ロサンゼルスの大火災の影響で恒例のノミニーたちが集うランチョンが中止となりましたが、いよいよ3月2日(現地時間)「第97回アカデミー賞授賞式」が執り行われます。最終ノミネートが1月23日まで延期されて発表され、最多候補は『エミリア・ペレス』の13となりましたが、これに続いて『ウィキッド ふたりの魔女』『ブルータリスト』が10、『教皇選挙』『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』が8と今回は例年にない接戦が予想されています。最後の最後まで予断を許さない今回のオスカーですが、授賞式を10倍楽しむための大予想特集をお届けしましょう。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:昨年のアカデミー賞助演男優賞受賞者ロバート・ダウニーJr. Photo by Arturo Holmes/Getty Images

大混戦の結末はどうなる? アカデミー賞主要部門の本命を映画のプロが占う

2024年度の映画賞レースは最終コーナーに来ても、まだ絶対の本命がはっきりしない所が特徴ですが、そんな混戦模様の中、映画のプロたちに最終版となる主要部門の受賞作・受賞者を占ってもらいました。

3人のプロによる本命予想と所感

斉藤博昭

作品賞 :『エミリア・ペレス』
監督賞:ブラディ・コーベット
主演男優賞:ティモシー・シャラメ
主演女優賞:フェルナンダ・トーレス
助演男優賞:キーラン・カルキン
助演女優賞:アリアナ・グランデ

過去2年の『エブエブ』『オッペンハイマー』のような“1強”ではないと判断。作品賞と監督賞はカンヌ&ヴェネチアからの流れという今年の傾向で選びつつ、俳優部門は絶対的に確実なキーラン以外は少し冒険予想してみました(つまり外す可能性高いと前もって言い訳)。狙いは「主要全部門が別作品」と、ある程度の「人種多様性」。なので主演女優賞はシンシア・エリヴォでもいいと思いつつ、作品をバラけさせたくて今年はブラジル代表のこの人に。心情的には作品賞候補で個人的ナンバーワンの『サブスタンス』を応援。デミ・ムーアが今年最も混戦の主演女優賞を制したら感激で泣いちゃいそうです。冷静予想では主演男優エイドリアン、助演女優ゾーイで。

まつかわゆま

作品賞:『エミリア・ペレス』
監督賞:ジャック・オーディアール
主演男優賞:ティモシー・シャラメ
主演女優賞:カルラ・ソフィア・ガスコン
助演男優賞:ジェレミー・ストロング
助演女優賞:ゾーイ・サルダナ

予想というより、獲ってほしいという願望です。今年のテーマはアンチ・トランプ。18年オスカーのF・マクドーマンドの演説以来、多様性や包摂性を映画界にもとがんばってきたのを否定するトランプなんかに負けちゃいかん。立てリベラル・ハリウッド!というアピールには『エミリア・ペレス』ですよ。特に主演女優は、賞とは無縁だったデミにもあげたいところだけれど、ぜひ初のトランスジェンダー女優カルラに! ま、難を言うなら女性監督作少なすぎだしアジア系に冷たいので、せめて3本の日本作品どれか一つは入ってほしいところかな。『ANORA…』と『名もなき者…』『教皇選挙』にも何かしらオスカー像をお持ち帰りいただきたいと思います。

よしひろまさみち

作品賞:『教皇選挙』
監督賞:ショーン・ベイカー
主演男優賞:コールマン・ドミンゴ
主演女優賞:デミ・ムーア
助演男優賞:キーラン・カルキン
助演女優賞:ゾーイ・サルダナ

ずば抜けた本命が不在で、圧倒的混戦。13部門ノミネート『エミリア・ペレス』は国際長編はほぼ当確ながらも主要賞ではネガティブなニュースが影響する可能性あり、10部門ノミネート『ブルータリスト』はいかにも賞狙いで冗長な演出の賛否がどう転がるか、同じく10部門ノミネートの『ウィキッド…』は2部作の前半のため今年公開予定の次回作が席巻予定。となると、原作ものとはいえ保守最大のコミュニティに真っ向から喧嘩を売る『教皇選挙』か、完全オリジナルで監督のキャリアの総決算的な『ANORA~』は頭一つ抜けた存在か。オスカーロビーに長けた配給会社がこれからどれだけ力を出すかにかかっているが、複数受賞の作品は少なくなるだろう。

候補作品をチェック

作品賞(監督賞)候補

画像: 『ANORA アノーラ』 ©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.  ©Universal Pictures

『ANORA アノーラ』
©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.  ©Universal Pictures

『ANORA アノーラ』 2月28日公開
富豪の息子と電撃結婚したダンサーに結婚阻止の妨害が迫る?
©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.  ©Universal Pictures

CHECK 監督賞候補:ショーン・ベイカー

画像: 『ブルータリスト』 © DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVES © Universal Pictures

『ブルータリスト』
© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVES © Universal Pictures

『ブルータリスト』 2月21日公開
米国に移民としてやってきたユダヤ系建築家の30年に渡る物語。
© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVES © Universal Pictures

CHECK 監督賞候補:ブラディ・コーベット

画像: 『教皇選挙』 © 2024 Conclave Distribution, LLC.

