どこか澄んだ空気感がある目黒蓮
──美空の指南役になる葬祭プランナー漆原礼二を目黒蓮さんが演じています。目黒さんのお名前を聞いてどう思いましたか。
目黒くんには、どこかミステリアスな魅力があって、佇まいが少し現実離れしている感じがあります。候補として名前が挙がったときに、「これは面白いな」と思いました。
実際にお会いすると、本当に彫刻のような佇まいで、派手に主張するタイプではないのに、その場の空気をスッと落ち着かせるような静謐さがある。アイドルとしてのオーラはもちろん持っているんですが、ギラギラしていないというか、どこか澄んだ空気感があり、それがとても新鮮で、漆原という役に合うんじゃないかと思いました。
現場でも本当に静かで、ずっとお芝居のことを考えて集中している。寡黙なんだけれど、それが周りに緊張感を与えるわけではなく、「なんとなく気になる存在」として、意識を自分に向けさせてしまう。ある意味、ムービースターの佇まいを持った俳優さんだなと感じました。
──原作の漆原は目黒さんよりも年齢が高いのですが、作品を拝見すると目黒さんでよかったと感じました。
最初は僕自身も、原作のイメージや実年齢を考えると少し若いかな、という思いが正直ありました。だから「言葉遣いや話し方で年齢感を少し上げたほうがいいのかな」とも考えたんです。
でも実際にお会いして、彼の表情や感情のあり方を見たときに、「これは変にキャラクターを作り込むより、素のままで演じてもらったほうがいい」と思いました。年齢の心配はまったくなくなりましたね。
目黒くんが持っている資質というか、彼からは若さ特有の揺れやブレがあまり感じられないんです。凛として立っている感じ。「達観している」という言葉が一番近いかもしれません。それは年齢というより、佇まいだと思いました。
──漆原を見ていると、穏やかだけれど、芯の部分がしっかりしている印象を受けました。それは目黒さんご自身が持っていらっしゃる資質だったのですね。
漆原は「ほどなく、お別れです」という言葉を伝えますが、その言葉を発するときの表情が、本当に穏やかです。遺族と故人を繋ぐ境界線に立ち、外の世界と内の世界を俯瞰して見ているような感覚になります。あの年齢で、あの表情が出せる人はそうそういないと思いました。

──漆原の役作りはどのようにされましたか。
目黒さんは今回監修に入っていただいた葬祭プランナーの方の話をかなり積極的に聞いていました。所作だけでなく、気持ちの部分も、ですね。どんな思いで遺族と接するのか、何に一番気を配っているのか、どういう心構えでこの仕事をしているのか、そういうところをとても丁寧に質問していました。
葬祭プランナーの方が「仕事中、遺族の前では絶対に座らない」とおっしゃっていたのですが、その言葉が彼の中に強く残ったんでしょう。撮影中は本番だけでなく、待ち時間でもほとんど座っていませんでした。特に葬儀シーンの撮影中は、完全にそのモードに入っていたと思います。
──漆原の納棺師としての所作の美しさに驚きました。原作には納棺師の設定はなかったと思うのですが…。
それは僕がお願いして入れてもらった設定です。
今回、葬儀監修に入っていただいた木村光希さんは『おくりびと』(2008)で監修をされた納棺師の木村眞二さんの息子さんです。いろいろお話を聞く中で、納棺の儀式をデモンストレーションとして、やってくださいました。それを見たとき、故人の着替えは単なる作業ではなく、遺族の心がだんだんと落ち着いていく時間であることを知り、強く感動したのです。
漆原の遺族への思いはセリフで説明するより、所作や姿で見せるほうが伝わる。納棺の場面こそが、漆原というキャラクターを最も雄弁に語るシーンになるに違いないと思い、原作に少しプラスさせてもらいました。
──納棺師の所作はとても難しそうでした。
そこはあまり心配していませんでした。Snow Manとしてダンスの振り付けを覚えることを日常的にやっている人なので、動きを覚えるテクニカルな部分は問題ないだろうと思ったのです。むしろ目黒さんが「納棺の儀式は遺族の心をどう落ち着かせるか、どういう時間にするかが重要。これを振り付けのようにやってはいけない。そこにどんな気持ちを込めるのかを大事にしたい」と言っていたことがすごく印象的で、胸を打たれましたね。監修の葬祭プランナーの木村さんからも「所作よりもまず気持ちが大事」と繰り返し教わっていて、その部分を彼がとても真剣に受け止めていたのだと思います。
もちろん所作自体も完璧でしたが、それ以上に「どんな思いでその動きをするのか」を大切にして取り組んでいる姿勢が練習の段階から伝わってきましたし、撮影中も特別な出来事が起こっているわけではないのに、所作を見ているだけでグッとくる瞬間がありました。
映画『ほどなく、お別れです』【"納棺の儀”はどのようにして撮影されたのか】~本作の撮影を振り返るスペシャル鼎談〜<2月6日(金)公開>
www.youtube.com──現場で、ふとした瞬間に見える素の表情や、「こんな一面もあるんだ」と思うようなところはありましたか。
目黒くんは普段からすごく静かで、真摯に物事と向き合っているタイプですが、たまに冗談を言うんです。ただ、その冗談があまりにも自然すぎて、誰も「ボケ」だと気づかないことがあって…(笑)。
一方、僕が現場でちょっとした冗談を言っても、「はい」と真顔で返されてしまう場面もあって、「目黒くんのキャラクターだと、そのボケは伝わらないんだな」と思っていました。そういうところが可愛らしいなと感じましたね。
──今回、目黒さんと初めて組んでみて、今後の可能性についてはどのように感じましたか。
完成報告会でもお話ししましたが、あれだけ忙しい中でも、「忙しいから仕方ない」という姿勢が一切なく、一本一本の作品に対して注ぐエネルギーが本当に大きいんです。毎回100%以上の気持ちで向き合っている。
だから、どんな役をお願いしても、きっと全力で取り組んでくれる人だろうなと思います。この役が合う、合わないというより、与えられた役に対して、彼なりの答えを必ず出そうとする俳優さんだと感じました。
──もう一度目黒さんと組むとしたら、どのような役どころを演じさせたいですか。
正直に言うと、「もう一度漆原をやってもらいたい」と思うくらい印象が強いですね。続編ができるなら続編でもいい! 撮り終えてからも「もう一度この人物に会いたいな」と思うくらい、漆原という存在が心に残っています。


