新作舞台の主演を争う7人が最終オーディションとして「大雪で閉ざされた山荘」という架空のシチュエーションの合宿に参加した。ギスギスした空気感の中、メンバーが1人、また1人と消えていく。これは事件なのか、オーディションの設定なのか…。映画『ある閉ざされた雪の山荘で』は東野圭吾が1992年に発表した同名人気小説の実写化である。主演の重岡大毅は唯一、異なる劇団から参加した部外者の久我和幸を演じた。劇団からの参加者を演じるのは間宮祥太朗、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴。初めてサスペンス作品に挑んだ飯塚健監督に話を聞いた。(取材・文/ほりきみき)

演じる役に誰よりも詳しくなってくれた間宮祥太朗

──本多雄一を間宮祥太朗さんが演じています。

間宮くんは僕が加わる頃には名前が上がっていました。大畑さんがこれまでに何本かご一緒されていたようです。僕は衣装合わせで初めて顔を合わせました。

本多は最も複雑な役どころです。当然、演じる上で思考量も多いはず。それに真正面から取り組んでくれました。

──間宮さんの魅力についても教えてください。

間宮くんは頑ななところがいいですね。頑なと言ってもネガティブなものではありません。いちばん複雑な役ということもあり、間宮さんは演じる上で腑に落ちない部分があったようで、それを話し合っては撮り、話し合っては撮りました。現場を止めてもやる必要があると思ったのです。

その役については誰よりも詳しくなっておいてもらわないと困るのが俳優部だと思っていますが、本多に関しては間違いなく、その域までやってくれました。

画像: 演じる役に誰よりも詳しくなってくれた間宮祥太朗

──岡山天音さんが田所義雄というクセのある役どころを見事に演じていました。「田所は要と呼ぶべき役なので絶対に岡山さんに託したい」と監督がプロデューサーに提案されたそうですね。

天音とは2013年にTBS系列で放映されたドラマ「放課後グルーヴ」からの付き合いですから、なんだかんだと10年くらいになります。

田所は好きな人の部屋のドアをバーンと開けて、いきなり口を塞ぐシーンがある。あれはとても気持ちが悪い。それをどうやったら成立させられるかというのがテーマでした。「そんな奴いるの?」と思いつつ、映画を撮る以上、いるところに落とし込まないといけない。不自然に見えないってどういうことなのかを天音自身もすごく考えてくれていました。

そういうことも含めて、何か腑に落ちない部分があったのでしょうね。実は衣装合わせをやり直しているのです。衣装部にも再度集め直してもらって、髪型から見直しました。そういう風に俳優部は衣装合わせで1つ1つ、役を具体にしていくわけですが、天音は脚本に書いてある言葉ではないところもちゃんと潰す人です。書いてあることって、あくまでもある種のガイドで、セリフがいちばん大事というわけではありません。セリフの前に何をすべきかを知っているのです。

──衣装といえば、田所が高校時代の陸上部のジャージを着ていましたが、田所が陸上部だったというのは意外でした。

稽古着って俳優の色が出ます。田所は物持ちがいい奴にしたかった。それが神経質に繋がりますから。それで「高校のジャージを着せよう」ということになり、部活を何にするかと相談しているときに、衣装部からいろいろなジャージを見せてもらった中でニシ・スポーツのジャージがいちばんピンときたのです。ニシ・スポーツは陸上をやっている人なら誰でも知っている老舗メーカーなので、田所は陸上部になりました。

ただ、田所が陸上部ではないという意見もすごくよくわかる。むしろ帰宅部が似合う。せいぜい将棋部とか鉄道研究部といった感じ。でも、その辺を歩いている人で野球をやっていたように見えない人が実は高校時代は野球部だったということが普通にあります。もしかすると田所も高校時代はクラスの真ん中にいたかもしれません(笑)。

──これからご覧になる方に向けてひとこと、お願いいたします。

2回見てもらった方がより味わってもらえるタイプの作品です。もちろん1回目でも何が起きてどうなったのかという流れはわかってもらえるよう作っています。ただ、映画は一時停止ができないので、「あれって結局、どういうことだったんだろう」という何か疑問が残りながら進んでいくかもしれません。マッピングも含めて、バレないギリギリのことをやっていますから。2回目は「このとき、この人は実は本当のことを知っていて、その上でこの芝居をしているんだよな」ということを楽しんでいただけると思います。

<PROFILE>
飯塚健

1979年生まれ。映画監督。脚本家。
2012年の監督・脚本作『荒川アンダーザブリッジ』で注目を集め、「イロドリヒムラ」(12、ドラマ)、『風俗行ったら人生変わったwww』(13)、『大人ドロップ』(14)、「REPLAY & DESTROY」(15、ドラマ)、『笑う招き猫』(17、ドラマ、映画)、『榎田貿易堂』(18)、『虹色デイズ』(18)と幅広いジャンルをカバーする。近年の映画作に『ステップ』(20)、『FUNNY BUNNY』(21)、『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』(21)、『野球部に花束を』(22)。最新作は2023年5月に公開された『宇宙人のあいつ』(23)。またコットンクラブでの芝居×生演奏×食という会場一体型ライヴショウ「コントと音楽」シリーズはライフワークとなっている。

『ある閉ざされた雪の山荘で』
1月12日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

画像: 2024年1月12日(金)公開、東野圭吾原作!映画『ある閉ざされた雪の山荘で』本予告 youtu.be

2024年1月12日(金)公開、東野圭吾原作!映画『ある閉ざされた雪の山荘で』本予告

youtu.be

<STORY>
劇団「水滸」に所属する役者6人と外部から参加する1人、合わせて7人に4日間の合宿で行われる最終オーディションへの招待状が届いた。新作舞台の主演を争う最終選考で彼らが“演じる”シナリオは、【大雪で閉ざされた山荘】という架空のシチュエーションで起こる連続殺人事件。出口のない密室で一人、また一人とメンバーが消えていく。果たしてこれはフィクションか? それとも本当の連続殺人か?彼らを待ち受ける衝撃の結末とは――

<STAFF&CAST>
監督: 飯塚健
原作:東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」(講談社文庫)
脚本: 加藤良太、飯塚健
音楽:海田庄吾
主題歌:「FICTION」(WEST.)
出演: 重岡大毅、間宮祥太朗、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社
公式サイト:https://happinet-phantom.com/tozayuki/

This article is a sponsored article by
''.