名優のキャリアを中心にその道のりを振り返る連載の第40回。今回取り上げるのは最新作にして俳優引退作『2度目のはなればなれ』が公開される英国の大ベテラン、マイケル・ケイン。第一線で活躍し続けた70年にも及ぶアクター人生を振り返ってみましょう。
(文・大森さわこデジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:Photo by GettyImages

マイケル・ケインという奇跡の俳優の道のり

名優であり職業アクターでもある凄さ

 マイケル・ケインは本当に奇跡的な男優のひとりではないかと思う。まず、驚かされるのが、そのキャリアの長さ。60年代から2020年代まで70年間近く、休むことなく第一線で活躍していて、それぞれの時代に代表作がある。ミステリー、アクション、コメディ、人間ドラマ、戦争映画、SFまで幅広いジャンルの作品に出演。また、主演・脇役問わず顔を出し、これまで130本以上の映画に出演してきた。

 1933年3月14日に英国のロンドンで生まれ、舞台監督の助手などを務めながら俳優となる。『韓国の丘』(56、日本劇場未公開)で映画デビュー。60年代から快進撃が始まり、『国際諜報局』(65)や『アルフィー』(66)に出演。すでに30歳を超えていたので、俳優としては遅咲きだった。

画像: 最初の当たり役となった『国際諜報局』のハリー・パーマー役

最初の当たり役となった『国際諜報局』のハリー・パーマー役

 これまでオスカー候補になったのは6回で、『アルフィー』、『探偵スルース』(72)、『リタと大学教授』(83、日本ビデオ公開)、『愛の落日』(02)で主演男優賞候補、『ハンナとその姉妹』(86)と『サイダーハウス・ルール』(99)では助演男優賞受賞。一方、『アイランド』&『殺しのドレス』(共に80)、『ジョーズ,87 復讐篇』(87)では最低演技に贈られるラジー賞候補となる。失敗作や怪作に出ても、淡々と職業アクターとしての道を歩んできたところが彼のすごさでもある。

画像: 00年アカデミー賞授賞式で『サイダーハウス・ルール』で 2度目の助演男優賞受賞

00年アカデミー賞授賞式で『サイダーハウス・ルール』で 2度目の助演男優賞受賞

年を重ねるにつれ、やわらかな人間性も発揮

 若い頃はスーツやコートが似合うクールな二枚目だったが、一方、どこかいかがわしい雰囲気もあり、ミステリー系作品でその個性が生きていた。年を重ねることでやわらかな人間性も身につけ、芸幅を広げた。英国的なダンディズムやユーモアの持ち主でもある。クリストファー・ノーランとは(カメオ参加を除き)7本で組み、「バットマン」シリーズの執事役では味のある演技を見せる。

 本国では著述業でも評価され、日本では「演技の勉強」(劇書房)、「わが人生:名優マイケル・ケインによる最上の人生指南書」(集英社)などの訳書あり。60年代をふり返るドキュメンタリーの快作『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』(17)では製作、ナレーションを担当。労働者階級の彼が社会の壁をどう乗り越えてきたかがが語られる。著作では「成功とは苦難を乗り切ること」と語るが、これまで前向きな姿勢を貫くことで長いキャリアを築いてきた。98年にはCBE勲章を授与され、00年にはサーの称号を得た。

 私生活では53年に女優のパトリシア・ヘインズと結婚後、58年に離婚。73年にモデル・女優のシャキーラ・バクシ(現在はケイン)と再婚。どちらの結婚でも娘が生まれている。

画像: 2024年2月ロンドンでクリストファー・ノーラン監督のBFIフェローシップ受賞晩餐会に集まった『オッペンハイマー』チームと記念撮影(前列左から)キリアン・マーフィー、ケイン、ノーラン、 エマ・トーマス(後列左から)ジョシュ・ハートネット、トム・コンティ、ケネス・ブラナー、ジェニ ファー・レイム、ホイテ・ヴァン・ホイテマ、デヴィッド・ジュリアン、ハンス・ジマー

2024年2月ロンドンでクリストファー・ノーラン監督のBFIフェローシップ受賞晩餐会に集まった『オッペンハイマー』チームと記念撮影(前列左から)キリアン・マーフィー、ケイン、ノーラン、
エマ・トーマス(後列左から)ジョシュ・ハートネット、トム・コンティ、ケネス・ブラナー、ジェニ
ファー・レイム、ホイテ・ヴァン・ホイテマ、デヴィッド・ジュリアン、ハンス・ジマー

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