ミュージカル映画の主人公といえば、常に“ドラマティック”な人生を歩んでいるもの。そんな勇気に溢れた“生き方”で、私たちの背中を押してくれるミュージカル映画をご紹介します。今回は『ウィキッド ふたりの魔女』のレビュー解説とジャパンプレミアイベントレポートをお届けします。(文・萩尾瞳(レビュー)、編集部(ジャパンプレミアレポート)/写真・久保田司(ジャパンプレミアレポート)/デジタル編集・スクリーン編集部)

『ウィキッド ふたりの魔女』STORY

画像: 『ウィキッド ふたりの魔女』STORY

オズの国のシズ大学の寮で偶然ルームメイトになったエルファバとグリンダ。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。そんなある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、オズに隠され続けていた“ある秘密”を知ってしまう。それは、ふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。

REVIEW 魅力の歌で紡ぐ胸熱ドラマ『ウィキッド ふたりの魔女』

もう見ちゃった!という人、多いかも。だって、『ウィキッド ふたりの魔女』ほど公開が待たれた映画は、そうはないのだもの。そもそも映画化企画が立ち上がったのが20年も前のこと。原作のブロードウェイ・ミュージカル「ウィキッド」が開幕(2003)して1年後だ。その後、何度か浮上しながら映画化は進まず、ここまで待たされたのだった。でも、待った甲斐はあった。色鮮やかでゴージャスな映像、ぴったりのキャストがナマで歌い上げる美しい楽曲と、楽しみどころいっぱいの嬉しい作品になって登場したのだ。

『ウィキッド』の魅力はまず、エルファバ(シンシア・エリヴォ)とグリンダ(アリアナ・グランデ)の友情を軸にした胸熱ストーリーにある。魔法の国オズのシズ大学で出逢った二人は、なにからなにまで正反対。生まれも育ちも恵まれたグリンダと、緑の肌に生まれたため周囲から疎まれてきたエルファバ。およそ水と油の二人だけれど、ふとしたことから急接近していく。エルファバの思慮深さや芯の強さ。グリンダの明るさや率直さ。自分にない美点を認め合い、歩み寄り、成長し、やがて二人は友情で結ばれていく。

最強のシスターフッド物語でありガールズ・ムービー

一緒なら何も怖くない。という言葉は通常のラブ・ストーリーでも素敵に響くけれど、シスターフッド物語での方がより胸に響く気がする。たぶん、完璧にフラットな関係性だからかも。『キューティ・ブロンド』とか『ミーン・ガールズ』とか『ウェイトレス』とか、シスターフッドを描くガールズ・ムービーが人気なのも、だからだろう。そして、『ウィキッド』は最強のシスターフッド物語であり、ガールズ・ムービーなのだ。

でも、この二人は最終的には引き裂かれ、別々の道を歩まざるを得なくなる。それも「善い魔女」と「悪い魔女」という外側からのカテゴライズによって、敵対する立場となってしまうのだ。とても切ない展開だけれど、ここに作品のもうひとつのテーマが浮かび上がる。「正義とはなにか?」という問いかけである。ミュージカルの原作小説(1995年発表)の作家グレゴリー・マグワイアは、湾岸戦争に触発されてこれを書いたという。「正義」を権力のある側が決めることを憂えたのだろうか。舞台やこの映画ではそこまで大上段に構えてはいないけれど、この大きなテーマは確かな問いかけとなって底に流れている。

胸を震わさずにはいられない「Defying Gravity」

グリンダの素敵な衣装たち、シズ大学のエレガントなたたずまい、CGを駆使した驚きのムーブメントなど、見どころがいっぱい。でも、なにより大きな魅力は、数々の魅力的なミュージカル・ナンバーとその見せ方だろう。エルファバとグリンダが反発し合うデュエット「What is This Feeling?」の弾むようなメロディー。グリンダが軽やかに歌い踊るキュートな「Popular」。ちなみに、このシーンで宙に舞っているルビーの靴は名画『オズの魔法使』(1939)のオマージュである。

さらに、二人が訪ねたエメラルド・シティで繰り広げられるビッグ・ナンバー「One Short Day」のゴージャスなことったら。織り込まれた劇中ショーには、ブロードウェイのオリジナル・エルファバ&グリンダを演じたイディナ・メンゼルとクリスティン・チェノウェスも登場し、華を添えている。

そして、なんたって「Defying Gravity」。自分は自分として生きる決心を固めたエルファバの圧倒的なナンバーは、彼女が大空に舞い立っていくクライマックスを壮大に彩る。「重力に逆らって」生きていく、と力強く歌い上げられる曲には胸を震わさずにはいられない。思えば、これこそが『ウィキッド』のテーマを示す曲なのだ。ここで終わる本作はパート1。パート2が待ち遠しい。オズの国のシズ大学の寮で偶然ルームメイトになったエルファバとグリンダ。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。そんなある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、オズに隠され続けていた“ある秘密”を知ってしまう。それは、ふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。

『ウィキッド ふたりの魔女』
2025年3月7日(金)公開
アメリカ/2024/2時間41分/配給:東宝東和
監督:ジョン・M・チュウ
出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラム

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