名優のキャリアを中心にその道のりを振り返る連載の第43回。今回は先日のアカデミー賞で主演男優賞候補になった『教皇選挙』で再注目され、続く最新作『28年後…』では謎に包まれた医師を演じる英国のベテラン俳優レイフ・ファインズです。
(文・井上健一/デジタル編集・スクリーン編集部)
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『28年後…』あらすじ

レイフ・ファインズの最新作はダニー・ボイル監督のサバイバル・スリラー

人間の脳を破壊し、凶暴化させるウイルスが蔓延したロンドンで、感染を免れた者たちが感染者と死闘を展開するサバイバル・スリラー『28日後…』、そしてパンデミック後の世界を描いた『28週後…』に続くシリーズ最新作。第1作のダニー・ボイル監督と脚本のアレックス・ガーランドのコンビが再度コンビを組む。

恐怖のウイルス感染拡大から10228日後、感染を逃れた少数の者たちは感染者で溢れかえった英国本土を離れ、孤島で共同生活を送っていた。しかしある任務を実行するため、ジェイミーとスパイクの親子が危険を冒して本土に渡ることに。そこで彼らが見たものは…。

本作でファインズが演じるのは、感染者でないのに本土に残り続け、黙々と何かを作り続けている元医師のケルソン博士。孤島に移住した非感染者の大人たちは彼を危険な変人扱いするが、スパイク少年は彼の医師としての能力を知り、ある目的のため接触を試みる。ファインズは、変人なのか善人なのかひと筋縄ではいかないケルソンを好演する。

レイフ・ファインズ コメント

「私が演じるケルソンはサバイバーです。彼は死者、あるいは感染してしまった人たちを追悼するために神殿を作ったんです」と語るファインズはクランクインのだいぶ前からダニー・ボイル監督と綿密に話し合ったという。「プロダクションデザイナーによる骨の神殿という構想に特に感銘を受けました。ケルソンの特徴の一つは彼がウイルスの予防薬であるオレンジ色のヨードを全身に塗っていることですが、それに加えて頭髪を剃ることで、さらに強烈な姿になると思いました。メイクアップのスーパーバイザーはシャンプーや化粧品が使えない人々がどんな姿になるか考えました。私たちはヨードを鎧のように全員に塗りたくった人物に観客の目を惹きつけ、驚かせたいと考えたんです」

 

『28年後…』
2025年6月20日(金)公開
イギリス/2025年/1時間55分/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給
監督:ダニー・ボイル
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、レイフ・ファインズ、ジョディ・カマー、アルフィー・ウィリアムズ

オスカー候補に挙がったレイフ・ファインズの名演3

『シンドラーのリスト』(93)

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ナチスの強制収容所から多数のユダヤ人を救ったドイツ人実業家オスカー・シンドラーの実話を映画化。強制収容所の所長を演じたファインズは、問答無用でユダヤ人を射殺する冷酷さと同時に、メイドに雇ったユダヤ人女性に優しく声を掛ける一面を見せるなど、従来のナチス将校のイメージとは一味違う人間味豊かな人物として表現。

『イングリッシュ・ペイシェント』(96)

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英国紳士らしい気品と美貌を備えた30代前半のファインズが主演した一大メロドラマ。第二次世界大戦下の北アフリカを舞台に、病院に担ぎ込まれた主人公が、過去を回想する形で進行。ファインズは特殊メイクを駆使して全身大やけどを負って病院のベッドで過去を振り返る主人公と、人妻と熱烈な不倫関係に落ちる過去の姿を演じ分けた。

『教皇選挙』(24)

全国公開中 © 2024 Conclave Distribution, LLC.

 スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニなど、年上の名優たちがカトリックの枢機卿やシスターを演じる中で、その中心となって物語を引き締める。新教皇の座を狙う枢機卿たちの思惑に翻弄されながらも、自らの信仰に誠実にコンクラーベを進めようとするローレンスの心の揺らぎを繊細に表現した。

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