名優ニコラス・ケイジが不思議な現象で人々の夢の中に登場するごく普通の大学教授を演じた異色作が日本上陸。製作はあのアリ・アスターというポイントも見逃せません!(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

ニコラス・ケイジ コメント

『ドリーム・シナリオ』で何もしていないのにいきなり人気者になって、いきなり炎上してしまう大学教授を名演したニコラス・ケイジ。そのケイジが一風変わった本作の魅力と演技プランについて語ります。

画像: ニコラス・ケイジ コメント

“父も大学教授だったのでこの世界特有の競争意識などは共感できますね”

「ポール・マシューズは紳士であり、自分の仕事や生徒を気にかけるような思慮深い人ですが、個人的な不安を抱えていて、自分は成功していると心からは思えていないんです」とニコラス・ケイジは『ドリーム・シナリオ』で自ら演じた異色の主人公を分析する。

「彼の望みは本を出すことですが、それを妨げている原因が自分にもあるとは考えておらず、責任転嫁出来る要素ばかりを探しているような男です」と辛らつにポールという人物像を語るが、そんな男が多くの人々の夢の中に現れ、一躍時の人になることからこの映画はスタートする。「本来なら誰も振り向かないような男」とケイジが言うポールは、人々の夢に出てきたばかりの頃は思わぬ名声を得て、世界的に知られる有名人になるが、やがて彼に関する夢が悪夢に変わってくると、彼自身は何もしていないのに誰からも敵視されるようになる。「ポールは面白いキャラクターですが、同時に観客は心を痛めることになるでしょうし、彼が経験することに恐怖を覚えますね」とケイジは語っている。

そんな悪夢の映画の脚本を呼んだ時、ケイジは「ポールが経験する事態を僕も経験したことがある!」とクリストファー・ボルグリ監督にすぐ連絡したそう。有名人なら誰もが体験するであろう、名声に関する光と闇のような物語だからだ。さらにケイジの父オーガストは大学教授で学問の世界についても精通していた。

「父はポールより学問の世界で主導権を握る立場にいましたが、誰がより良い論文を発表しているか、研究しているかといったその世界特有の競争、嫉妬、悪意などについては私も理解していました。この世界では生き残るために他人を食い物にしなくてはいけないみたいなメンタリティがあって、ポールが持つ懸念には共感しました。私の父も同じような問題を抱えていたからです」とケイジは告白する。こうした共通性を持つ彼は本作に最も適した俳優だったと言えそう。

ケイジは「ポールというキャラだけでなく、これまでにない新しい作品だと思いました。私は監督の精神世界を歩き回り、映画の世界に収まりきらないことに挑戦することを最も重要視していました」と心がけ、監督と相談してポールという男の人間像を深めていった。

「レッドカーペットを歩く自分とはなるべくかけ離れた存在にしたかったので、地味な服に眼鏡をかけさせ、鼻も少し修正して、声も少し変えました。性格は怒った時でさえ対立そのものを避けているような控えめな人物。神経質なのは本を出すという夢がかなえられていないせいです」と詳しく説明するが、演技のコントロールは監督に委ねたそう。

「これはクリストファー(監督)が生み出した物語なので、撮影中はリモコンをキミに渡すから、ボタンを押してほしい、と伝えました。これは以前『アダプテーション』でチャーリー・カウフマン監督と仕事をしたときに用いた方法です。キャラを立体的にするためにいろんなアイディアを持ち込みますが、これらが巧く機能するのは、私がクリストファーたちが書いた作品の中に収まる場合だけです」と主張した。

プロデューサー、アリ・アスターのこれから

『ドリーム・シナリオ』でプロデュースを務めたのは『ミッドサマー』などのアリ・アスター。今最も新作が注目される人であるアスターですが、監督作以外にも本作のように製作を担当する新作がズラリで多忙のようです。

画像: アリ・アスター Photo by Stewart Cook/Getty Images for A24

アリ・アスター
Photo by Stewart Cook/Getty Images for A24

2024年は日本のファンに監督作『ボーはおそれている』とプロデュース作品『ドリーム・シナリオ』を贈ってくれたアリ・アスター。全米では他に製作を担当した『Sasquatch Sunset(原題)』『Rumours(原題)』も公開されているが、売れっ子の彼は2025年以降も大忙しのようだ。

 まず最新監督作で撮影も済んでいるのが『Eddington(原題)』。パンデミックの最中、ニューメキシコ州の街中に取り残されたカップルが、最初は歓迎されていたものの、夜になると事態が一変するというダークコメディもので、ホアキン・フェニックスが保安官を演じる。エマ・ストーン、オースティン・バトラーらが共演。もちろんA24とのタッグ作だ。製作作品が目白押しで、特に注目されるのがヨルゴス・ランティモス監督と組む『Bogonia(原題)』で陰謀論者の若者たちが大企業のCEOを宇宙人と信じて誘拐するという物語。エマ・ストーン、ジェシー・プレモンスが再共演する。本作同様に撮影が終了しているのがアレックス・シャーフマンの長編監督デビュー作『Death of a Unicorne(原題)』。伝説の生物ユニコーンを車で轢いてしまった父娘が、その処理に困惑するストーリーで、ジェナ・オルテガらが出演。こちらはA24が全米配給する。

 またゼンデイヤとロバート・パティンソン共演で撮影中と報じられたのは『The Drama(原題)』。内容の詳細は分かっていないが、大切な日を前に予期せぬ事態を迎えるカップルのロマンスを描くという。A24とアスターの会社スクエア・ペグの共同製作。監督は『ドリーム・シナリオ』のクリストファー・ボルグリという期待作だ。

『ドリーム・シナリオ』
2024年11月22日(金)公開
アメリカ/2023/1時間42分/配給:クロックワークス
監督・脚本:クリストファー・ボルグリ
出演:ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ニコルソン、マイケル・セラ

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