願いに対する思いは一緒でも、道を違えてしまったアーシャとマグニフィコ王
──アーシャもマグニフィコ王も願いの力を強く信じていましたが、マグニフィコ王はその思いが行き過ぎてしまった結果、道を間違えてしまいました。出発点は同じですが、向かう先が違ってしまった2人のキャラクターを作る際に意識されたことはありましたか。
クリス・バック監督(以下、クリス):作品の中で「At All Costs(輝く願い)」という素晴らしい楽曲が流れます。そこでなぜマグニフィコ王は願いを守るのかが歌われており、アーシャとマグニフィコ王の願いに対する思いが同じであることがわかります。
ところが、マグニフィコ王は進むべき道を誤り、願いをコントロールしようとしてしまいます。一方でアーシャは誰もが願う権利を持っているので、願いはそもそもの所有者に返すべきだと主張します。
私たちは2人のキャラクターが一瞬でも同じ感情を持っていたようにしたかったのです。そこに至るまでには試行錯誤しましたけどね(笑)。
ファウン・ヴィーラスンソーン監督(以下、ファウン):ロサスに行けば、誰もが願いを叶えてもらえるとみんなが思っています。アーシャも最初はそれを信じていました。ところがすべての“願い”はマグニフィコ王によって支配されていることをアーシャは知るのです。
マグニフィコ王はディズニー作品のいわゆる古典的なヴィランですが、最初からヴィランとして登場するのではなく、まずはパワフルでチャーミングなキャラクターとして観客を魅了し、それから彼がどんな風に道を踏み外していったのかを追うようにしました。
──お二人が制作された『アナと雪の女王』で主人公はこれまでのヒロインと違い、王子様に頼ることはしませんでした。本作では願いは自分で強く願うことで叶えることが伝わってきました。ディズニー作品において、主人公が願いに向き合う姿勢が変わってきているのでしょうか。
クリス:『アナと雪の女王』では王子様からのキスがすべてを救うわけではなく、家族や姉妹の愛という、これまでとは違った愛が主人公たちを救います。
また、これまでの多くのヒロインが自分のために願いますが、アーシャは自分のためだけではなく、周りの人々のために願うのです。そこがアーシャの気に入っているところです。
ただ、どちらも最初から意図していたわけではありません。映画を作っているときに半分くらいできたところで映像を見ますが、そうするとその物語に何が必要なのか、物語自体が教えてくれるのです。それに耳を傾けることが肝心だと思っています。
今後の方向性については作品によって監督が違うので、何とも言えません。大事なのは物語が何を求めるかになります。これからアーシャみたいな主人公が出てくるのかは物語次第ですし、アーシャと同じくらい魅力的なキャラクターが登場することを私たち自身が楽しみにしています。