『教皇選挙』
© 2024 Conclave Distribution, LLC.

『教皇選挙』 3月20日公開
ローマ教皇死去に伴う新教皇選出の極秘選挙をめぐるミステリー。
© 2024 Conclave Distribution, LLC.

画像: 『エミリア・ペレス』 © 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA COPYRIGHT PHOTO:©Shanna Besson

『エミリア・ペレス』
© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA
COPYRIGHT PHOTO:©Shanna Besson

『エミリア・ペレス』 3月28日公開
過去を葬り新たな人生を歩み始めた女性の運命が思わぬ方向へ…。
© 2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA
COPYRIGHT PHOTO:©Shanna Besson

CHECK 監督賞候補:ジャック・オーディアール

画像: 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』 ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』 2月28日公開
世界的ミュージシャン、ボブ・ディランの初期時代を描くドラマ。
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

CHECK 監督賞候補:ジェームズ・マンゴールド

画像: 『デューン 砂の惑星PART2』 ©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.

『デューン 砂の惑星PART2』
©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.

『デューン 砂の惑星PART2』
一族を殺されたアトレイデス家の王子ポールが敵に復讐を開始。

【初回仕様】4K ULTRA HD&ブルーレイセット8,580円(税込)/発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント/販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.

画像: 『サブスタンス』 © The Match Factory

『サブスタンス』
© The Match Factory

『サブスタンス』 5月16日公開
身体の衰えや人気の低下を恐れた元人気女優が新医療を試すが…。
© The Match Factory

CHECK 監督賞候補:コラリー・ファルジャ

画像: 『ウィキッド ふたりの魔女』 © Universal Studios. All Rights Reserved.

『ウィキッド ふたりの魔女』
© Universal Studios. All Rights Reserved.

『ウィキッド ふたりの魔女』 3月7日公開
見た目も性格も魔法を扱う力も異なる2人に友情が芽生えるが…。
© Universal Studios. All Rights Reserved.

画像: 『アイム・スティル・ヒア』 ©2024 VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma

『アイム・スティル・ヒア』
©2024 VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma

『アイム・スティル・ヒア』 8月公開予定
軍事独裁政権下時代のブラジルである一家の苦難の道を描く。
©2024 VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma

画像: 『ニッケル・ボーイズ』 © 2024 Amazon Content Services LLC. All Rights Reserved.

『ニッケル・ボーイズ』
© 2024 Amazon Content Services LLC. All Rights Reserved.

『ニッケル・ボーイズ』 2月27日よりPrime Videoで独占配信開始
実在した少年更生施設を舞台にそこで出会った少年2人の絆を描く。
© 2024 Amazon Content Services LLC. All Rights Reserved.

昨年の『オッペンハイマー』のような全体をリードする作品が不在のまま、最終コーナーを迎えた第97回アカデミー賞。最多ノミネート作品イコール本命とは必ずしも言えませんが、『エミリア・ペレス』(12部門13候補)が候補者発表の後になって、主演女優のカルラ・ソフィア・ガスコンの過去の人種差別的ツイートが発覚して炎上。本命かと思われたところに水を差す状況になってしまい、その影響はカルラだけでなく、作品、ジャック・オーディアール監督、助演のゾーイ・サルダナにまで及ぶか?と囁かれ、ますます受賞の行方が混沌としてきました。続いて10部門候補の『ブルータリスト』にも作品の一部(ハンガリー語のセリフなど)に生成AIを使用したことに対する批判が持ち上がったこともあり、投票者の反応が気になるところ。これによって『ウィキッド ふたりの魔女』(10部門)、『教皇選挙』(8部門)、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(8部門)といった多数ノミネート作品が優勢になって来るのか、それとも前出の2作品が急浮上した批判に負けず、元来の強さを発揮するのか。はたまたここに来て、全米批評家賞、全米監督組合賞、全米製作者組合賞で軒並み最高賞を受賞した『ANORA アノーラ』(6部門)が逆転する可能性も急に大きくなっています。加えて、BAFTA(英国アカデミー賞)では『教皇選挙』が作品賞などを受賞。この結果がどんな影響を米オスカーにもたらすかも気になるところ。今回は本当に最後まで目が離せない展開になりそうです。

This article is a sponsored article by
''.