作品選びにお悩みのあなた! そんなときは、映画のプロにお任せあれ。毎月公開されるたくさんの新作映画の中から3人の批評家がそれぞれオススメの作品の見どころポイントを解説します。(デジタル編集・スクリーン編集部)

〜今月の3人〜

北島明弘
映画評論家。週4冊ペースで積読書を読破中。田宮二郎特集の神保町シアターに4日通い、古本屋廻りで20冊増えた。

米崎明宏
映画ライター、編集者。日本公開のワーナー洋画作品を26年から東宝系列会社が配給するというニュースに驚愕。

渡辺麻紀
映画ライター。ロバート・レッドフォードが亡くなった。大好きなのは『ホット・ロック』『華麗なるヒコーキ野郎』。

北島明弘 オススメ作品
『ワン・バトル・アフター・アナザー』

画像: 北島明弘 オススメ作品 『ワン・バトル・アフター・アナザー』

元革命家が娘救出のために奔走する物語に
現代米社会のひずみもあぶり出されてくる

評価点:演出5/演技5/脚本4/撮影5/音楽4

あらすじ・概要
革命集団メンバーだったボブの隠れ家を警察・軍隊が襲撃し、娘も行方不明に。空手のセンセイの協力を得て、娘を拉致した変態軍人ロックジョーと闘うことに。逃走と追跡、やるかやられるかの大激突!。

トマス・ピンチョンの「ヴァインランド」(新潮社)を下敷きに、追う者と追われる者の攻防戦が展開されるなか、現代アメリカ社会のひずみもあぶり出されてくる。

フレンチ75を名乗る革命グループが解散して17年。メンバーの一人ボブは娘ウィラと田舎町で暮らしていた。酒浸りの腑抜け男になっていたが、警戒心は怠らず、ウィラにはスマホも持たせない。かつてフレンチ75が襲撃した施設の責任者だったロックジョーが、ワケあってウィラ捜索を始め、再び公権力と革命派が衝突することになる。ボブはかつての仲間やウィラの空手のセンセイとともに、ウィラ救出に出撃する。さらに武装修道尼、白人至上主義者、非情の殺し屋が絡んで、予想不可能な結末へ。

コメディ要素に加え、ブラック・エクスプロイテーション映画、マカロニ・ウエスタンのテイストもある。めくるめくカーチェイスに象徴される緊迫感・スピード感にみちた映像、レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、三人三様の個性が光る演技に圧倒された。

公開中、ワーナー・ブラザース映画配給
©2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

米崎明宏 オススメ作品
『ハウス・オブ・ダイナマイト』

正体不明の核ミサイルがアメリカの大都市を襲う!
米大統領の選択はいかに?

画像1: 米崎明宏 オススメ作品 『ハウス・オブ・ダイナマイト』

評価点:演出5/演技5/脚本4/映像4/音楽4

あらすじ・概要
アメリカに向けて一発の核ミサイルが発射されるが、システム障害のため発射元がどこなのかわからなかった。唯一の解決策に思えた迎撃作戦をミスし、米政府は恐るべき事態に対してどう対処すべきかを突き詰められる。

『ハート・ロッカー』でアカデミー賞監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督のポリティカル・サスペンス。ある日突然、所有国不明の核搭載ミサイルがアメリカに向けて発射された。最初の内は迎撃ミサイルで撃ち落とすことが最善策と思われたが、作戦は失敗。このままではある大都市で核が爆発することが避けられない。どの国のものかわからない核攻撃に報復措置を行うべきなのか、抑制すべきなのか? 

画像2: 米崎明宏 オススメ作品 『ハウス・オブ・ダイナマイト』

この設定を聞くとかつてならシドニー・ルメット監督の『未知への飛行』(64)がすぐに思い浮かんだだろうが、あれは冷戦時代の話。もはや核所有国はロシアだけではなく、その後の予想されるシナリオは「誰も勝てない最終戦争」になることは明白。この非常事態を三つのポジションから多角的に描くビグローの演出が冴える。米大統領を演じるイドリス・エルバはじめ、出演者いずれもが緊迫感あふれる熱演。しかし重要なのは、いつでも起こりうるこの事態に人類がどう対処すべきか、もう選択肢はなくなりつつあるという事実だろう。

Netflix映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』一部劇場で公開中。
10月24日(金)よりNetflixで独占配信

渡辺麻紀 オススメ作品
『死霊館 最後の儀式』

常に「家族のあり方」を描いてきた大ヒット・ホラーシリーズの最終章

画像1: 渡辺麻紀 オススメ作品 『死霊館 最後の儀式』

評価点:演出4/演技4/脚本3/撮影3/音楽3

あらすじ・概要
1986年。ひとり娘の結婚を控えたウォーレン夫妻は引退を考えるが、そこに最恐の依頼が来る。“呪いの鏡”に翻弄される家族からだった。その鏡は彼らの知るものだった。

実在した心霊研究家夫妻、ロレイン&エド・ウォーレンが手掛けた心霊的事件をテーマにしてきた「死霊館」シリーズ。

このシリーズがほかのホラー映画とは違うのは「これは実話である」と言い切っているところ。ホラー描写は抑え気味で幽霊や悪魔が次々と出てくるわけでもない。実話をベースにしているがゆえのリアリティを重要視した結果の怖さなのである。

画像2: 渡辺麻紀 オススメ作品 『死霊館 最後の儀式』

そのシリーズの最終話は最恐の心霊事件を扱っている。しかもそれには夫婦の実の娘も深く関わっていて、まさに家族総出で闘わなければいけない事件であり、それと同時に家族の絆が確かめられることになる。そこで気づかされるのが、このシリーズは常に家族が描かれていたこと。ウォーレン夫妻だけではなく彼らにSOSを出した人たちのほとんどはやはり家族だった。つまり、ホラーでありつつ家族の在り方に注力したシリーズだったということ。大ヒットの理由もその辺にあるのではないだろうか。

本作は最後を飾るにふさわしいサービスがあり、気持ちいい最終章になっている。

公開中、ワーナー・ブラザース映画配給
© 2025 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

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