『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』のように、ハリウッドではレジェンド級のミュージシャン、アーティストを題材にした伝記映画やその人生に基づく作品が作られ続けてきました。もともとのファンを楽しませるだけでなく、名前だけは知っているというような観客も魅了する波乱万丈の生き様や知られざるエピソード、ヒット曲の数々が映画にジャストフィットするからでしょうか。そこで音楽ファンならずともぜひ見ておきたいミュージシャン映画をセレクトしてお届けしましょう。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『エルヴィス』より ©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

11.『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(24)

ノーベル文学賞を受賞した類まれなシンガーソングライター

画像: 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ディズニープラスのスターで見放題独占配信中 ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ディズニープラスのスターで見放題独占配信中
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60年代初めにフォーク・ミュージック・シーンから登場し、稀に見るソングライティング能力の高さで評価され、やがてジャンルに縛られない方針でロックやポップ・シーンでも曲の可能性を広げていった革新的アーティスト。ティモシー・シャラメがディランを演じた初期の活動を描く本作でも“ライク・ア・ローリング・ストーン”“風に吹かれて”といった代表作が奏でられる。16年にノーベル文学賞を受賞したことでも話題を呼んだ。

12.『ボヘミアン・ラプソディ』(18)

“クイーン”のフレディ・マーキュリーが送る波乱の人生

画像: 『ボヘミアン・ラプソディ』ディズニープラスのスターで見放題配信中 © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『ボヘミアン・ラプソディ』ディズニープラスのスターで見放題配信中
© 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ボーカルのフレディ・マーキュリーらが70年代に結成したバンド“クイーン”の85年のライブエイド出演までを描き大ヒット。フレディを演じたラミ・マレックがオスカー主演男優賞を受賞。タイトルの“ボヘミアン・ラプソディ”など名曲が次々流れる中、メンバーとの確執、フレディのセクシャリティやHIV発病のエピソードなどが描写される。だが何と言っても精巧なライブシーンの再現に多くのファンが興奮、大きな支持を得た。

13.『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(09)

天才ジョン・レノンのデビュー前の若き日を描く

© 2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved.

歴史的バンド“ザ・ビートルズ”のジョン・レノンのデビュー前を扱ったドラマで、レノン少年がいかにして音楽に目覚めたかをアーロン・テイラー=ジョンソンが演じる。レノンは厳格な伯母の元で育ったが、実の母が近所に住んでおり、わけあって彼を手離した母にロックを教えられ音楽活動にのめり込む。ちなみにビートルズ誕生前を描いた作品では5番目のメンバー、スチュワート・サトクリフを中心にした『バック・ビート』(94)もある。

14.『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(15)

“ザ・ビーチ・ボーイズ”ブライアン・ウィルソンの光と影

“サーフィンUSA”などのヒット曲で60年代に人気絶頂だったバンド“ザ・ビーチ・ボーイズ”で、リーダーだったブライアン・ウィルソンは天才的な音楽の才能を発揮していたが、次第に精神的に追い詰められ、薬と酒に溺れていく。20年も続いた低迷期を経て、ある女性との出会いがブライアンに希望の光を灯す。60年代のブライアンをポール・ダノが、80年代のブライアンをジョン・キューザックが演じた。ブライアンは今年6月に死去。

『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』

Blu-ray:¥2,750円(税込)
発売・販売元:KADOKAWA
© 2015 Malibu Road, LLC. All rights reserved.

15.『ザ・ランナウェイズ』(10)

少女だけの異色ロックバンドが人気爆発するが

©2010 Runaways Productions, LLC. All Rights Reserves.

70年代ロサンゼルスで10代の少女たちだけで結成されたロックバンド“ザ・ランナウェイズ”。“チェリー・ボム”などの大ヒットで知られるが、時代に先駆けたクールなバンドとして全米よりも日本で大人気だったという話も。メンバー中でも人気の高かったジョーン・ジェットとシェリー・カーリーを、クリステン・スチュワートとダコタ・ファニングが熱演。バンドの人気上昇と裏腹にメンバー内で続出するトラブルが描かれる。

16.『歌え!ロレッタ愛のために』(80)

