名優のキャリアを中心にその道のりを振り返る連載の第40回。今回取り上げるのは最新作にして俳優引退作『2度目のはなればなれ』が公開される英国の大ベテラン、マイケル・ケイン。第一線で活躍し続けた70年にも及ぶアクター人生を振り返ってみましょう。
(文・大森さわこデジタル編集・スクリーン編集部)
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DECADE PERFORMANCE

1960年代 スパイ役、プレイボーイ役で人気者に

『ズール戦争』(64)で軍人役を演じた後、レイ・デイトン原作のスパイ映画『国際諜報局』(65)が評判を呼ぶ。メガネをかけてシニカルな発言をする生活感のあるスパイ、ハリー・パーマー役が人気となり、続編『パーマーの危機脱出』(66)、『10億ドルの頭脳』(67)も作られる。また、自由気ままに生きる粋なプレイボーイに扮した『アルフィー』(66)も彼の代表作となり、初のオスカー候補となった。アクション映画『ミニミニ大作戦』(69)も好評を博す。

画像: 初のオスカー候補となった『アルフィー』

初のオスカー候補となった『アルフィー』

1970年代 ミステリーからコメディまで幅広い活躍

 この時代の代表作はふたりの男たちの心理ゲームが描かれたミステリー『探偵スルース』(72)。ケインは名優ローレンス・オリヴィエにひけをとらない演技で、2度目のオスカー候補となる。また、『狙撃者』(71)は英国ではカルト的な人気を博す。ショーン・コネリーとは『王になろうとした男』(75)で共演。『鷲は舞いおりた』(76)、『遠すぎた橋』(77)などの戦争映画、『カリフォルニア・スイート』(78)のようなコメディにも出演している。

画像: 名優オリヴィエと競演した『探偵スルース』

名優オリヴィエと競演した『探偵スルース』

1980年代 初のアカデミー賞助演男優賞受賞

 演技派として多彩な魅力を見せ始めた時代。『ハンナとその姉妹』(86)は妻の妹に恋をする男の役でユーモラスな好演を見せ、アカデミー助演男優賞獲得。大学教授役の『リタと大学教授』(83、ビデオ公開)でオスカーの主演男優賞候補。『殺しのドレス』(80)や『デストラップ 死の罠』(82)では意外性のある役を怪演。スポーツ物『勝利への脱出』(81)、犯罪物『モナリザ』(96)、コメディ『ペテン師と詐欺師/だまされてリビエラ』(88)も好評を博す。

画像: 『ハンナとその姉妹』でオスカー助演賞受賞

『ハンナとその姉妹』でオスカー助演賞受賞

1990年代 2度目のオスカー受賞でますます売れっ子に

 この時代、2度目のアカデミー助演男優賞に輝いたのがジョン・アーヴィング原作の『サイダーハウス・ルール』(99)。孤児の主人公に目をかける孤児院の医院長役を好演している。『リトル・ヴォイス』(98)では、天才的な歌唱力を持つ少女と出会う音楽プロモーター役に扮した。また、マペットたちと共演した『マペットのクリスマス・キャロル』(92)、スティーヴン・セガール監督・主演のアクション『沈黙の要塞』(94)など怪作(?)にも出演。

画像: ▶2度目のオスカーを獲得した『サイダーハウス・ルール』

▶2度目のオスカーを獲得した『サイダーハウス・ルール』

2000年代 多彩な作品に出演し新時代が訪れる

 ケインの新たな時代が訪れる。『愛の落日』(02)でヴェトナム人の若い女性に恋をする英国の記者役で、初老の男性のプライドと悲哀を見せ、4回目のアカデミー主演男優賞候補。『バットマン ビギンズ』(05)、『プレステージ』(06)、『ダークナイト』(08)ではクリストファー・ノーランと組み、彼の映画の常連俳優となる。ヒット作『デンジャラス・ビューティー』(01)や自身の代表作のリメイク『スルース』(07)、SF『トゥモロー・ワールド』(06)にも出演。

画像: 4回目のオスカー主演賞候補となった『愛の落日』

4回目のオスカー主演賞候補となった『愛の落日』

2010年代 クリストファー・ノーランとの蜜月が続く

 この時代も安定した活躍が続く。ノーラン監督との蜜月時代は続き、『インセプション』(10)、『ダークナイト ライジング』(12)、『インターステラー』(14)で初老らしいダンディな魅力を発揮する。『ダンケルク』(17)には声のみのカメオ参加。秘密組織のスパイ役の『キングスマン』(14)や強盗団の老人に扮した『ジーサンズ はじめての強盗』(17)ではコミカルな味を見せる。「グランド・イリュージョン」シリーズ(13〜16)にも出演。

画像: 「バットマン」シリーズで共演したゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンとノーランを囲んで

「バットマン」シリーズで共演したゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンとノーランを囲んで

2020年代 引退記念主演作でフィナーレ

 90代となり、『2度目のはなればなれ』(23)で引退を宣言。老人ホームで生活を共にする愛妻のもとを離れ、フランスのノルマンディで人生最後の目的を果たそうとする主人公に扮して渋い魅力を発揮。有終の美を飾る。ノーラン監督との最後のコンビ作になったのは『TENET テネット』(20)。また、「オリバー・ツィスト」の現代版『スティーラーズ』(21)では窃盗を企てるボス役。『ベスト・セラーズ/小説家との旅路』(21、DVD公開)では偏屈な性格の作家に扮している。

画像: 『2度目のはなればなれ』のワールドプレミアで

『2度目のはなればなれ』のワールドプレミアで

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