米ドラマ界最大の祭典「エミー賞」の本年度ノミネーションが発表。第76回を迎える今回の台風の目は「SHOGUN 将軍」。今年最多の25ノミネートという快挙を果たした本作の凄さとは? また、本作以外の注目作、そして気になるスターたちも一挙紹介。これらを知っておけば、来る9月の授賞式をさらに楽しめるはずです。
(文・池田敏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:Courtesy of FX Networks ディズニープラスの「スター」で独占配信中

本年度最多ノミネーション
“FX”の大躍進にも貢献

 9月に第76回の授賞式が開催される全米TV界のアカデミー賞、エミー賞。そこで今年最多の22部門&計25個のノミネーションを獲得したのが「SHOGUN 将軍」。全米放送した全米FXチャンネルにとって、本作と「一流シェフのファミリーレストラン」(計23ノミネーション)を合わせた計93ノミネーションは同局史上最多。今年はドラマ界の強豪Netflix(計107ノミネーション)に次ぐ、第2位になる大躍進を遂げた。

 出色なのは、英語(劇中ではポルトガル語とされているが)よりも日本語のせりふが圧倒的に多く、非英語のドラマがドラマシリーズ作品賞にノミネートされるのは韓国の「イカゲーム」以来、2年ぶりの快挙となった。

 作家ジェームズ・クラヴェルによる原作小説「将軍」は1980年にドラマ化され(映画版も作られた)、当時としては珍しい日本での本格ロケを敢行し、日本からは『七人の侍』などの名優・三船敏郎や、島田陽子らが出演。第33回エミー賞でリミテッドシリーズ作品賞に輝いた。そんな名作をリメイクした「SHOGUN〜」だが、このプロジェクトのキーパーソンは俳優、真田広之である。

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「日本人役には日本人を」
情熱から実現した配役

 日本で長年、映画とドラマの両方で活躍した後、第76回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされた『たそがれ清兵衛』、トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』で注目された真田は世界に進出。それから約20年のインターナショナルな活動があったからこそ、この「SHOGUN〜」の快挙がある。

 真田は主演のみならずプロデュースも務める立場で、この「SHOGUN〜」のプロジェクトに初期から参加したという。そんな真田ら製作陣が重視したのは、日本では時代劇と呼ばれる戦国ドラマを、究極のレベルに高めること。これまで日系と他のアジア系が混同されがちだったハリウッドの価値観に挑戦するかのごとく、真田はすべての日本人の役を、日本人、または日本にルーツを持つ俳優が演じるよう提案。アンナ・サワイ、浅野忠信、平岳大、二階堂ふみ、西岡德馬、尾崎英二郎らが適役にキャスティングされた。

 また、一時期は製作の拠点=スタッフルームが、時代劇の名作を多数生み出した東映京都撮影所に置かれた。諸事情あってカナダなどで撮影されることになったが、とはいえ、日本の時代劇を知る名クルー陣をわざわざ海外に送り込むほど、真田は情熱を注いだ。

 他の製作陣だが、『トップガン』の36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』に原案担当として参加した、いわばリメイクの名手ジャスティン・マークスとその妻レイチェル・コンドウ(ハワイ育ちの日系人)が参加。具体的な金額は不明だが、FXチャンネル史上最大規模の製作費を投入し、FXは「ゲーム・オブ・スローンズ」のような大人向けの冒険アクション大作をめざしたかのよう。やはり本作は、歴史的な実話を下敷きにしただけで、あくまでフィクションである。

現代に問うメッセージ性&
アドベンチャーとしても◎

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 物語は原作と同様、後に按針と呼ばれる英国人ジョン(本作が出世作となったコスモ・ジャーヴィス)の視点から、戦国時代の日本を描く。各地の大名が虎永をつぶそうと謀略を企てる中、虎永はどうすれば日本をまとめる「将軍」になれるか、暗中模索を続ける。権力と欲望が交錯する人間関係を、米国ドラマらしく暴力や性といった要素も盛り込んで描くが、本作は混迷する21世紀の世界に、真のリーダーシップを問うたのが白眉だったと思われる。そんなメッセージ性もある一方、アドベンチャーとしてめっぽう面白い。

 リアリズムにこだわった真田ら製作陣の本気度も高い。当時の日本文化を重視し(俳句の使い方など)、日本の時代劇以上に戦国ドラマの醍醐味を堪能できる。そして本作は、シーズン1だけで終わるリミテッドシリーズになる予定だったが、シーズン2・3も作られると決定。そしてエミー賞でもリミテッドシリーズ部門でノミネートされそうだったのが主流であるドラマシリーズ部門に転じ、今年一番の話題作に躍り出ることになった。

本作を成功へ導いた
真田広之の奮闘

 それにしても世界のドラマ界の頂点に立つかもしれない真田の躍進に、筆者は熱い想いを感じずにいられない。というのも真田は若手時代、後に『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に主演するミシェル・ヨーと『皇家戦士』で共演し、海外進出後、『ラッシュアワー3』『ウルヴァリン:SAMURAI』『ジョン・ウィック:コンセクエンス』などのハリウッド映画に出演したがその一方、「LOST」「リベンジ」「HELIX−黒い遺伝子−」「エクスタント」「ザ・ラストシップ」といった米国ドラマに出演。日本出身の俳優としてこれほど米ドラマ界で活躍してきた俳優は他にいない。

 自身が出演しない日も撮影現場に通い、日本の文化が正しく描写されるよう指導したという真田。その奮闘なくして本作の成功はなかった。これは全日本人必見のエンタメだ。

STORY

 1600年の日本。太閤亡き後、五大老が君臨する中、真面目で有能な虎永(真田)は他の大老たちから理不尽な攻撃を受ける。そんな時、謎の英国人ジョン・ブラックソーン(ジャーヴィス)が伊豆に到着し、キリシタン(キリスト教徒)でポルトガル語に堪能な鞠子(サワイ)が通訳となる。権力のぶつかり合いに虎永や鞠子が巻き込まれる中、彼らに味方するようになるジョン。時勢は日本の運命を決める、関ヶ原の戦いに向けて大きく動く。

第76回エミー賞最多! 22部門25ノミネーション!「SHOGUN 将軍」ノミネーションリスト
★付きは日本人がノミネートされている賞
・作品賞
・主演男優賞 〈真田広之〉(★)
・主演女優賞 〈アンナ・サワイ〉(★)
・助演男優賞〈浅野忠信/平岳大〉(★)
・ゲスト男優賞〈ネスター・カーボネル〉
・監督賞〈フレッド・トーイ〉
・脚本賞〈第1話「按針」/第9話「紅天」〉
・キャスティング賞(★)
・撮影賞(1時間)〈第1話「按針」/第9話「紅天」〉
・映像編集賞(★)
・メインタイトルデザイン賞
・プロダクションデザイン賞(時代劇・ファンタジー〈1時間以上〉)
・特殊視覚効果賞
・スタントパフォーマンス賞(★)
・オリジナルメインタイトルテーマ曲賞
・作曲賞 
・衣装賞(時代劇)(★)
・メイクアップ賞(時代劇/ファンタジー・SF)
・人工装具メイクアップ賞
・ヘアスタイリング賞(時代劇/ファンタジー・SF)
・音響編集賞(★)
・音響ミキシング賞(★)

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