社会奉仕に身を捧げる母親と、自分のフォロワーのことしか頭にないZ世代の息子はお互いのことが分かり合えない。そんな彼らの日常にちょっとした変化が訪れる。映画『僕らの世界が交わるまで』は個性派俳優、ジェシー・アイゼンバーグの初監督作である。Audibleで30年に渡る歳月を描いた5時間のラジオドラマを自ら映画の脚本に落とし込んだ。母のエヴリンをジュリアン・ムーア、息子のジギーをフィン・ウォルフハードが演じている。プロデュースはアイゼンバーグの盟友でもあるエマ・ストーンが務めた。公開を前にオンラインで取材を敢行。作品に対する監督としての思いを聞いた。(取材・文/ほりきみき)

自分の家族から逃げず、正面から向き合うことが大切

──ジュリアン・ムーアとはどのようにエヴリンを作っていきましたか。

ジュリアン・ムーアには20歳になる息子さんがいます。息子さんとはいい友だちのような関係で、エヴリンとジギーとは違うようです。ですからジュリアンとは互いに頭の中でイメージしながら、いろいろな話をしました。

エヴリンは意義のある仕事をし、やりがいを感じています。しかし、息子は反抗心から母親が世の中において大事なものと考えていることに対して、興味を示しません。エヴリンが思い描いたように育っていっていないので、2人の間で揉め事が起こるのです。

その結果、エヴリンはシェルターにいる男の子に理想の息子を投影し、ジギーは将来、お母さんのような女性になりそうな女の子に恋をしてしまう。本当はお互いに求めあっています。ただ、家族だからこそ素直になれなかったり、求めるものが多くなったりしてうまくいかない。そういったことをジュリアンと話しました。

自分の家族から逃げず、正面から向き合うことが大切だということをこの作品を通じて伝えられればと思っています。

画像: エヴリン(ジュリアン・ムーア)

エヴリン(ジュリアン・ムーア)

──エヴリンのシーンにジギーが作った曲が挿入され、一方、ジギーのシーンにエヴリンの好きなクラシックが流れていました。2人の世界が拮抗しながらも繋がっている印象を受けましたが、音楽の演出にはどのような思いが込められていますか。

まさにそれを僕たちはやろうとしていました。ジギーはカシオのおもちゃピアノみたいなもので演奏していて、ちょっとイライラするような音楽です。それがエヴリンの世界に侵入するのは、まるで息子が母親の世界に侵入するかのようです。

それと同じように、エヴリンが息子の帽子をカイルにあげるときにジギーの曲が流れますが、そこでは母親が息子に対して罪の意識を感じていることを表現しています。

エヴリンはクラシックしか音楽として認めていません。そんなエヴリンにジギーは「あなたはリベラルなのに、なぜクラシックというお金持ちの白人が好むようなものが好きなのか」と問い詰めました。中流の上の暮らしをしているけれど、社会奉仕に身を捧げているということで、自分に折り合いをつけているところをジギーが突っ込んでいるのです。

──衣装についてはいかがでしょうか。

ジギーの洋服を作るのはとても楽しかったです。彼は自分の音楽のためにロゴを作っているという設定なので、ロゴをつけたシャツや帽子、バックなどいろんなジギーグッズを作りました。撮影のときにどれを身につけるか迷ってしまうくらい。彼は学校でもそれを着て、自分の音楽をプロモーションしながら、自分のことをアピールしているのです。

色としては、ジギーは寒色系でけばけばしい感じですが、エヴリンは温かみがあるアースカラーを使っています。シルクなどの素材で、教育程度が高い人たち、いわゆるアッパーミドルクラスでリベラルな人たちが着る洋服にして、母親は息子とは真逆であることを衣装でも表現しています。

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