炭鉱夫の娘からカントリーソングの女王となった伝説の人

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国民的なカントリーソングの女王として愛されたロレッタ・リンの自伝の映画化で、彼女を演じたシシー・スペイセクがオスカー主演女優賞受賞。映画の原題でもある「Coal Miner’s Daughter(炭鉱夫の娘)」として生まれ、貧しい生活から13歳で結婚、子育てに多忙なロレッタに不器用な夫が贈ったのはなぜか中古のギター。独学で演奏を学んだ彼女は楽曲づくりの才能を発揮して、夫がラジオ局に売り込むと評判が評判を呼んでいく。

17.『ロケットマン』(19)

最も売れたアーティストのひとり、エルトン・ジョンの半生

世界中で3億枚ものシングルやアルバムの売り上げを記録し、「史上最も売れたアーティスト」のひとりとされる、エルトン・ジョン。今なお活躍する彼の半生を描いたミュージカル的作品でエルトンを演じたのはタロン・エガートン。ここではデビュー以前の暮らしから、“ユア・ソング”などのヒットできらびやかな成功を収め、続いて放蕩生活、飲酒や性行為に浸る日々、そして親友バーニーとの再会などを彼のヒット曲と共に綴っていく。

『ロケットマン』

Blu-ray: 2,075円 (税込)/DVD: 1,572円 (税込)
発売・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2019 Paramount Pictures. All Rights Reserved

18.『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(22)

比類ない歌声でスターダムを登っていくが夭逝した歌姫

世界的に大ヒットした映画『ボディガード』(92)のヒロインとしても人気を呼んだ歌姫ホイットニー・ヒューストン。教会でゴスペルを歌っていた少女時代から48歳の若さで急死するまで、彼女がスターダムを上っていく夢のような成功と、その裏で夫ボビー・ブラウンからの暴力や父ジョンの放蕩ぶりに苦悩する日々をナオミ・アッキーが演じる。スーパーボウルでの国歌斉唱シーンや数々のグレートヒット・パフォーマンスも鳥肌もの。

『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
デジタル配信中
ブルーレイ&DVDセット発売中 5,280円(税込)
権利元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
© 2022 NYBO Productions LLC. All Rights Reserved.

19.『ドアーズ』(91)

早逝した“ドアーズ”ジム・モリソンの生き様とは

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60年代後半から70年代前半まで、ジム・モリソン、レイ・マンザレクらが結成し、“ハートに火をつけて”“ジ・エンド”などの楽曲で人気を呼んだサイケデリックなロックバンド“ドアーズ”。歌詞も担当したモリソンはバンドが売れると同時に、カリスマ的な存在となって破天荒な行動が目立つように。そして71年、旅先のパリでモリソンが急死。27歳の若さだった。夭逝したモリソンを演じたのは『トップガン』のヴァル・キルマー。

20.『ウディ・ガスリー わが心のふるさと』(76)

貧しい民衆に寄り添ったアメリカの吟遊詩人

アメリカの吟遊詩人として大不況時代の民衆の心を代弁する歌を作ったフォーク歌手ウディ・ガスリー。ボブ・ディランも彼を敬愛し『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』では入院中のガスリーをディランが見舞いに行くシーンも描かれていた。ガスリーの自伝による本作は、30年代テキサスからカリフォルニアへ放浪の旅の末にやってきた彼が、歌で人々を勇気づけていく姿を捉える。ガスリーを演じたのはデヴィッド・キャラダイン。

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まだまだ見られるミュージシャン映画の待機作

 いま映画界の人気ジャンルになりつつある「レジェンド級ミュージシャンの伝記映画」。この後も公開を控える作品、製作中の作品が待っている。その中でも2026年公開予定の『マイケル』はあの“キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソンの人生に迫る話題作だ。今回はマイケルの聡明で複雑な素顔に迫りつつ、数々のパフォーマンスも描かれるという。マイケルを演じるのは実兄ジャーメインの息子でマイケルの甥にあたるジャファー・ジャクソン。そのそっくりぶりも早くも注目されている。監督はアントワン・フークワ。

 もう一つ大きな話題を呼んでいるのがサム・メンデス監督が“ザ・ビートルズ”4人のメンバーをそれぞれの立場から描く4部作構成の『THE BEATLES- FOUR FILMS(仮題)』だ。ジョン・レノンをハリス・ディキンソン、ポール・マッカートニーをポール・メスカル、リンゴ・スターをバリー・コーガン、ジョージ・ハリソンをジョセフ・クインが演じる。全米公開は28年4月の予定だが、今から楽しみだ。

2026年公開予定の『マイケル』Kevin Mazur for Lionsgate

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