何より誇りに思っているのは、登場人物たちに命を吹き込んでくれた、素晴らしい俳優たちの存在だーーマイケル・キートン

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──最初に脚本を読んだときの印象と、この作品を引き受けた理由を教えてください。
「読んでみて、『素晴らしい脚本だ。いつ撮ろう?』と思ったことを覚えている。脚本を読んでも、そのとき別の撮影をしていたり、プライベートで何かあったりして、一旦保留にすることは珍しくない。でも、この物語は頭から離れなかった。
この映画はひとつのカテゴリーに収まらない。ノワールであり、同時に家族の物語でもある。そして気付いたんだ。その“どこにも属さない感じ”こそが、この作品の魅力だと」
──ヒットマンという役柄を演じる上で、大事にしたことを教えてください。
「今回、ヒットマンの映画を撮ることになったけど、“殺し屋映画”をやりたいと思っていたわけじゃないんだ。というのも、すでに他の人たちが撮っているし、それ以上のものは撮れないと思っていたからね。でもこの脚本は違った。
ヒットマンという仕事はノックスにとってただの生業にすぎず、映画の中心は人間関係になっている。疎遠になった息子や 前妻、そして良き友人でありメンターでもあるアル・パチーノとのね。
劇中でノックスは16年ぶりに息子と再会するが、病が急速に進行していると聞かされたばかりで、残された時間はわずかしかない。それでも行動するのは、和解のためだけでなく、息子を守るためなんだ。そこにドラマがあると思うよ」
──アル・パチーノとの初共演や、他キャストとの関わりについてはいかがでしたか?
「自分の“役者談義”はあまり面白くないと思っている。演技論を語ることが好きじゃないんだ。そういうことを話している自分の声を聞くのが好きではない。でも、他の俳優には興味がある。アルとは電話で話し始めたのが最初だった。登場人物についてあれこれと話したが、驚くほど気楽で気取らない会話だった。映画作りについての堅苦しい話はなく、自然だったんだ。
他のキャストも本当に素晴らしかった。マーシャ・ゲイ・ハーデンは、演じる上で行き詰まったときに、『ああ、あの人に頼めばなんとかしてくれる』と思える存在だ。『このシーンは無理だな』って思っても、彼女が演じると結局上手くいってしまうんだよ。
ジェームズ・マースデンに関しては、今回きっと度肝を抜かれると思うよ。素晴らしい演技だったし、彼は本当にいい奴なんだ。私との仕事のせいで彼が悪い影響を受けていないといいけど。
スージー・ナカムラは、出演作を何本か見たことがあって、いつも笑わされていた。この役にはコメディの経験がある人がほしいと思っていたのでピッタリだったね。面白い人というのは、ある種の知性を持っていて、こちらが予想しないことをしてくれる。皮肉屋で、自然体なのに笑える。男を怖がらず、自分を貫く女性。そんなイメージの役だったね」

画像は『殺し屋のプロット』より
──監督として現場に立ったとき、どんな挑戦がありましたか?
「私はバカ正直なんだ。だから、撮影がタイトでリソースが限られていることを最初から映画に関わる全員に伝えたよ。誰にもリハーサルの時間が無く、急遽撮影に入らざるを得なかった。予算も限られていて、撮影も25日間しかなかった。慌ただしく準備を進め、誰が空いているか確認し、すべてが上手くいくよう祈るしかなかった。今回の制作過程は、本当に複雑でね。だから私は今回の映画を『ジェンガ・ムービー』と呼んでいたんだ。一部でも欠けたら、ストーリーは崩壊してしまうからね。
それでも、監督と主演と製作を兼ねることで、効率的に動ける部分もあったよ。自分のキャラクターを理解しているから、より早く動けるし、自分自身と議論する必要はないからね。ただ反省点は、自分自身に十分時間をかけられていなかったこと。他の俳優のときは、ちゃんと芝居を見て細かく目を配るのに、カメラが私の方を向いているときは、ちらっとモニターを見て『大丈夫』と言うだけだった。そこは気をつけなくちゃいけなかったね」
──監督・俳優・製作として参加した本作全体を振り返って、どのように感じていますか?
「撮影については、ロケ地がLAということが嬉しかったね。バレーの外れに『ここ誰が住んでるんだ?』って感じの場所があるだろう。昼間の2時にそういう寂れたモールを見てると不思議な気分になるんだ。あれがいいんだよ。
やっぱり物語を語るという行為には、ほかに代えがたい魅力がある。映像でしか伝えられないことや、言葉にせずとも伝わるものがある。そこが一番好きな部分だね。でも、何より誇りに思っているのは、登場人物たちに命を吹き込んでくれた、素晴らしい俳優たちの存在だ。彼らと一緒に仕事ができたことを、心から光栄に思っている」
マイケル・キートン プロフィール
1951年9月5日、米・ペンシルベニア州生まれ。地元ラジオ局勤務や劇団を経てスタンダップ・コメディアンとして活動。のちにニューヨークからロサンゼルスへ移り、コメディ番組などで注目を集める。1982年に『ラブ IN ニューヨーク』で映画デビュー。『ビートルジュース』(88)で人気を確立し、『バットマン』(89)、『バットマン リターンズ』(92)で主演。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)ではゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞。
『殺し屋のプロット』
12月5日(金)公開
監督・製作:マイケル・キートン
出演: マイケル・キートン、ジェームズ・マースデン、ヨアンナ・クーリク、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アル・パチーノ
配給: キノフィルムズ
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