『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が公開中だ。原作は荒木飛呂彦の大人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」から生まれたスピンオフ「岸辺露伴は動かない」の原点。短編である原作に映画オリジナルのエピソードを加え、ヴェネツィアで邦画初となるオールロケを敢行し、実写化された。公開を前に、ドラマシリーズや映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)に引き続き、メガホンを執った渡辺一貴監督に作品への思いを語ってもらった。(取材:SCREEN編集部、文:ほりきみき)

個性光るキャスト陣が彩った、実写版「岸辺露伴」の世界

──テレビドラマから引き続き、高橋一生さんが岸辺露伴を演じています。映画では後半、完全懲悪的な要素もあると思ったのですが、今回の露伴について高橋さんとはどんなお話をされましたか。

具体的に「このシーンはこうしてほしい」ということは伝えていません。今回の露伴は勧善懲悪風に見える部分もありますが、彼は自分の作品や能力をバカにされたことに怒って行動しているので、今までのどおりの露伴なんです。井浦新さん演じる田宮に“悪人だけども一生懸命に生きている”という理由からシンパシーを感じてしまうところなどは、彼らしい変人ぶりですよね。そんな露伴を一生さんが動きやお芝居で更に膨らませてくれました。

画像: 岸辺露伴(演:高橋一生)

岸辺露伴(演:高橋一生)

──先ほどお話にも出てきましたが、露伴と相棒的存在の泉京香(演:飯豊まりえ)の関係性も作品の魅力です。監督から見た二人の関係性は?

露伴先生は“スーパー”な人なので、編集者に具体的な意見や提案を求めていないと思うんです。しかし、京香は意図せず、本質的なことを露伴に言うじゃないですか。それが露伴には大切で、そこから物語が進むこともありますよね。天然と言ってしまうと単純すぎるのですが、本質を見抜く力が京香にはあって、そこを露伴先生は評価しているから、担当編集として認め、一緒にいるのかなと。そういう意味でも大事な相棒なんじゃないかなと思います。

画像: 泉京香(演:飯豊まりえ)

泉京香(演:飯豊まりえ)

──キャラクターでいうと、露伴と相対するゲストキャラクターも強烈です。映像化の際、どんなことを重視されていますか。

一生さんがお芝居をして楽しいと思える人をキャスティングすることでしょうか。刺激をし合って高められると思える人をいつも考えています。例えば、今回でいえば、田宮役の(井浦)新さんとは何回かお仕事をしていて大好きな役者さんであり、「岸辺露伴」の世界に合うと以前から思っていたので、いつか一緒にこのシリーズでご一緒できればと考えていました。

画像: 田宮(演:井浦新)

田宮(演:井浦新)

──井浦新さんと作られた田宮はいかがですか。

もう最高に面白かったです(笑)。素晴らしかった。ヴェネツィアには最初から全員で行ったのですが、新さんはご自分の出番のない日も現場にいらして、田宮に成り変わる大東(駿介)さんのお芝居をご覧になり、「大東さんがこういうお芝居をされているので、自分はこう活かしていく」とか、「ここをちょっと真似してみる」といった感じで役を作られていました。その過程を一緒に歩めたので楽しかったですね。

――ソトバ役の戸次重幸さん、水尾役の大東駿介さん、マリア役の玉城ティナさんも今回重要な役どころです。

画像: ソトバ(演:戸次重幸)

ソトバ(演:戸次重幸)

戸次さんは、「戸次さんだって分からないかもしれないですが、そのくらい汚れてください」とお願いしました(笑)。ご本人も楽しんでやってくださって。ソトバは浮浪者ですが、浮浪者になる前の人生もあり、そのときはスマートな印象の人だったかもしれない。いろいろなことを経て、あのような姿になっているという感じを出したかったので、いわゆる“この人は浮浪者を演じるよね”という方ではない方に演じてほしいと思っていました。戸次さんはそこを理解してくださって、楽しみながら演じていただきました。

画像: 水尾(演:大東駿介)

水尾(演:大東駿介)

大東さんは、これまでに何度もご一緒していて、いつか「岸辺露伴」に出てほしいと思っていたんです。今回“ポップコーン対決”の場面は水尾にかかっているので、本当に全身全霊でポップコーンを食べてもらいました(笑)。このシーンは最大のみどころの一つですし、大東さんとしてもやり切っていただいて、そのシーンの撮影後、抜け殻のようになっていました。

画像: マリア(演:玉城ティナ)

マリア(演:玉城ティナ)

玉城さんは、佇まいだけでも雰囲気があり、オーラのある方だと以前から思っていました。今回のマリアという役はミステリアスな空気を纏っていて、「裏に何かあるんじゃないか?」ということを説明せずに見せていかなくてはならない役どころだったので、玉城さんはぴったりでした。マリアは屈折した育てられ方をしているので、もしかすると田宮や水尾、ソトバよりも複雑な境遇かもしれません。その辺りの背景がにじみ出るような、そしてそれでも運命にあらがって生きる生命力を感じる、繊細なバランスの上に立った表現をしていただきました。

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