――『ミッション:インポッシブル』最新作を二部構成にするというアイデアはどのように始まったのでしょうか?
『ミッション:インポッシブル』のストーリーを2作に分けたのは今回が初めてのことです。ストーリーの複雑さゆえに、これまで一度も試みたことはありませんでした。この2本の映画のスケールは、あらゆる意味で壮大さを極めています。僕たちは『トップガン マーヴェリック』の撮影中に、『ミッション:インポッシブル』の新作について話し始めました。マックQ(クリストファー・マッカリー監督)が「連続ものを作らなければ」と言い、そのことに興味を引かれました。これまで連続ものをやった経験がないですし、僕は新しいことを学ぶのが好きですから。彼がその提案をしたときには「そうだね、オーケー」という感じでした。でも、面白くなることも分かっていました。マックQと僕は常に張り詰めたストーリーを語ってきましたし、この作品はある種の到達点のような気がしました。
――今回自身でも“人生で最も危険なスタントだった”と語る、断崖絶壁のジャンプシーンに挑んでいます。あのシーンを撮影したときのことを教えていただけますか?
あれはパンデミックの真っ只中であり、「我々は止まらない。この業界のためにできることはすべてやる」と決めていました。他国での撮影を許可されたことが、どれほど重要なことかを分かっていましたし、その責任を感じていました。あのシーンの撮影では他の人の緊張を吸収しないように、着地するまでスタッフの近くには行きませんでした。こういうことをする前に、絶対に何も言ってはいけないということは、誰もが知っています。その時点では普段と何も変わらない一日のようでなければなりません。あのシーンを後から観ると、物事がとても速く進んでいます。でもその最中は、まるで物事がスローダウンしているように感じられるのです。すべてがスローモーションのように感じられ、まるで目の前の物事が実際に起こる前に分かっていて、失敗を回避できるような気さえします。野球選手が、野球のボールの継ぎ目が見えて、打つ前からホームランになることがわかるという話を読んだことがあります。初めて何かをするときは、すべてがとても速く起きているように感じるものですが、練習すればするほど、それが見えてくるようになるんです。すべては、能力を高めること、“コンピテンシー”(※個人の能力、高い成果につながる行動特性)を高めることなのです。僕が生涯をかけて取り組んできたことです。演技や製作、時速約480㎞で地上すれすれに飛行機を飛ばすこと、剣術、ランニング、渋滞に向かって車を運転すること、バイクで崖から飛び降りること。何をするにしても、常に自分にその能力があることを確信したいと思っています。
――カンヌ国際映画祭のトークイベントで、なぜ自分でスタントを行うことにこだわるのかと質問されましたよね。あなたは「ジーン・ケリーになぜ自分でダンスをするのかと聞いた人はいないですよね」と答えていらっしゃいました。
そうですね(笑)。僕はずっとそうしてきました。常に身体的な俳優で、動きを通してキャラクターを表現してきました。『タップス』(81)から『トム・クルーズ/栄光の彼方に』(83)、『レジェンド/光と闇の伝説』(85)まで、常に身体を使った演技をしています。『卒業白書』(83)のダンス、『ザ・エージェント』(96)のフィジカル・コメディ。キャラクターを作るには、感情的にも肉体的にも、常にエネルギーが必要です。それが物語を伝える方法です。自分の声と体をコントロールできるのは、技術の一部なのです。
――『ミッション:インポッシブル』一作目から30年近くが経とうとしていますが、これまでを振り返ってみてどのように感じますか?
常に、より良くできる方法があるはずだと思っていました。本作は『ミッション』における最高の完成形だと心から信じています。でも登るべき山は常にあります。僕は常に自分に高いハードルを課し、自分自身に多くを期待しています。どうすれば観客の皆さんに貢献できるのかということに対して、決して現状に満足はしたくないのです。人生で毎日ずっと映画の撮影現場にいられるなら、そうしたいです。常に自分を駆り立てています。それが僕というものですから。それが僕なのです。
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
2023年7月21日(金)全国公開
配給:東和ピクチャーズ
©2023 PARAMOUNT PICTURES.