ティモシー・シャラメが、あのボブ・ディランを体現する『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』の公開に先駆けて、映画スターたちがどのように音楽界のカリスマに扮したかを研究!(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』より ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

ティモシー・シャラメ as ボブ・ディラン
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2025)

画像: ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

オスカーも視野!“奇跡”レベルでボブ・ディランに

ミュージシャンとして誰もが認めるカリスマであり、ノーベル文学賞まで受賞したボブ・ディラン。『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は、その“伝説の始まり”を描くので、演じる俳優には大きなプレッシャーがかかったはずである。ただし舞台となるのは、1960年代前半。ディランも20代ということで、多くの人の脳裏に刻まれているイメージとは少し違うはず。作品自体もミュージシャンの伝記映画というより、「青春ムービー」のムードが濃厚。ある程度、演じる自由を与えられながらも、やがて誰もが知るボブ・ディランになることを納得させる必要があり、ハードルの高いチャレンジだったのは間違いない。

そこに果敢に挑んだティモシー・シャラメは、ボブ・ディラン本人も賞賛したと言われるほど、圧巻の演技で応えた。アカデミー賞の主演男優賞でも最有力の一人となっており、もしオスカーを手にすれば同賞の最年少記録を更新することになる(これまでの記録はエイドリアン・ブロディの29歳と343日。シャラメが受賞すれば29歳と65日)。

これまでティモシー・シャラメの演技を観てきた人にとっても、本作は明らかに新鮮なインパクトをもたらす。彼は若き日のディランになりきるために、セリフの発声から大きく変えているからだ。そして歌唱シーンではもちろん自分の声で「風に吹かれて」など数々の名曲を聴かせてくれる。特に劇中で何度か描かれるステージパフォーマンスのシーンでは、映画を観るわれわれもライブ会場に連れて行かれたように、その歌唱力で圧倒。シャラメは本格的な歌をミュージカル映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』で披露していたが、別人のような表現力に驚かされる。さらにギターやハーモニカの演奏もこなす姿に、いつしか彼が演じている事実すら忘れることだろう。まさに俳優としての最高の仕事をやってのけた感があるのだ。本作は新型コロナやハリウッドのストライキなどで製作が滞ったが、それが役作りには幸いした。シャラメは5年にもおよぶ長期間のボイストレーニングによって、ディランの“声”を獲得したのである。

サングラスをかけた際のカメラに対する顔の角度や、ステージに立つ姿勢など、細かい部分にも“ボブ・ディランらしさ”を息づかせ、しかもあざとさ、わざとらしさが皆無という奇跡のレベルが実現された。一方でエル・ファニング演じるシルヴィ、同時代の人気シンガー、ジョーン・バエズとの恋愛関係では、20代の青年らしい純粋さ、若さゆえの無鉄砲な側面も名演。常識を破ってまでも、自身の目指す音楽を模索するその姿に、ミュージシャンという枠を超えて感動させるのは、全方位での完璧な演技の賜物だと、本作のシャラメは教えてくれる。ラストシーンのディランの姿を目にした時、本作で描かれた5年間の、一人の人間の成長を噛みしめて、誰もが心を震わせるはずだ。

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
2月28日(金)公開
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
2月28日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

オースティン・バトラー as エルヴィス・プレスリー
『エルヴィス』(2022)

画像: オースティン・バトラー as エルヴィス・プレスリー 『エルヴィス』(2022)

年齢ごとにパフォーマンスにも変化を

『ザ・シンガー』のカート・ラッセル、『プリシラ』のジェイコブ・エロルディなど多くの俳優が演じてきたエルヴィス・プレスリー。その最高峰を挙げるとしたら本作のバトラーだろう。元マネージャーのパーカー大佐との関係を軸に描き、エルヴィスの“闇”にも迫った作りが伝記映画として高く評価された。バトラーは20代から40代までのエルヴィスを体現。ステージでのパフォーマンスも年齢によって変化させた。若い時代はバトラーの歌声も使用。

