座長として小栗さんの右に出る人はいない
──DMATを統括する結城英晴を小栗旬さんが演じています。
いろんな人の人生を背負える人はそんなにいません。だからこそ、それが現代のヒーロー像ではないかと思っています。この作品の中で誰がヒーローで、誰がヒーローではないかということがしたかったわけではなく、この作品が描くような危機的な状況下では、みんなの思いを汲んで「みんなの人生も背負うから、こっちにしようよ」ということを指し示してくれるリーダーがいると僕らは生きやすくなるということを描きたかったのです。そういうことができる人を考えると小栗さんしか考えられないというのが僕と増本さんの一致した考えでした。

──小栗さんならパンデミックが起こった豪華客船に躊躇わず、果敢に乗り込んでいく役だろうと思ったので、現場には行かず、本部で指揮を執る立場だと知り、初めは少し意外な気がしました。
その時点で興味を引きますよね。
この物語を映画化するとなったら、現場で指揮を執る仙道を主軸にすることが多いと思いますが、あえて結城を主軸にしたところが面白さでもあると思っています。結城は作品の中で電話ばかりしていて、いろんな人の意見を聞いて困っている。しかし、コロナのような非常事態が起こったときは、そんな人がみんなの人生を背負うという覚悟を決めて大きな判断を下す。そういうことを意識することこそが大事だし、だからこそ、小栗さんに結城を演じてほしいと思いました。

──この作品での小栗さんの座長ぶりはいかがでしたか。
座長ぶりという点では小栗さんの右に出る人はいないのではないでしょうか。基本的な姿勢として、撮影がなくてもずっと現場にいて、スタッフとコミュニケーションを取り、みんなで一緒に作っていくというプロセスを大事にされているのを常に感じます。しかも、俳優仲間だけでなく、僕らスタッフにもいつも気配りをしてくれる方です。
──小栗さんはこの作品をきっかけに、俳優として演じる役どころのステージが1つ上がった気がしました。
これはあくまで僕の想像の範囲になりますが、小栗さんは元々自分のことはある程度、犠牲にしても、いろいろな人の立場を考えて、その人たちが輝くように引っ張り上げていこうという気持ちがあるひと。今、トライストーン・エンタテイメントという事務所の社長を担っていらっしゃいますが、普通なら、人の面倒を見て、責任を負わされるというのは逃げたいものだと思いますが、それを背負っていくという選択をされている。日本に彼のような頼もしい存在がいるというのはありがたいことだと思います。
