就職活動に全敗し途方に暮れる中、とあるきっかけで葬儀会社にインターンとして働くことになった清水美空と、そんな彼女を厳しく指導する指南役の葬祭プランナー漆原礼二がタッグを組み、“最高の葬儀”を目指す。『ほどなく、お別れです』は浜辺美波と目黒蓮を主演に迎え、「小学館文庫小説賞」大賞を受賞した長月天音の同名ベストセラー小説を三木孝浩監督が実写映画化した。“葬祭プランナー”という職業に挑んだ2人にどのような演出を行ったのか。作品に対する思いを三木監督に語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

美空と漆原は「向き合う」関係ではなく「同じ方向を見る」関係

──葬儀会社にインターンとして入り、成長していくヒロイン清水美空を浜辺美波さんが演じています。浜辺さんとは映画やMVなどで何作もご一緒されていますが、浜辺さんのお名前を聞いて、どのように思われましたか。

浜辺さんが第7回東宝シンデレラオーディションでニュージェネレーション賞を受賞し、ショートフィルム『空色物語「アリと恋文」』でデビューした10歳くらいの頃からご一緒しているので、特別な思いはありました。

今回の美空というキャラクターには、亡くなった方が見えるというファンタジー設定がありますが、それ以上に一人の人間としての佇まいがとても大事。その点で、浜辺さん本人が持っているリアルな空気感のようなものが、この役にすごく合う気がしたんです。ファンタジーを強く打ち出すというよりも、彼女自身の自然な存在感を出せたらいいなと思いました。

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──美空に自然な存在感を出すために、どのようにキャラクターを作っていかれましたか。

浜辺さんと話したのは、「美空はお客さんと同じ目線に立つ存在」ということでした。美空は観客と同じ感覚で「葬儀ってこういうものなんだ」と体験していく。ドキュメンタリー的に、葬儀というものを知っていってほしかったんです。

だから、作り込まれたキャラクターというよりは、「浜辺さん自身が実際に葬祭プランナーの方から話を聞いたり、レクチャーを受けたりして学んでいくプロセスと同じ感覚で美空が成長していく姿を見せてください」と伝えました。

──その中で「亡くなった方が見える」というファンタジー設定はどのくらいの塩梅で表現されたのでしょうか。

亡くなった方が見えるという設定を、あまりフィクションに寄せ過ぎたくありませんでした。見えなくても「そこにいるかもしれない」と感じることは誰の中にもあると思います。美空の場合はその延長線上に、たまたま「見える」だけというぐらいの感覚にしたかったのです。

だから、彼女の中ではすごく特殊な能力というより、ある意味、自然なこと。ただ、それがあるがゆえに「見えなければいいのに」と少しネガティブに思ってしまうこともある。その程度の距離感でいてほしい。あまり非日常に振り切らず、日常の延長として受け止めている感じを意識してもらいました。

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──最初は少し戸惑いながら話しかけている様子でしたが、次第にその力を受け入れ、故人の思いを遺族に伝えようと奮闘する姿に引き込まれます。

葬祭プランナーの漆原礼二に必要だと言われ、誰かの役に立ち、必要とされる力だとポジティブに受け止められるようになり、自分の居場所を見つけていく。その過程が描けたらいいなと思っていました。最終的にそれをこの二人のバディ感に繋げていきたいという思いもありました。

──美空と漆原は互いに少しずつ信頼を強めていきますね。

すごく心地よい距離感なんですよね。馴れ合っているわけではないけれど、冷たいわけでもない。ちゃんとお互いをリスペクトして、その場に立っている感じがある。

同世代の役者さんだと、現場ではわりと賑やかにコミュニケーションを取って、そこから空気を作っていくことが多いのですが、この二人は違いました。現場でも静かに、いい距離感を保っていたのです。

──「美空と漆原の関係が恋愛方向でも描かれるのでは?」と少し不安に思っていたのですが、そういう要素はまったくありませんでした。

あくまでも仕事上のバディであり、美空は先輩である漆原の背中を見ながら成長し、経験を重ねるにつれて、信頼関係も深まっていく。その距離感がとても清々しく、お互いへのリスペクトも感じられました。

──その関係性の変化は計算して演出されたのでしょうか。

計算はありましたね。物語上、二人の絆が深まっていくのは大切な要素ですが、「向き合う」関係ではなく「同じ方向を見る」関係でありたいと強く意識していました。

撮影でも、向かい合って話すより、同じ目線で、同じ方向を見ている構図を意識していました。漆原が見ている方向を、美空も見ようとする。そういうキャラクター関係が画面から伝わればいいなと思っていました。

画像3: 美空と漆原は「向き合う」関係ではなく「同じ方向を見る」関係

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