2016年4月期に日本テレビ「日曜ドラマ」枠で放送された連続ドラマ「ゆとりですがなにか」。“ゆとり世代”と社会に括られたアラサー男子3人組が仕事・家族・恋・友情に迷いあがきながらも立ち向かう姿を描き、若年層から熱狂的な支持を集め、さらには数々のドラマ賞を受賞。翌年にはスペシャルドラマやスピンオフドラマも制作されるなど人気を博した。そんな「ゆとりですがなにか」が満を持して映画化。今回SCREEN ONLINEでは、ドラマ版に続き山路一豊役を演じた松坂桃李にインタビューを実施。演じた山路についてや、岡田将生や柳楽優弥ら共演者とのエピソードなどたっぷりと語ってくれた。(取材・本文:清水久美子/編集:SCREEN編集部)

「(山路は)役者として全く新しい扉を開けさせてくれた役でした」

――山路は、彼女がいないというところでは、映画版でも変わっていないですね。

「はい、相変わらず童貞です(笑)。彼のような個性を持つ人は、時間が経てば経つほど、よりこじらせるんですね。なんかこう、大事にしすぎちゃったのかもしれません。大事にしすぎるが故に、自分のことが何も分からなくなってしまっている。相手に対しては寄り添えるんですけど」

――宮藤さんって、松坂さんをダメダメな人物として描くことに容赦ないですよね(笑)。最近の「離婚しようよ」も含めて。今回、『ゆとりですがなにか インターナショナル』の山路について、宮藤さんとは何かお話をされましたか?

「宮藤さんは、現場に数回いらっしゃいましたが、(宮藤さんが照れている物真似をしながら)『まあ、楽しくやってください』っておっしゃっただけで(笑)。僕としては、台本に書かれている山路にどれだけ自分が乗っかれるか、そこを意識して演じました。宮藤さんの作品は、やっぱり難しいです。面白い作品は違った難しさがあるので。自分が読んで面白いと思うものを、映像を通してそのまま伝えるのはハードルが高いです」

――今回の撮影では、特にどんな点に気を配りましたか?

「いやぁ、どれだけ童貞を大事にできるかということかな(笑)。ではなく、『ゆとり……』の現場って非常に瞬発力を求められるので、どれだけちゃんと周りを見られるか、周りの声を聞けるかというところに気を配りました」

――撮影中、楽しいと思ったのはどんな時ですか?

「やっぱり3人がそろう時です。今回、6年ぶりの再集結でしたが、この3人でしか出せない空気感というのがあるので、そこは自分の中でもすごく楽しみでしたし、実際に3人そろうシーンを撮っている時は物凄く楽しかったです! 監督も変わらず水田(伸生)さんだったので、6年越しでも変わらない空気感で作り上げることができました」

――アドリブを入れたりすることはありましたか?

「カットがかからなかったら、その延長で自分たちで演じ続けるということはありますが、それ以外はみなさん台本通りだと思います。宮藤さんの台本って、アドリブっぽく見えても、全部セリフとして書いてあるんですよ。ごく自然に、まるで本当にその場で生まれたようなボケとツッコミみたいな感じの場面でも、計算され尽くして書かれているんですよね。本当にすごいです! でも、だからこそ宮藤さんの作品は難しいんです」

――先ほど安藤さんのお話が出ましたが、安藤さんとは最近も「ブラッシュアップライフ」でも共演されましたよね。今回また共演していかがでしたか?

「サクラさんは、共演する度にすごく素敵な方だなと思います。サクラさん自身も茜ちゃんもお母さんだし、今回、子育ての楽しさや大変さみたいなものを、茜ちゃんを通して吐露するシーンがあるんですが、本当に素晴らしいんです」

――山路と茜ちゃんの関係って、特別な絆があるような、深い友情で結ばれている良い関係ですよね。松坂さんは、あの2人の関係をどう思いますか?

「男女を越えた友情ってあるんだなと。それを、山路と茜ちゃんを見て実感しました。すごく良い関係性だと思います」

――ところで、今年は芸歴15年ですよね。何かイベントなどは予定されていますか?

「えっ、15年? そうか、19歳から芸能界入りしたから……本当だ! 全然気にしてなかったです。教えてくださってありがとうございます。今、気づいたくらいだから何も予定してないです(笑)」

――そうだったんですね(笑)。長く続いていく役者道の通過点の1つかもしれないですね。山路というキャラクターに出会ったのは、15年のキャリアのちょうど半分くらいの頃だと思うのですが、松坂さんにとってどんな存在になりましたか?

「僕にとって山路は新しい色を教えてくれた、役者として全く新しい扉を開けさせてくれた役でした。これほどまでのコメディは初めてだったし、行ったことのない新しいステージに行けた気がしました」

――山路の好きなところと、ここはちょっと理解するのが難しいというところを教えてください。

「相手の気持ちに寄り添えるところは、すごく素敵だなと思います。茜ちゃんを思いやれるし、生徒と同じ目線に立って、話を聞くこともできるし。ダメだなと思うのは、今回の山路の最初の登場シーンで、(吉田)鋼太郎さんが演じる麻生さんが映っているタブレットを遺影みたいに抱えて女性と会ったりする、空気の読めないことをしてしまうところ。自分の分析は何もできないところは本当にダメだと思います」

――では、映画版ならではのすごいところは?

「“ゆとりの良いところ全部載せ”みたいなところだと思います。映画だからと言って、派手なアクションシーンや、セットや仕掛がすごいとか、そういうのはないんですが、ドラマとして放送してきた面白さが全部詰まっているところは、すごいと思います!」

――私は大満足でした! 最初は、海外での撮影が予定されていたんですよね?

「そうなんです。3人がベロベロに酔っぱらって、記憶をなくして、僕か(柳楽)優ちゃんが行方不明になって、残りの2人が捜すという『ハングオーバー!』みたいな話になるんじゃないかっていう事を聞いていました。ですが、コロナ禍になってしまい、海外での撮影がなくなったので、宮藤さんが脚本を書き直したそうです」

――『ハングオーバー!』みたいな部分は残りましよね? これは書いてもネタバレにならないでしょうか?

「大丈夫です! まーちん(岡田)の“あのシーン”は確かに『ハングオーバー!』ですね。海外で撮影しなくても、結果的に面白くなったし、『ゆとり……』の良さが出たと思います」

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