奥平大兼と出口夏希がW主演する『か「」く「」し「」ご「」と「』は『君の膵臓をたべたい』の原作者・住野よるのベストセラー小説の実写化である。自分に自信が持てない主人公の片思いを軸に5人の高校生の葛藤を描いている。『少女は卒業しない』の中川駿監督が原作者の思いに応えた脚本を書き、その世界観を映像化した。SCREEN ONLINEでは中川監督にインタビューを敢行。作品への思いや監督独特な演出について語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

出口夏希はミッキーそのもの


──5人のメインキャストのキャスティングの決め手をお聞かせください。まずは引っ込み思案で自分に自信の持てない主人公・大塚京を演じている奥平大兼さんはいかがですか。

プロデューサーチームから名前が挙がったのですが、影を帯びた役を演じられる俳優として、彼の世代でずば抜けているので、前々から「ぜひご一緒したい」と思っていました。

奥平くんが『MOTHER マザー』(2020年)で演じた周平は京と同じように影を帯びていますが、攻撃性を帯びた強い役どころだったので、京のように影がありながらも内に内にと閉じこもってしまう役を演じたらどうなるのか、興味がありました。


──底抜けに明るい性格でヒロインよりもヒーローになりたいと願うミッキーこと三木直子を出口夏希さんが演じています。

キャスティングの頃、爽健美茶のCMをされていたのを見て、気になり、「舞妓さんちのまかないさん」(2023年、Netflix)を見たところお芝居もよかったので、一度、話をさせていただきました。すると、ミッキーそのものだったのです。


──では出口さんは役作りの必要がなかったのですね。

特に細かいオーダーを出した覚えがないですね。

画像1: 出口夏希はミッキーそのもの


──内気な京の親友であり、ミッキーの幼馴染でもあるヅカこと高崎博文を佐野晶哉(Aぇ!group)さんが演じています。

佐野さんでいちばん印象的なのは笑顔ですね。めちゃくちゃ“にかーっ”と笑うんですよ。ただ、自分の感情を表現するだけなら、あそこまで笑顔になる必要はない。その場にいる人みんなを明るくさせたいという彼の配慮というか、優しさがあの表情に現れている気がします。僕の深読みかもしれませんけれどね。それってまさにヅカそのものです。ヅカは周りの人のリアクションを気にして、自分の振舞いを決めるキャラクターですから。お会いしてもその印象のままだったので、ヅカを演じられるのは佐野くんしかいないと思いました。


──この作品でも佐野さんはその笑顔を見せてくれていますね。ミッキーをいちばん近くで見守りながら、どこかいつもマイペースで予測不能なキャラクターのパラこと黒田文は菊池日菜子さんが演じています。

住野先生はキャラクターの身長バランスにこだわられていました。ミッキーはパラより、京はヅカよりも小さい。エルはいちばん小さい。出口さんが160㎝くらいあるので、パラは170㎝くらいの女優さんの中から探したのです。

菊地さんはデビューして間もなくて、出演作は『月の満ち欠け』(2022年)しか見たことがなかったのですが、実際にお会いして話してみると、不思議な世界感を持っているというか、どこかふわふわした感じで掴みどころがないけれど、真面目で芯はしっかりしている。何だかわからない不思議な感覚になって、まさにパラでしたし、菊池さんもパラにシンパシーを感じるということでしたのでお願いしました。


──内気で控えめながらも、優しい強さを持ち、他のキャラクターにも影響を与えていくエルこと宮里望愛は早瀬憩さんです。

エル役の選考が難航していた頃に早瀬さんが出演していた『違国日記』(2024年)を見て、エルだと思ったので、僕から提案しました。お会いしてみたら、とても素敵な方で、元々住野先生のファンとのことでした。この作品の原作も読んでいて、自分が演じるのならエルだろうと思い、自分なりの解釈を持っていたくらい作品に対する思いが強かったので、出演をお願いしました。


──本作を一度見て、エルのことをわかった上で再度、本作を見てみると、エルの葛藤が早い段階から伝わってきました。それは早瀬さんの解釈ならではの演技なのでしょうか。

初見のお客さんにはわかりませんが、エルには見えるものがあります。ただ、それがわかりやすくなり過ぎても面白くないので、2回目を見たときに「もしかして、これは…」と思うくらいのいい塩梅でやろうという話をしました。

画像2: 出口夏希はミッキーそのもの

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