力輝斗にはすごく純粋なものが隠されている
ーー完成披露試写会の時に、30歳になって最初の作品でとても感慨深いとおっしゃっていたのが印象的でした。
立石力輝斗のような生い立ちの人間、何かを背負っていて、しかも死刑囚。この役を僕にと声をかけていただいたことにまず感謝の気持ちがあります。こういう役を演じられるというイメージを持っていただいているんだなって。
役へのアプローチを考えたときに、死刑囚とか殺人犯とかではなく、彼が幼い頃から一番欲しかったもの、求めていたものは何なのか、人間性を台本から抽出していくのがいいのかなと思いました。本来なら狂気とかけ離れた力輝斗は無惨に妹を殺した殺人犯だけど、その裏側にはすごく純粋なものが隠されている、そこを抽出して役作りをしていきました。
ーー前作のタッグから3年。内田監督が「かなり変化を感じた」とおっしゃっていましたが、竹内さんはご自身の変化を感じていますか?
引き出しも多くなっているはずだし、この3年で自分の意識や生活も変化したので、監督から「だいぶ変わった」と言ってもらえたのは僕としてはうれしかったです。芝居に対する考え方を変えていったつもりでもあったので。
ーー30歳というタイミングで、大好きな内田監督との作品。さらに初の死刑囚役というのはいかがでしたか?
自分の中できちんとイメージができて、心から向き合えるという作品であれば、節目にやる作品はどんなものでもいいと思っていましたが、信頼している内田監督の作品になったのは、やっぱりすごくうれしくて。撮影期間は短かったですが、充実感があったし、いい経験ができたと感じることが多かったです。
ーー役にはしっくり入ることができたとのことですが、役作りで模索したことなどはありますか?
学生時代と死刑囚になって牢獄に入っている、2つの時代を演じなければいけないので、まずはビジュアルの変化をすごく大切にしました。カツラを作る際も自分のイメージを伝え、調整していただきながら作っていきました。監督とメイクさんとたくさん相談をしましたが、しっくりくるまで打ち合わせをしたのですごく入りやすかったです。
次の作品の役作りも始まっていたので、体のラインが見えないように服装にも工夫をしました。あとは現場に入って、周りの風景や音、光などを敏感に感じ取って彼の人生とリンクするように体もなじませていったという感じです。今回はカツラが役作りにかなり大きく影響しました。
ーー学生時代の力輝斗の髪型ですよね。
あのカツラがとにかくしっくりきて。カツラをつけると自然と声や仕草が力輝斗のモードになるんです。僕は、鏡を見ることってすごく大事だと思っています。それはカッコつけたりするためではなく、自分の容姿を目で見て、脳で判断することでいろいろと行動が変わると思っているからです。
今回は撮影期間が短かったからこそ、早く馴染むために鏡で力輝斗を見ることを意識しました。写真を撮ってもらい、他の人の目にはどう映るのかなどもチェックして。そうすることで、佇まいなども自然に力輝斗になっていきました。
ーー学生時代の力輝斗が出てきた時、別の役者さんが演じているのだと思いました。ホクロを同じ位置につけた若い俳優さんかなと。
そう思ってもらえたのはすごくうれしいです。