若い世代へのメッセージ性が高く、今の時代だからこそ必要な作品
──作品に関わることになった経緯からお聞かせください。
僕の前作、朝井リョウさんが書かれた青春群像劇の小説を映画化した『少女は卒業しない』(2023年)を宇高武志プロデューサーがご覧になり、あの作品の世界観や脚本の再構成力、演出の世界観を気に入ってくださったということでお話をいただきました。原作はキラキラ映画にすることもできる内容でしたから、僕の世界観にどう落とし込んで作るかという難しさはありましたが、だからこそ、すごくやりがい感じました。
──原作は住野よるさんの同名小説ですね。
高校生のリアルな心情が描かれており、恋愛部分に目がいきそうですが、本質的には自分と他人を比べてしまって、自分だけが劣って見えてしまうという、まさに現代のSNS社会を象徴した物語です。とても繊細な内容で、若い世代へのメッセージ性が高く、今の時代だからこそ必要な作品です。ぜひ、これを映画化したいと思いました。

──監督が脚本を書かれましたが、住野さんから何か要望はありましたか。
映像化への向き合い方という点で、原作者さんにはいろいろな方がいらっしゃいます。住野先生はストーリーだけでなく、キャラクターに対する愛情がとても強い方で、「このキャラクターはこういうことをしない」、「言わない」といった細かいオーダーをいただきました。
ただ、今回はメインキャラクターが5人いるので、僕が理解しやすいキャラクターがいれば、理解しにくいキャラクターもいる。理解にしにくい部分に関しては、僕が1人で悩むのではなく、先生からのオーダーを踏まえつつ、映像化の責任者として「映像として表現するのなら、こういうやり方をすることもできます」と提案しました。さらにキャラクターの表現の部分に関してはキャストと「ここはこういう風にしようと思うのだけれど、違和感ない?」とキャッチボールをしながら作っていき、先生の思いを形にしていくプロセスに時間を掛けました。
──キャスティングは脚本の執筆と並行して進めていかれたということでしょうか。
そうですね。キャスティングはプロデューサーチームにハンドルを握っていただき、脚本が完成する前に同時進行のようにやっていました。先生のオーダー、僕の役に対する印象、プロデューサーチームの戦略的な方針の3つがうまくハマるキャスティングをプロデューサーチームに僕も加わって、検討していきました。