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ウーピー・ゴールドバーグ
インタビュー
”この問題に口を閉ざして放置すれば 永遠に何も解決しないと思います“
人種差別がまだ甚だしかった時代の米南部で、一人の少年が理不尽に殺害された事件を扱った問題作『ティル』で製作と出演を兼ねているウーピー・ゴールドバーグ。60年以上前に起きた事件を、いまこの時代にあらためて問い直すことが重要と考えた彼女が、心境を語ってくれた。
『「エメット・ティル殺害事件」が起きた頃、私はまだ子供だったので正確には憶えていないんですが、黒人で男兄弟がいる人なら誰でも知っている話でした。
昔の事件と言われるかもしれませんが、公然の人種差別はまだ撲滅されていないのです。この問題に口を閉ざして放置してしまえば、永遠に何も解決しません。
映画を作っている時は1950年代にタイムスリップしたような興味深い体験でした。私たちにとっては酷い時代だったので、必要ならいつでも抜け出せるようにしないと息が詰まりそうでした。
みんなそれぞれの役になりきっていたこともあって、私は務めてジョークを言ったりしていましたね。そうじゃないとテーマに押しつぶされそうだったから』
そんな中でウーピーが演じたのは被害者少年の祖母役。
『彼女は殺されたエメットを「南部に行かせてやりなさい」と、躊躇していた自身の娘であるメイミーに促してしまったことで、後々酷く自分を責めることになります。自分があんなことを言わなければ悲劇は起きなかったのでは?と。
でもこんなことは誰も予想できません。彼女には心の折り合いを付けてもらえればいいなと思って演じていました。子育ては世界一難しい仕事です。子を持つ親の葛藤を全編を通して描くように注意しました』
そして長い紆余曲折を経て作品が完成した喜びも明かしてくれた。
『最初この企画は「もう皆知っていること」「ヨーロッパでの集客が見込めない」などと言われたのですが、2020年のジョージ・フロイドの事件(警官に不適切に押さえつけられ黒人男性が死亡した事件)が起きて流れが変わりました。
スタジオが思うように作らせてくれたので、とても素晴らしい作品が出来上がったと思います。観客は作品の持つ意義を感じ取ってくれるでしょう』
ウーピー・ゴールドバーグ製作・出演で人種差別を問う実話の映画化
『ティル』
1955年8月、米北部シカゴで育った一人の少年が黒人差別の激しかった南部ミシシッピーに出かけた際、取り返しのつかない悲劇に遭った実話を人気女優ウーピー・ゴールドバーグ(兼出演)と「007」シリーズのプロデューサー、バーバラ・ブロッコリが製作に挑み、自由と人権について世に問う注目作。
母メイミーや祖母アルマに愛情深く育てられた大都会シカゴで暮らす14歳の黒人少年エメットが、親戚の住むミシシッピー州に旅することに。まだ黒人差別主義が色濃く残る土地に息子を送り出すことが不安だったメイミーだが、悪い予感が当たり、エメットは無残な姿でシカゴに帰ってくる。
白人たちにリンチされた事実に強い怒りを覚えたメイミーは、後に世を動かすような大きな決断を下す。
『ティル』
2023年12月15日(金)公開
アメリカ/2022/2時間10分/配給:パルコ ユニバーサル映画
監督:シノニエ・チュクウ
出演:ダニエル・デッドワイラー、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェイリン・ホール、ショーン・パトリック・トーマス
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時にコミカル、時にシリアス。
ウーピーの演技力を味わう代表作4選
『カラーパープル』(1985)
20世紀前半を舞台に、黒人女性の40年に渡る過酷な生き様を描いたウーピーのスクリーンデビュー作。当時は、娯楽映画の名手と見られていたスティーヴン・スピルバーグ監督の手腕を疑問視する声も多かったが、ウーピーはそんな雑音を吹き飛ばす熱演を披露。
『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)
大ヒットしたラブストーリーの名作。デミ・ムーア扮するヒロインと恋人の幽霊を繋ぐインチキ霊媒師をコミカルに演じたウーピーは、オスカーに輝いた史上5人目の黒人俳優に。授賞式では前年の受賞者デンゼル・ワシントンから賞が贈られ、歴史的瞬間となった。
『天使にラブソングを…』(1992)
殺人事件を目撃したクラブ歌手が、身を隠した修道院のお堅い雰囲気を変えていくコメディ。ゴスペル風にアレンジした聖歌隊の歌唱シーンも見どころとなるウーピーの代表作だが、元々は内容に満足せず降板したベット・ミドラーの代りにお鉢が回ってきたものだった。
『ボーイズ・オン・ザ・サイド』(1995)
様々な悩みを抱えた3人の女性が、旅を通じて友情を育んでいくロードムービー。LGBTQ+という言葉が影も形もなかった1990年代中盤、ウーピーは同性愛者のクラブ歌手を等身大の女性として好演。そのリベラルな思想が窺える。劇中では歌唱シーンも披露。