『エルヴィス』デジタル配信中

4K ULTRA HD&ブルーレイセット6,980 円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ホアキン・フェニックス as ジョニー・キャッシュ
『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005)

画像: 『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』 ディズニープラスの「スター」で配信中 © 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』 ディズニープラスの「スター」で配信中
© 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

ギターの持ち方も本人同様に

カントリー・ロックの大スターで、多くのミュージシャンに影響を与えたジョニー・キャッシュ。その成功までの道のりを、2番目の妻となった歌手ジューンとの愛を織り交ぜて描いた一作。ホアキン・フェニックスはキャッシュのギターの持ち方をマスターし、ジューン役のリース・ウィザースプーンと共に歌唱も自身でこなした。キャッシュは『名もなき者』にも登場。ボイド・ホルブルックが演じている。監督も同じくジェームズ・マンゴールド。

タロン・エガートン as エルトン・ジョン
『ロケットマン』(2019)

画像: © 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

© 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

本人お墨付きの歌声を披露

 世界で最も売れたソロ・アーティストで、『ライオン・キング』など映画音楽でも活躍。サーの称号を持つエルトン・ジョン。エガートンはその複雑な内面はもちろん、本人のお墨付きももらい、名曲の数々を自身の歌声で見事にこなした。ゲイである自分との葛藤、アルコール依存などシリアスな側面もありつつ、ミュージカル演出やド派手なステージパフォーマンス、そしてエガートンのエネルギー全開の演技で、ポジティブで明るい後味に!

『ロケットマン』

4K Ultra HD+ブルーレイ〈英語歌詞字幕付き〉:6,589円 (税込)
Blu-ray: 2,075 円 (税込)
DVD: 1,572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント

© 2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

キングズリー・ベン・アディル as ボブ・マーリー
『ボブ・マーリー:ONE LOVE』(2024)

画像: © 2024 Paramount Pictures.

© 2024 Paramount Pictures.

外見に加え演奏スタイルも再現

レゲエミージックの大御所で、ジャマイカの国民的ヒーローであるボブ・マーリー。黒人と白人の間に生まれた出自や、国内の政情に翻弄された運命、妻との深い絆などが、おなじみの曲とともに展開していく。ベン・アディルは『あの夜、マイアミで』のマルコムX役に続いて実在の偉人を好演。減量やドレッドヘアで外見を近づけ、ギターの弾き方を徹底的に学び、マーリーの雰囲気をパーフェクトに再現した。歌唱はマーリー本人の音源が使われている。

『ボブ・マーリー:ONE LOVE』

4K Ultra HD+ブルーレイ: 7,260 円 (税込)
ブルーレイ+DVD: 5,280 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント

© 2024 Paramount Pictures.

CHECK #1)ボブ・ディランを演じた6人の俳優たち

ボブ・ディランの人生を描いた『アイム・ノット・ゼア』は、ディランの複数の側面を6人の俳優が演じ分けるという異色スタイル。クリスチャン・ベール、リチャード・ギア、ベン・ウィショー、今は亡きヒース・レジャー、黒人少年のマーカス・カール・フランクリン、女性のケイト・ブランシェットと、本人のイメージとは無関係のキャスティングでディランの人生が浮かび上がってくる。ブランシェットはヴェネチア国際映画祭の女優賞に輝いた。

画像: (上段左から)クリスチャン・ベール、リチャード・ギア、ベン・ウィショー (下段左から)ヒース・レジャー、マーカス・カール・フランクリン、ケイト・ブランシェット Photos by Getty Images

(上段左から)クリスチャン・ベール、リチャード・ギア、ベン・ウィショー
(下段左から)ヒース・レジャー、マーカス・カール・フランクリン、ケイト・ブランシェット

Photos by Getty Images

This article is a sponsored article by
''.