怪物の仮面を被って人を襲い、斧で頭を割って、脳を奪い去る連続猟奇殺人事件が発生し、弁護士の二宮彰も狙われた。冷血非情なサイコパスだった二宮は難を逃れ、犯人を逆襲することを誓う。映画『怪物の木こり』は第17回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した倉井眉介の同名小説を原作とし、亀梨和也が主人公の二宮彰を演じた超刺激サスペンス。第36回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門に選出されたことでも話題になっている。メガホンをとった三池崇史監督に作品に対する思いや主演の亀梨和也について語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

怪物のように八面六臂の活躍をする亀梨和也

──主人公の二宮を演じた亀梨和也さんとは今回初めてですね。「自分の感性の赴くままに自由に演じてほしいと伝えた」とコメントされていますが、亀梨さんをどのような方だと捉えたうえでのことでしょうか。

亀梨くんは俳優ですが、アイドルでもあります。MCもするし、バラエティ番組にも出る。スポーツの挑戦者でもある。いろんな顔を持ち、八面六臂の活躍をしているけれど、その核にあるのはやっぱりアイドル。しかも長くそのポジションにいて、ファンと共に歩んできました。ファンの期待なども含めて作り上げてきたアイドルとしての姿が本人にオーバーラップして、どっちが本来の自分なのか、自分自身でもわからなくなっているんじゃないかな。そういう状況で生きる人はそう多くはない。我々からすれば怪物みたいな人ですよね。

登場人物としての二宮に対する理解の仕方は我々とは違うと思う。その辺を壊さないで最後までそっと持っていければと思っていました。

画像: 二宮彰(亀梨和也)

二宮彰(亀梨和也)

──監督からは特に演出はされなかったのでしょうか。

自由に演じてもらったとはいえ、どんな髪型で、何を着て、どういう靴を履くのか、美術セットはどんな感じで、どこからカメラが狙うのかといったことで、演じる方も求められていることが大体はわかるわけですよ。

そもそも勝手にセリフを作るわけにはいきませんから、俳優が好きにやれることはすごく少ない。ましてや、脚本を読んで“この役がやりたい”と思っても、キャスティングされなければ、それさえもできない。そういう仕事ですから、ある意味、フラストレーションが溜まっているはず。僕らはそれを利用して、ちょっと方向だけ変えて、マッチで火をつけて爆発させる。監督と俳優の関係ってそういうものだと思うんです。

──今回、マッチに火をつけたところはありましたか。

戦略的にここを刺激して、こういう風に火をつけたというのではありません。そういうことをすれば、みんな抵抗を示すと思います。

朝起きて、現場に行って、演じる。役者はそれが慣れっこになっていますが、そんな中で、「この現場、面白いかも。何か生まれるかも」と期待や可能性を感じることが大事。それは自分の中の可能性なのか、誰かと一緒にやることで生まれる可能性なのか、それとも共演者たちとのお芝居の面白さなのか、それは人それぞれですが、それがあれば何かが生まれます。

そのために、僕らは行きたくなる現場を提供する。サービス業ですね(笑)。だって、演じる人たちが楽しくなかった現場で撮った作品はお客さんが見ても楽しくないと思いますよ。撮影が終わって、「またやりましょうね」、「ぜひぜひ」という関係でありたいと思っています。

──作品の内容はミステリーですが、現場は和気藹々としていたのですね。

暴力映画やホラー映画ほど撮っていて楽しいものはありません。「今の怖ぇ〜」って大人たちがワイワイ楽しんでいます。もちろん遊んでいるわけではなく、みんな真剣に仕事そのものをやった上で楽しむ。真剣さというものは他の人に強要することではありませんからね。思い悩んで苦しんで撮るという方法も当然ありますし、それはそれでいいとは思いますが、自分にはできません。現場を楽しんでこそ、面白いものになるのです。

This article is a sponsored article by
''.