地面が大きく隆起し、ビルやマンションが次々と崩壊していく中、あるマンションだけが奇跡的に危機を免れた。居住者たちは組織化して、押し寄せてきた外部の生存者たちを排除。ユートピアを作り上げた。映画『コンクリート・ユートピア』は極限下で現れる人間の本質を炙り出すパニックスリラーである。マンションの臨時住民代表ヨンタクを演じたイ・ビョンホンは何の取柄もない男が権力を手にしたことで狂気を放ち、豹変していくさまを体現。第59回大鐘賞映画祭で4回目の主演男優賞を獲得した。メガホンをとったオム・テファ監督に脚本開発やキャストについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

マンションに住んだことがある既成世代中心に話を広げた

──本作はウェブトゥーン漫画「愉快なイジメ」の第2部「愉快な隣人」の映画化です。企画を聞いたとき、どのように思いましたか。

韓国にはマンションがすごくたくさんあり、それが単なる住居という役割だけでなく、財産として扱われます。なぜ、所有する土地のない住居形態が人の財産の価値を測るものになっているのか。日頃からとても疑問に感じていました。

そんなときに原作であるウェブトゥーン漫画を読んだのです。災害後にマンションが1棟だけ残ったという設定も面白いと思いました。

画像: オム・テファ監督

オム・テファ監督

──脚本開発ではどのようなことを意識されましたか。

原作ではヨンタクがすでに住民代表になっており、生き残るための防衛組織がすでに構築されているところから始まります。そこに中学生が入り込んで、住民たちに恐怖心を感じつつ、やがて彼らも住民たちに同化していきます。

私はマンションに興味があったので、映画では災害が起きた状況でなぜそのような組織ができたのかということにもフォーカスを当てました。それによって、韓国ではマンション特有の文化があることをより端的に見せられると思ったのです。

──映画では中学生が出てきません。

最初は原作に忠実な脚本を書きました。しかし作品規模が大きくなり、有名俳優をキャスティングする必要が出てきたので、キャラクターの年齢が高くなったのです。そこでマンションに住んだことがある既成世代中心に話を広げていきました。

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