2020年、横浜港に入港した豪華客船で日本初となる新型コロナウイルスの集団感染が発生。10人の感染者が確認される。災害医療専門の医療ボランティア的組織「DMAT」が駆けつけ、治療法不明の未知のウイルスに向き合い、乗客全員を下船させるまで闘い続けた。『フロントライン』はコロナ禍に起きたパンデミックを綿密に取材して書き上げられたオリジナル脚本の映画化である。メガホンをとった関根光才監督に作品に対する思いやキャストについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

演技的包容力のある松坂桃李


──結城と対策本部でぶつかり合うこととなる厚生労働省から派遣された役人・立松信貴を演じたのは松坂桃李さんです。

松坂さんは心から芝居巧者だと感じます。官僚はこれまでに松坂さんが何度も演じたことがある職業ですが、立松は官僚としては意外性があり、しかも信念が揺らぐ場面もあります。しかし、松坂さんにはそれを表現できる演技的包容力がある。彼の細やかな芝居の妙に僕も増本さんも何度も撃ち抜かれましたが、それこそがこの作品には必要でした。

画像1: 演技的包容力のある松坂桃李


──特に印象に残る松坂さんのシーンはどちらでしょうか。

最後の方で結城と会話するシーンで、人間には不可能なのではと思えるようなすごく繊細な身体の動きで、自分の葛藤や思いの丈を訴える瞬間を表現していました。恐ろしいものがあります。

画像2: 演技的包容力のある松坂桃李


──結城とは東日本大震災でも共に活動し、“戦友”とも呼べる過去を持つ仙道行義を窪塚洋介さんが演じています。小栗さんからの推薦だったそうですね。

仙道のモデルとなったDMATの先生もDMATチームから崇拝されていて、カリスマ性のある方です。窪塚さんは艶やかさ、ワイルドさがあり、男が惚れる男。仙道のような技官的な役どころは珍しいかもしれません。しかし、実際の窪塚さんはとても誠実な方。そんな窪塚さんらしさ、カリスマ性が見える役を演じてもらうのは、僕らにとっては喜びでした。

画像3: 演技的包容力のある松坂桃李


──これからご覧になる方に向けてひとことお願いします。

残念ながら、私たちが今後もパンデミックや何か大きな事件に対面することもあるでしょう。しかし、そのときに「自分はどうしたらいいのか」を考える指標は話し合わないと生まれてきません。

誰もが経験したコロナウイルスとは何だったのか。それを考えるための社会的な背景がこの作品には描かれていますが、ぜひ身構えずに気楽な気持ちで劇場に足を運んでください。意外な程、いろんなことを知ることができると思いますし、それを考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです。

画像4: 演技的包容力のある松坂桃李

<PROFILE> 
監督:関根光才 
広告映像・MV・アートビデオの監督としてキャリアを始め、2014年には仏・カンヌライオンズのグランプリを受賞。福島原発事故以降は様々な社会活動に従事、難民問題、反戦など様々な社会問題の映像作品に取り組む。2018年より長編映画に携わり、躁鬱の女性の葛藤を描く初作品「生きてるだけで、愛。」では新藤兼人賞・銀賞を受賞。擬似家族を描いた「かくしごと」(2024)や、長編ドキュメンタリーでも芸術家・岡本太郎から日本社会を紐解く「太陽の塔」(2018)、服飾産業と廃棄服の関係性を変えようと活動するファッションデザイナー中里唯馬を追った「燃えるドレスを紡いで」(2024)を発表。同作は米トライベッカ映画祭にてHuman/Nature賞を受賞している。

『フロントライン』6月13日(金)全国ロードショー

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<STORY> 
2020年2月、乗客乗員3711名を乗せた豪華客船が横浜港に入港した。香港で下船した乗客1人に新型コロナウイルスの感染が確認されていたこの船内では、すでに感染が拡大し100人を超える乗客が症状を訴えていた。出動要請を受けたのは災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」。地震や洪水などの災害対応のスペシャリストではあるが、未知のウイルスに対応できる経験や訓練はされていない医療チームだった。対策本部で指揮を執るのはDMATを統括する結城英晴(小栗旬)と厚労省の立松信貴(松坂桃李)。船内で対応に当たることになったのは結城とは旧知の医師・仙道行義(窪塚洋介)と、愛する家族を残し、船に乗り込むことを決めたDMAT隊員・真田春人(池松壮亮)たち。彼らはこれまでメディアでは一切報じられることのなかった<最前線>にいた人々であり、治療法不明の未知のウイルス相手に自らの命を危険に晒しながらも乗客全員を下船させるまで誰1人諦めずに戦い続けた。全世界が経験したパンデミックの<最前線>にあった事実に基づく物語―。

<STAFF&CAST> 
企画・脚本・プロデュース:増本淳  
監督:関根光才  
出演: 小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介 
配給:ワーナー・ブラザース映画 
© 2025「フロントライン」製作委員会

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