今回で第10回を迎えた「海外ドラマ大賞」。これを記念して、日本にも戦後1950年代に上陸した“海外ドラマの歴史”を振り返ってみましょう。この長い年月の間に、いかに多くのドラマがファンに愛されてきたかが一目瞭然です。(文・池田敏/デジタル編集・スクリーン編集部)

1990年代~2000年代

チャンネルの多様化が進み、個性的でクオリティも高い作品が続く

全米ではケーブルTVの普及でTVの多チャンネル化が進み、新しい個性的チャンネルが次々と生まれ、従来の地上波局もそれを意識して、意欲的な番組作りをめざしだす。

代表的なのは、映画界の鬼才デヴィッド・リンチ監督が参加したカルトなドラマ「ツイン・ピークス」(1990~91)。「V」に続いてレンタルビデオ業界で注目され、日本の新たな衛星放送のWOWOWでも人気作に。レンタルビデオ業界でヒットしたのは、SFサスペンス「Xファイル」(1993~2018)も。

また、従来の全米TV界に実は無かった青春ドラマが日本でもヒット。「ビバリーヒルズ高校(青春)白書」(1990〜2000)は米国の若者の間の流行をふんだんに取り入れた。

画像: 「ビバリーヒルズ高校白書(青春白書)」(1990、1995)

「ビバリーヒルズ高校白書(青春白書)」(1990、1995)

さらに、病院ドラマのジャンルが盛り上がる。リアリティーを重視した「ER 緊急救命室」(1994~2009)「シカゴホープ」(1994~2000)が後の病院ドラマに与えた影響は大だ。

画像: 「ER 緊急救命室」(1994、1996)

「ER 緊急救命室」(1994、1996)

他にも日本では女性弁護士が主人公の「アリー・myラブ」(1997~2002)、「フレンズ」(1994~2004)などの米国コメディが評判に。

さらに衛星を使うCS放送、スカイパーフェクTV!(現・スカパー!)がサービスを開始。本格的な多チャンネル時代が到来する。

ドラマでも映画に負けないレベルに進化した作品がヒットした2000年代

21世紀に入って世界中でTVの多チャンネル化が進むと、より多彩なドラマが生まれ、映画に負けないレベルに進化していった。

長年、日本ではマイナーだった海外ドラマに追い風が吹く。DVDだ。各話1時間×24話で24時間の物語をリアルタイムで描く「24 TWENTY FOUR」(2001~14)を筆頭に、「LOST」(2004~10)「プリズン・ブレイク」(2005~17)「HEROES/ヒーローズ」(2006~10)は、DVD業界で“海外ドラマ四天王”と呼ばれて大ヒット。

また、これらは男性向けだったが、「セックス・アンド・ザ・シティ」(1998~2004)「ゴシップガール」(2007~12)などで海外ドラマの魅力に気づく女性ファンも続出した。

画像: 「セックス・アンド・ザ・シティ」(1998、2000)

「セックス・アンド・ザ・シティ」(1998、2000)

政界ドラマ「ザ・ホワイトハウス」(1999〜2006)、ミュージカル「glee/グリー」(2009~15)などジャンルも増え、「CSI:科学捜査班」(2000~15)「グレイズ・アナトミー」(2005~)などロングラン作品も登場。

画像: 「glee/グリー」(2009、2010)ディズニープラスのスターで配信中  © 2024 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

「glee/グリー」(2009、2010)ディズニープラスのスターで配信中

© 2024 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

そして米国では高校教師(ブライアン・クランストン)が麻薬ビジネスにのめり込む異色作「ブレイキング・バッド」(2008〜13)が続く2010年代に拡大する“動画配信サービス”で注目され、時代の変化を先取った。

2010年代~現在

動画配信サービスも始まり、ますますドラマ製作が頂点を越える?

この頃になると“ピークTV”という言葉が米国で生まれる。ドラマを見る人の数や時間には限界があり、もうドラマは増えないのではないかという説だ。しかしそんな頂点(ピーク)は2020年代まで続いていく。

時代の象徴になったのは「ウォーキング・デッド」(2010~22)。かつてTVは刺激的な表現がふさわしくないと考えられたが、本作はなんとゾンビホラー。しかし大ヒットし、大人向けファンタジー巨編「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011~19)も熱狂を呼んだ。

米国以外も、TVの伝統が長い英国から、ベネディクト・カンバーバッチ主演「SHERLOCK/シャーロック」(2010~)、「ダウントン・アビー」(2010~15)がヒット。

そして2010年代の中盤、大きな動きが起きる。インターネットを通じて映像エンタメを楽しむ、動画配信サービスの台頭だ。

画像: 「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2016、2016) Netflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」独占配信中

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2016、2016)
Netflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」独占配信中

「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2016~)などのNetflixは、2015年秋に日本でもサービスを開始。米国では他にも、従来の映画会社と関係が深い、ディズニープラス、Hulu(日本とは別会社)、CBSオール・アクセス(後のParamount+)などが始まり、いずれもオリジナルのドラマや映画を目玉コンテンツにする。

コロナ禍で始まった2020年代はドラマファンが増加し、アジアにも注目が

いきなりコロナ禍という歴史的出来事で幕を開けた2020年代。外出ができない現実は、多くのユーザーを動画配信に集めた。海外ドラマのファンは日本でも増えたはず。

画像: 「マンダロリアン」(2019、2019)ディズニープラスにて独占配信中  ©2024 Lucasfilm Ltd.

「マンダロリアン」(2019、2019)ディズニープラスにて独占配信中

©2024 Lucasfilm Ltd.

従来、ドラマは映画より格が下と見られたが、映画「スター・ウォーズ」シリーズのオリジナルドラマ「マンダロリアン」(2019~)は動画配信で大ヒット。『マンダロリアン&グローグー(仮題)』として2026年に映画化されるが、映画とドラマの逆転現象だ。

また動画配信の世界では欧米以外、各国のドラマも注目を集める。Netflixで「愛の不時着」(2019~20)などの韓国ドラマが好評で、「イカゲーム」(2021)は世界で1億人以上に見られ、非英語作品としてエミー賞を初受賞。映画界でのる『パラサイト 半地下の家族』(2019)に匹敵する衝撃を与えた。

アジアンパワーは快進撃中で、スタッフ&キャストにアジア系米国人が集まった「BEEF ビーフ」(2023)、真田広之が主演の「SHOGUN 将軍」(2024)、日米合作「TOKYO VOICE」(2022~)が話題に。

引き続いて何が起きるか分からない、だから目が離せない。それが海外ドラマだ。

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