カバー画像:『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』より ©2025Universal Pictures

変に取り繕うこともなく、ありのままの無邪気な自分を貫く
今、私たちに必要なポジティブヒロイン!
英国の作家、ヘレン・フィールディングの小説「ブリジット・ジョーンズの日記」の映画版が公開されたのは2001年のこと。現代女性の本音を描いた内容が支持され、世界中で大ヒットを記録。3年後の2004年にはシリーズ2作目『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうな私の12か月』、さらに12年後に『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』(2016)も誕生。こんなに長く続くロマンティック・コメディのシリーズは珍しい。製作したワーキング・タイトルは『ノッティングヒルの恋人』や『ラブ・アクチュアリー』など、数々のロマコメのヒット作を放っているが、そんな中でもこのシリーズは特に根強い人気を誇る。なぜ、ブリジット・ジョーズはこんな多くの人に愛され続けるのだろう?
まずは主人公の人物像にはじけた魅力がある。ブリジットは英国に住む30代の働く女性という設定。最初は出版社に勤務しているが、途中でテレビのレポーターに転身する。いつもはりきっているが、仕事も恋も失敗だらけ。でも、立ち直りが早いのも彼女の良さで、たとえ、ミスがあっても前に進もうとする。変に取り繕うこともなく、ありのままの無邪気な自分を貫く。そんな主人公を誰もが愛されずにいられなくなる。
30代の等身大の女性を見事に演じたレネー・ゼルウィガー
主人公を演じているのはアメリカの演技派女優、レネー・ゼルウィガーで、ブリティッシュ・イングリッシュを見事にマスターして英国人になりきる。また、彼女は役のために9キロ体重を増やしてふっくら体形をめざした。そして、お酒とタバコが好きで、体重の変化を気にする30代の等身大の女性というキャラクターを見事に作り上げ、1作目ではアカデミー主演女優賞にもノミネートされている。
「高慢と偏見」でダーシーを演じたコリン・ファースがマーク役に
そんな主人公の運命の恋人で、弁護士のマーク・ダーシー役を好演するのがコリン・ファース。原作者のフィールディングはジェーン・オースティンの19世紀の名作文学「高慢と偏見」にインスパイアされて「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズを書き上げた。そして、テレビ版「高慢と偏見」(95年、BBC制作)のファンでもあった。そこでドラマ版でミスター・ダーシーを演じたコリン・ファースがマーク役に選ばれた。ブリジットとマークが時間をかけて愛を育てる展開は「高慢と偏見」を思わせるし、風刺的なユーモアがあるところもオースティン風。古典小説の要素も入ることで、このシリーズに文学的な奥行きも生まれた。また、彼の恋のライバルで、軽薄なプレイボーイのダニエルに扮したヒュー・グラントもハマリ役。英国を代表する人気男優たちの共演がこのシリーズを盛り上げる。選曲の良さもこのシリーズの魅力で、ヴァン・モリソンやチャカ・カーン等、少し古めのポップ・ミュージックを使うことで絶妙なテンポを作り上げている。
1作目と2作目ではイケイケの30代だったブリジットは、3作目では40代となり、予定外の妊娠を経験。仕事もテレビレポーターからプロデューサーへと昇格。シリーズを追うごとに仕事の重さや恋人との付き合い方も変わり、ブリジットも成長する。そんな変化もシリーズ物ならではの楽しさだ。人物像に説得力があり、人間味あふれるブリジット・ワールド。やっぱり、愛さずにはいられない!