終末の200年後、地下施設で暮らす人々、地表でそれぞれの目的で動く無法者たちを描く人気ドラマ「フォールアウト」シーズン2が12月17日(水)に配信スタート。同名の人気ゲームに惚れ込んでドラマ化を企画した製作総指揮のジョナサン・ノーランが来日、その魅力を熱弁してくれた。

「フォールアウト」は、どのジャンルにも収まらない

『プレステージ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』『インターステラー』の脚本を、兄のクリストファー・ノーラン監督と一緒に手がけたジョナサン・ノーラン。近年の彼は、 SFドラマ「ウエストワールド」のクリエイター、SFドラマ「ペリフェラル 接続された未来」の製作総指揮と、このジャンルでの活躍が目覚ましい。

「僕はジャンル作品(SFやホラーのように、ジャンル分けが明快なエンターテインメント作品)が大好きなんだ。でもその一方で、これは伝統的なジャンルには当てはならないんじゃないかと思うような作品に出会うと、ワクワクする。『フォールアウト』の原作ゲームをプレイした時に感じたのが、まさにそうだった。

このゲームはいったい何なのか。ダークでミステリアスで、コミカルでもあり、奇抜で、バカバカしいところもある。こんなゲームは体験したことがなかった。これまでとは別のことをやっているという意味で、パンクロックっぽいと感じたよ。そして、こういう世界はきっとドラマの視聴者も体験したことがないんじゃないかと思って、ドラマにしたいと考えたんだ」

そのノーランの予想は大当たりで、ドラマは世界中で大ヒット。シーズン2では、シーズン1で出来なかったことにも挑戦する。

「シーズン2は、シーズン1の方向性を、そのままもっと先まで推し進めていく。シーズン1では、こういう作品が受け入れられるのか手探りだったけど、ファンが受け入れてくれたからね。ただし、慎重に調整しながら、少しだけレベルアップさせていく。トーンは変わらないけど、政治的なユーモアは増えるよ。そして、より深く、この世界の奥深くまで足を踏み入れていくんだ」

そして、シーズン2でもっとも自慢なのは、原作ゲーム世界での最強生物、デスクローを登場させたことだ。

「間違いなく"やったー!"と思ったのは、デスクローだ。間違いなく。原作ゲームのモンスターで、文字通り最強だから、ストーリー全体の展開を左右する。ゲームのプレイヤーは、デスクローのせいで、ベガスに直行できず、大きく遠回りをしなければならないんだ。だから、デスクローをどういう状況でドラマに登場させるか、じっくり考えたよ」

「フォールアウト」と「ツイン・ピークス」には共通点がある

ところで、ドラマのヒロインのルーシーの父親ハンクは、シーズン1のラストで予想外の側面を見せて、シーズン2の主要登場人物の一人になる。ハンクを演じるのが、デヴィッド・リンチ監督のドラマ「ツイン・ピークス」のクーパー捜査官で知られるカイル・マクラクラン。ハンクには、クーパー捜査官と同じ、本人は真面目なだけのに、側で見ているとどこか笑えるという雰囲気があるが、その雰囲気を狙ったキャスティングなのだろうか。

「いや、それは意識していなかった。ハンクが、クーパー捜査官っぽく見えるとしたら、それはすべてカイルがこのドラマに持ち込んだものだと思う。カイルは、デヴィッド・リンチ監督とずっとコラボレーションして、奇妙な役ばかり演じてきたからね。

でも僕は『ツイン・ピークス』には大きな影響を受けているよ。『ツイン・ピークス』は子供の頃に見たんだけど、あの番組は、僕が"テレビドラマは、野心的で、奇妙で、ダークなものにもなれるんだ"と初めて感じた作品の一つだから。

『ツイン・ピークス』の大きな魅力は、ユーモア感覚だと思う。あのドラマによって、デヴィッド・リンチは、テレビの世界に遊び心を持ち込んだんだ。それに『フォールアウト』と同じように、あのドラマも、どのジャンルに分類したらいいのかわからないよね。探偵ドラマで、ダーク・コメディで、象徴主義的だし、印象派っぽくもある」

画像: カイル・マクラクラン演じるハンク

カイル・マクラクラン演じるハンク

このドラマを、彼の兄クリストファー・ノーランは見たのだろうか。彼は原作ゲームはきっとやっていないと思うが。

「その通り、クリスはこのゲームをやってない(笑)。子供の頃は一緒にゲームをしてたんだけどね。もっとも好きなゲームは違ったけど。今でも、お互いの作品はいつも見せ合ってる。このドラマもファーストシーズン第1話の完成版前の初期カットを見せたら、役に立つ助言をくれたよ。クリスはこのドラマを見て楽しんでたと思う」

画像: ジョナサン・ノーラン

ジョナサン・ノーラン

クリストファー・ノーランといえば、ジョナサンが脚本に参加した彼の初期作品のSF感覚は、ジョナサンが持ち込んだもののような気がするが。

「そうとも言えないな。小さい頃は、2人とも『スター・ウォーズ』が大好きだったし、スタンリー・キューブリックの映画も、SFではなくても、どこかSF的な雰囲気があって好きだったし。だから共同作業というべきだと思う。 

SFといえば、僕は『プレステージ』と『インターステラー』の間に、スティーブン・スピルバーグ監督の映画の脚本に雇われたんだ。それは『未知との遭遇』の精神的な続編のような作品で、実現しなくて残念だった。それから、クリスと一緒に何本か映画を創って、それは素晴らしい体験だった。だから、僕が”自分はジャンル作品にしか興味がないんだ”と確信するのには、しばらく時間がかかったんだ。 

僕はクリスを心から尊敬しているし、『オッペンハイマー』は素晴らしい作品だと思うけど、僕は"現実"には興味がない。僕が脚本に参加してクリスが監督した映画『プレステージ』の主人公のセリフに『現実は退屈だ』というのがあるんだけど、まさにその通り。あれは主人公を通して、僕が本心を語っているんだよ」

そんなジョナサン・ノーランが胸躍らせながら描く、ここではない異世界での大冒険が「フォールアウト」にたっぷり詰まっている。

「フォールアウト」シーズン2
Prime Video にて独占配信中
©Amazon MGM Studios

This article is a sponsored article by
''.