永野芽郁と高橋文哉が初共演する映画『からかい上手の高木さん』が公開される。原作は山本崇一朗による同名人気コミック。中学で隣の席になった女の子・高木さんに何かとからかわれる男の子・西片。どうにか高木さんにからかい返そうと策を練るもいつも見透かされてしまい失敗。そんな二人のからかいをめぐる日常が描かれている。映画はとある理由で高木さんが島を離れることになり、離ればなれになってしまってから10年が経った頃、島で再会するところから始まる。公開を前に今泉力哉監督にインタビューを敢行。作品に対する思いやキャストについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

天真爛漫さと高い演技力を併せ持つ永野芽郁


──高木さんを永野芽郁さん、西片を高橋文哉さんが演じています。

中学生の頃と変わらない純粋さやあの空気感を誰なら出せるんだろうと思っていましたが、プロデューサーから2人の名前が挙がり、ぴったりだなと思いました。実際、衣装合わせで初めてお会いしてみて、これはもう間違いないなというくらい、2人は高木さんで西片でした。

永野さんは全体の本読みのときに、自分のシーンではなくて、西片の教え子の中学生、大関と町田のとあるシーンを読み上げているのを聞いた時に、「くー、このシーン、いい!」と感激していて。そういう純粋な場面で、きちんと素直にキュンキュンできる永野さんになら、安心して高木さんを任せられるなあ、と思ったことを覚えています。

また、花火のシーンは、実際に島の花火大会に合わせて撮影したのですが、「きれい!」と純粋に楽しんでいました。そんな天真爛漫さと高い演技力を併せ持ちつつ、技術に頼らず、ちゃんと目の前の人と芝居ができる。10年後という設定ゆえに、どうしても大人の色気みたいなものが出てしまう可能性もあったのに、その辺りも永野さんはわかっていて、明るく快活にいてくれて、絶妙な加減で微調整してくれました。素晴らしかったですね。

画像1: 天真爛漫さと高い演技力を併せ持つ永野芽郁


──西片の高橋さんはいかがでしたか。

西片のような天然な部分がご本人にあるのかどうかはわかりませんが、高橋さんはとても真面目な方で、その点では西片感はあったような気がします。先にドラマを撮影して、編集を終えていたので、高橋さんは中学生の西片を演じた黒川くんの芝居を見て、決して真似るわけではないですが、「過去の自分はこんななのね」というのをヒントにできたみたいです。ドラマから映画に繋がっていく上で違和感がないように考えてくれてました。

公開に向けて、高橋さんと一緒に取材を受けたことがあったのですが、そのときに「西片は鈍感ですが、これだけピュアでいいヤツだったら、みんなに好かれますよね」と言っていて。それを聞いて、高橋さんは西片を演じることを楽しんでいて、ある種の不器用さをかわいいと感じて愛せる人なんだなと思いました。それはすごくよかった。演じる人によっては西片という人物を、オーバーなお芝居でカッコ悪くしたり、ダサくしたりする可能性もあったのですが、高橋さんは西片を見下していないので、そのドタバタさ加減も、まったく嫌みな感じがなかったです。


──具体的にはどのような場面でしょうか。

本当にちょっとした行動です。例えば、1つのイヤホンで一緒に聴こうと高木さんから言われて「わかったよ、聴くよ」といって横に座るときに両足を揃えずにばたばたっと段差を下りる瞬間とか、高木さんから置いていかれそうになって、慌ててリュックを背負るドタバタさとか。そのカッコ悪さが絶妙でした。

永野さんの芝居を受けてやったところとしては、プールのあと、着替えてからバスタオルで髪を拭いているシーンですね。「真似しないでよ」「真似してないよ」というやり取りがありますが、それは台本にはありません。テストか何かのときに生まれたアドリブで、そのやり取りが面白いので本番でもやってもらったのですが、そういうことって2人の関係や空気感、キャラクターを理解していないと生まれてこない。2人とも相手に合わせる能力が高かったので、随分と助けられました。

画像2: 天真爛漫さと高い演技力を併せ持つ永野芽郁


──永野さん、高橋さんには細かな演出はされなかったのですね。

からかわれるのを悔しがったり、嫌だといったりするけれど、それを全否定するのではなく、どこか楽しんでいるようなニュアンスは残したい。その辺りの加減についてはちょっと話をしましたが、演技について細かく話をすることはなかったですね。


──高木さんは大人になっても中学の頃と変わらず、西片への好意が駄々洩れでからかっていますが、西片は中学の時ほど向きになって、からかい返す策を練ろうとしなくなりました。

からかいは一歩間違えると意地悪に見えてしまいますが、からかわれた側がどう反応するかで観客の受け止め方が大きく変わってくる。もちろん、真剣にむかついたり、嫌がったりする部分は必要ですが、高橋さんはそこをちゃんと意識して、調整してくれていたように思います。

原作にはいろいろなからかいがありますが、大人がやってもからかいとして成り立つのか、24~25歳のリアリティとのバランスを考えて、脚本に落とし込んでいます。さすがに中学生でなければ成り立たないものもありますからね。本当に嫌がっているように見えないように気をつけました。


──高橋さんのお人柄がわかるようなエピソードはありましたか。

高橋さんはとにかく、すごくいい人です。僕がずっと家を空けて撮影をしていたので、夏休み期間に家族が小豆島へ遊びに来たのですが、息子たちは高橋さんにとてもかわいがっていただきました。現場で一緒に炊き出しを食べたときも、息子たちは高橋さんにすっかり懐いて、久しぶりに会った父親の僕ではなくて、高橋さんと一緒に食べていて(笑)。「野菜もちゃんと食べなよ」と息子たちに言っておいたら、息子たちが残した野菜を高橋さんが食べてくれたらしくて。いい人すぎませんか。

画像3: 天真爛漫さと高い演技力を併せ持つ永野芽郁


──撮影を振り返り、永野さん、高橋さんはいかがでしたか。

永野さんは技術がとても高く、しかし技術で演じるのではなく、きちんと感情で演じてくれる人。本当に繊細なお芝居ができる人だと思います。細かいニュアンスの差も理解してくださるので、演出していて楽しかったです。けっこうお任せも多かったです。

高橋さんは芝居が好きな方ですね。また、細かいことでも気になったら聞いてきてくれましたし、お互いにいろいろな話をしました。

これまでイケメンのカッコいい役が多かったと思いますが、西片のような役も楽しんでやってくれていたので、場数を踏んだら、もっともっといける気がします。僕みたいなタイプじゃなく、がっつり厳しい監督さんと一回やったらいいんじゃないかなとも思います。より高みを目指してほしいし、もっといろんな役を見てみたいです。

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