地面が大きく隆起し、ビルやマンションが次々と崩壊していく中、あるマンションだけが奇跡的に危機を免れた。居住者たちは組織化して、押し寄せてきた外部の生存者たちを排除。ユートピアを作り上げた。映画『コンクリート・ユートピア』は極限下で現れる人間の本質を炙り出すパニックスリラーである。マンションの臨時住民代表ヨンタクを演じたイ・ビョンホンは何の取柄もない男が権力を手にしたことで狂気を放ち、豹変していくさまを体現。第59回大鐘賞映画祭で4回目の主演男優賞を獲得した。メガホンをとったオム・テファ監督に脚本開発やキャストについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)
韓国の監督であれば誰でもイ・ビョンホンに出てもらうのが夢
──マンションの臨時住民代表となるヨンタクをイ・ビョンホンさんが演じています。
韓国の監督であれば誰でもイ・ビョンホンさんに出てもらうのが夢だと思います。
ヨンタクは小市民的な存在ですが、次第に変貌していきます。そのギャップをきちんと表現できる役者は彼しかいません。思い切ってオファーしたところ、快く受け入れていただけました。うれしかったです。そして役どころを的確に体現してくれました。
イ・ビョンホンさんは役者として提案も出してくれましたが、私のことを尊重し、最終的な判断は任せてくれました。
──具体的にどのような提案がありましたか。
割と冒頭の辺りで住民が集まって、代表を決める投票をする場面があります。そこでヨンタクがサインをするのですが、そのときの無意識の行動について提案してくれました。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ハングル文字がわかるとなるほどと思っていただけます。
──防犯隊長を任される公務員のミンソンをパク・ソジュンさんが演じています。
パク・ソジュンさんは素敵でハンサムですが、オーラを抑えて、普通の人物も演じることができる人です。ミンソンの公務員らしい平凡な雰囲気をうまく出してくれました。