普通の災害映画とは違い、災害後の人間ドラマを描く
──企画を聞いて、どう思いましたか。
事務所の代表から本作の簡単なあらすじを聞き、とても面白いと思ったので、「脚本を一回読んでみよう」と提案しました。大災害後、マンションが一棟だけ残った物語がどのように展開していくのか、ドキドキしながら読みました。
極端な状況下で、誰一人として絶対善でも絶対悪でもないような人たちがお互いにルールを決めながら生きていき、その中で葛藤が生じ、それぞれの奥底の部分が見えてくる。脚本自体が本当に素晴らしく、漫画的であると同時に様々な人間模様も物語に含まれていて、とてもリアル。これが本当の恐怖であり、災害だと思いました。
この作品は、あえてジャンル分けすれば災害映画にあたると思いますが、いわゆる災害映画とは違う質感を持っています。普通の災害映画では災害が続いて、作品全体を通して災害を描くことが多い。ところが、この映画では災害が起こった後に人々がどのようにコミュニケーションを取って状況を乗り越え、苦労しながら生きていくことになるかを如実に描いています。そういった意味では、むしろヒューマンドラマやブラックコメディ寄りだと思います。このような部分において災害映画とは違うと思って選びました。
──脚本を読んで、ヨンタクをどんな人物だと思いましたか。
人生で一度もリーダーを経験したことのない、負け犬のような人生を歩んできた、甲斐性のない人物だと思いました。
住民代表になったときには、おっちょこちょいな態度を取っていました。人前に立つことがなかったせいもありますが、生活の重圧に押しつぶされ、これまでずっと言いようのない悔しさを心に抱えて生きてきたのでしょう。常識のある人物ではないものの、身の回りにいそうな人だと思いました。
──ヨンタクという役に対してどのようなアプローチをされましたか。
どのキャラクターを演じるときも自分と似ている部分があると感じたり、選択や言葉選びに自分との共通点を見つけたりすることがあります。しかし、ヨンタクは自分とは全く違うキャラクターでした。
それでも結局はこの人を演じなければならないし、染まっていかなければなりません。役どころを理解し、同情してこそ、確信を持って演技ができるわけですから、本当に大変でした。
ヨンタクの存在をより鮮明に描写するためにディテールを活かした部分が多かったです。例えば外見において髪が太く伸びていくタイプの人がいますが、ヨンタクがそうではないかという話になり、その姿を表現しようとメイクチームと相談をしました。毛量が多く、M字に禿げ始めている姿を想像し、その姿で撮影を始めたのです。現場の誰もがヨンタクらしいと思ったメイクでした。
ヨンタクのカリスマ性が増すにつれて髪の毛を少しずつ立ち上がらせ、目も真っ赤に充血させ、徐々に権力に魅せられていく感じを出そうとしました。ヨンタクのような極端な感情を演じるのは、俳優にとって難しいと思います。私が経験したことのない感情なので、不安で確信が持てませんでした。果たして私が表現した感情が観客を説得できるだろうか? うまく伝わっただろうか? 常に悩みながら演じました。
──ヨンタクを演じるのは大変だったのですね。他に何か意識したことはありましたか。
私は日頃から人と接するときに相手を観察するのが習慣になっています。意図的にではなく、職業柄、自然とそうしてしまうようです。あの人はどうしてあんな感じなんだろう? そんな様々な疑問が集まって演技の糧になっていきます。それを集めておいて、新しい人物に出会った時に取り出します。『コンクリート・ユートピア』のキム・ヨンタクもそうして作り上げたキャラクターでした。