本作が自身初の「ラブストーリー」となったと語るポン・ジュノ監督
トークセッションでは、町田や安村から映画の質問が。
町田が映画で描かれる価値観について問うと、ポン・ジュノ監督は「(主人公のミッキー17)は労働者として極限の状態、極限の職業に身を置いていますが、辛い状況まで最後まで生き残ろうとする。それが私の考えていた重要な価値でもあります。ミッキーがプリントされるときは安村さんの様に何も着ていません(笑)。とにかく最後まで生き残る、最後まで諦めない気持ちにみなさんも共感してもらえたら嬉しいです」と本作のメッセージについて解説。

また、町田が映画のインスピレーション元について尋ねると、ポン・ジュノ監督はインスピレーションを得るために旅行などの特別な体験はしないといい、「日常的なささやかなことを見逃さないようにしています。例えば、とんこつラーメンと食べている途中、スープがズボンの上に落ちたときに『どういった意味があるんだろう?』『なぜ私の身にこんなことが起きるんだろう』『どうすればいいんだろう?』と考えを巡らせると、いろんなことが思い浮かんでくるのです。小さなことから出発しているんです」と日常の気づきを大事にしていると説明。「アンテナを張り巡らせて日々を過ごしていきたいと思います」と町田も感銘を受けていた。
安村からは「使い捨て芸人にならないためにはどうしたらいいでしょうか?」との相談が。ポン・ジュノ監督は「既にオリジナルの世界を構築されているので、決して使い捨てになることは無いと思います」と太鼓判。チェ・ドゥホプロデューサーは「ハリウッドにぜひ行っていただきたい」とネタを褒めながら、「劇中ではナーシャ(演:ナオミ・アッキー)と言うキャラクターが登場します。“ミッキー18”というキャラクターは彼らとの経験を通して、ミッキー17や自分のことを愛することができるようになるんです」と劇中でもキーとなる「自己愛」が大切だと促した。
主演ロバート・パティンソンについても話が及んだ。ポン・ジュノ監督は「優れた俳優であると同時にクリエイティブな俳優です。とても優しくて、現場の皆から人気がありました。物静かですがとても優しいんです。あと、プリントしたくなる顔ですね(笑)」と演技面と人柄の両方を絶賛。チェ・ドゥホプロデューサーも「本当に最高でした。仕事に対する姿勢が全身全霊なんです。台本にカラーマーカー5種類くらい使っていて、200回くらい脚本を読んだんだろうなと分かるんです。自分のトレーラーもあるのに、ずっと現場にいました。本当に努力家で献身的な方」と撮影中のパティンソンのプロフェッショナルな姿を紹介してくれた。
また、今作で意識したポイントについてポン・ジュノ監督は「社会的・政治的な風刺も描かれていますし、ミッキーの困難な状況は私達が生きている現実を反映しているとも思えるでしょう。そんな残忍にも思える構造の中で、彼が生き残るための力は『愛の力』。この映画は、ある意味ラブストーリー、愛の物語でもあります。私にとっては初めてのラブストーリー。そのような観点からも楽しんでいただけたら嬉しいです」と、社会風刺的な要素も大事にしつつ、「愛」が大事にされていると明かした。