ調にしたりしている。

その「スカットル・スクープ!!」の早口のラップをクールにキメているスカットルの声を演じているのは、『ラーヤと龍の王国』(2021)などでも声優として活躍している人気女優のオークワフィナ(『フェアウェル』(2019))。

セバスチャンもラップに参加しているが、その声はトニー賞受賞俳優のダヴィード・ディグス(『ハミルトン』(2020))が担当している。ダヴィードは「アンダー・ザ・シー」も見事に歌い上げており、そのシーンの海底の描写は非常に楽しくて美しい。

画像2: 今作をより鮮やかにした豪華キャスト&作曲家たち

また、アリエルの幼なじみで親友の魚のフランダーの声を、『あの夏のルカ』(2021)などでも声優経験のあるジェイコブ・トレンブレイ(『ルーム』(2015))が演じているが、臆病で気が小さいけれど、アリエルの危機を救うために勇気を見せるフランダーにピッタリの愛らしい名演を披露している。

アリエルの父親のトリトン王を貫禄たっぷりに体現しているのは、オスカー俳優のハビエル・バルデム(『ノーカントリー』(2007))。そして有名なヴィラン、アースラを怪演しているのはコメディもドラマも得意なメリッサ・マッカーシー(『ある女流作家の罪と罰』(2018))。メリッサは、アリエルの美声と引き換えに3日間人間の姿でいられる魔法をかけるアースラの歌「哀れな人々」を怪しげに熱唱し、映画を大いに盛り上げている。

アニメーション版の魅力を最大限に現代版へアップデート

画像: 新たな世界を夢見る アリエルとエリック

新たな世界を夢見る アリエルとエリック

全体的にアニメーション版のストーリーを踏襲している実写版だが、アリエルだけではなく彼女の姉妹が様々な人種の姿をしていたり、エリック王子(『ベラのワンダフル・ホーム』のジョナ・ハウアー=キング)が黒人の女王の養子だったりと多様性を取り入れており、現代に相応しい作品となっている。

さらに、アリエルが自らの知恵と勇気でエリックと協力してアースラに立ち向かう設定もアニメーション版とは違って今風で良い。実写版で声の出ないアリエルがエリックに自分の名前を当てさせるシーンは、アリエルのキュートさが溢れる胸キュンの演出が施されているので、ぜひ本編で楽しんで観てほしい。

目も耳も心も満たされる美しい音楽と海や陸の描写、実写ならではのリアルなアリエルの大冒険、そしてハラハラドキドキの展開のロマンスなど、見どころ盛りだくさんの必見作だ。

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『リトル・マーメイド』
全国公開中
アメリカ/2023/2時間15分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:ロブ・マーシャル
出演:ハリー・ベイリー、メリッサ・マッカーシー、ジョナ・ハウアー=キング、ハビエル・バルデム、オークワフィナ、ダヴィード・ディグス

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