
アメリは花でいっぱいの庭を歩くのが大好き ©2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
「世界中のどこでも、光の色は同じではありません」
舞台は、1960年代の神戸。ベルギー外交官の娘として生まれたアメリが、0歳から3歳になるまで、アメリにとって世界はどのように見えていたのか。スクリーンいっぱいに、彼女の目に映る極彩色の世界が広がっていく。監督コンビはフランス出身、これまでレミ・シャイエ監督『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』や『カラミティ』などに参加し、本作が初の監督作になる。映し出されるものには輪郭線がなく、独自の明るく輝く色彩が、強い印象を残す。そのユニークな色彩感覚の原点について、ヴァラード監督はこう考えている。
ヴァラード「この映画が、独自の色彩で描かれているのは、世界中のどこでも、光の色は、同じではないからだと思います。私は日本に着いた時に、日本では光が青っぽいと感じました。ここに来る前はロサンゼルスにいましたが、そこでも光の色は、私が住んでいるフランスとは違いました。世界中のどこでも、その土地には、その土地ならではの光の色があります。だから、その場所やそれを見る人によって、独自の色彩感覚が生まれるのだと思います」

『アメリと雨の物語』の監督コンビ、マイリス・ヴァラード(左)と、リアン=チョー・ハン ©2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
また、この映画の色彩には、さまざまな意味が込められている。最初から「黒」を使わないことも決めていた。
ハン「色彩は、アメリの感情と一体化しています。アメリが世界をどう見ているのかを、色で表現しているんです。生まれたばかりの頃は、色彩がどれも輝いている。成長に従って、モノの形ははっきりしていきますが、くすんだ色が加わったり、色合いが複雑になっていきます。また、アメリの気持ちが沈んでいくと、世界の色も沈んでいきます」
ヴァラード「色は、日本の四季の移り変わりによっても変化していきます。春から始まる1年間を描いているので、春には明るかった色が、秋には沈んだ色になっていきますが、冬になると、太陽の光が雪の上に降り注いて、明るくなる」

アメリが暮らす伝統的な日本家屋の廊下に、庭の植物が影を落とす。©2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
ハン「そして、それぞれの人物を象徴する色もあります。アメリの家の家政婦のニシオさんは、太陽の暖かさと同じ黄色。家主のカシオさんは、悲しみを宿した紫色。アメリは緑色で、少しずつ変化していきます。最初は鮮やかな明るい緑ですが、さまざまなことを知って複雑な緑色に変化していくんです」
「子供は不完全な大人ではないし、無力な存在でもありません」
こうした映像表現を考える前に、まず、2人には描きたいものがあった。原作はベルギーのベストセラー作家アメリー・ノートンの自伝的小説「チューブな形而上学」。2人はこの原作に魅了されたという。
ヴァラード「描きたかったのは、人間という存在です。人間が、どんなふうに自分のアイデンティティを確立していくのか。それと、子供は、不完全な大人ではなく、無力な存在でもないというこということも描きたかった。子供が、死や悲しみ、戦争をどんなふうに感じるのか、それをアメリの目を通して描くことで、人間の深みを描きたいと思いました」

アメリはお手伝いのニシオさんと一緒に、近所の夏祭りに行く。©2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
ハン「最初に原作を読んだ時は19歳でしたが、その前に高畑勲監督のアニメ『火垂るの墓』を見ていたので、子供の目から見た戦争というモチーフも、僕の感情に訴えてきました」
ヴァラード「それに、アニメだから可能な表現もあります。『火垂るの墓』の5歳の女の子を、人間の俳優が演じるのは難しいと思いますが、アニメだから表現できる。本作のアメリも、実際に2歳半の女の子が演じるのは無理だと思いますが、アニメなら描けます」
ハン「これは不思議なことだと思うんですが、アニメの方が、実写よりも、観客が登場人物に感情移入しやすいのではないでしょうか。アニメの方が抽象的で写実的ではないのに、この映画を見た人がみんな、自分もアメリと同じ体験をしたように感じたと言ってくれました。アニメだと、登場人物と自分が一体化できる。これもアニメの持っている魔法の一つではないかと思います」

アメリは、父母兄姉の5人家族。ある日、ベルギーから祖母がやってくる。©2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
『アメリと雨の物語』3月20日(金・祝)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開 監督:マイリス・ヴァラード、リアン=チョー・ハン 原作:「チューブな形而上学」(アメリー・ノートン著) 声の出演(日本語吹替版):永尾柚乃、花澤香菜、早見沙織、森川智之 2025年/フランス/フランス語・日本語/77分/カラー 配給:ファインフィルムズ
