「実はとても努力する人」監督が見た永瀬廉の素顔
──永瀬さんには「繊細な感情の揺れをキャッチする力がある」とコメントされていましたが、演出をするうえで助けられた場面があれば教えてください。
ずっと一緒にやり取りしながら作っていったのですが、印象的だったのは、霊力[菜成1]
を使うときの所作ですね。それぞれのシーンで「どういう動きが正解なんだろう」と私自身も悩んでいました。表現としては明確に伝わらなければならないが、やりすぎにはしたくない、その上で探ったイメージを永瀬君に伝えると、「もっとサラッとしたほうがいい」と、さりげないけれど決まる形をいろいろと提案してくれて。そこはすごく助けられましたし、「これが正解だ」と思わせてくれました。
お芝居を作っていくときも、常に一緒に探っていくような感覚でしたね。ラブストーリーを描くうえで大切な、ほんの少しの感情の揺れ――さっきまで幸せだったのに、ふっと心が陰る瞬間だったり、相手の言葉ひとつで気持ちが動いたりするような繊細な変化というのは、言葉で伝えるのがとても難しい部分でもあります。
でも、たとえば私が「今の玲夜に、、照れている感じも少しほしいんだよね」と伝えると、永瀬君は「あ、わかりました」と言って、即座にそれを立ち上げてくれるんです。そういう繊細な感情のニュアンスは、説明しても簡単には伝わらなかったり、やってみてもそのように見えなかったりすることも多いのですが、永瀬君はどう見せればいいかという感覚もちゃんと持っているんですよね。
だから感情の流れを作りながら、同時にそれをどう見せるかまで考えたうえで提案してくれる。おかげで、一つ一つ段階を踏むというより、階段をポンポンと飛ばして進めるような感覚があって、本当に助けられました。
──現場で「この瞬間、玲夜だ」と感じた永瀬さんの印象的なシーンがあれば教えてください。
いろいろありますが、一番印象に残っているのは川のシーンですね。花梨に荷物を落とされて探している柚子のもとに玲夜が現れ、彼女を抱きしめて「柚子に優しくしたい」と伝える場面です。
あのセリフは、私にとって思い入れのある言葉なんです。脚本であの言葉を書けたとき、玲夜という人が自分の中でようやく立ち上がって、初めて彼の人物像を掴めた瞬間でもありました。だからこそ、その場面がどのように表現されるのか、とても大事に考えていたんです。
最初のテイクももちろん良かったのですが、どこか「もう一段上に行ける気がする」と感じて。水の中での芝居ですから、どうしようかと思っていたところ、永瀬君のほうから「これ、もう一回やった方がいいよね」と声をかけてくれたんです。きっと同じような感覚を持ってくれたんだと思います。それで撮り直した本番の芝居が、本当に素晴らしくて。
その瞬間、脚本を書いたときに自分がつかんだ玲夜の本質を、さらに何段階も深く潜って見せてもらったような感覚がありました。普段は人に心を許さない高貴さを持っているけれど、根っこの部分ではとても優しくて繊細な人――その人物像を、彼がしっかりつかんで表現してくれた場面だったと思います。

──永瀬さんと顔合わせをしたときに、「『もっと知りたい』『その世界に触れてみたい』と思わせる魅力がある方だと感じた」とおっしゃっていましたが、新たに見えてきた部分はありましたか。
本来、永瀬君はとても正直な人だと思うんです。自分に嘘をつかないまっすぐさを持っている。だから、こちらの言ったことに対して「ちょっと違うな」と思ったときは、反応が少し鈍くなるんですよね。ですから、徐々に心の距離を近づけていくような感覚で接していて、そのうちお互いの言葉が通じ合うようになってきたというか、ふっと扉を開いてくれた瞬間があったんです。
きっと彼の中には、まだまだたくさんの扉があると思うんですけれど、そのうちの一つは、監督と俳優という関係の中で開いてもらえたのかな、という感覚はありました。
それからもう一つ感じたのは、実はとても努力家な方なんだということです。永瀬君って、どんなこともさらっと簡単にやっているように見せるんですけど、よく考えたらダンスにしてもセリフにしても、本来は簡単にできることではないですよね。しかも彼はほかの活動もたくさん抱えていて、本当に休みなく働いている中で撮影に来てくれていたんです。
それでも疲れた顔を見せたり、「できない」と言ったりすることは一度もなくて、むしろ「大丈夫です、やってみます」といつも前向きなんです。その姿を見て、この人は本当にいろいろなものを抱えながらも、それを外には見せないで立っている人なんだと感じました。そういう意味でも、とても印象に残っています。
──そんな永瀬さんと、もしまたご一緒することがあったら、監督としてはどんな役を演じてもらいたいですか。
そうですね。今度はごく普通の男の子の役をやってもらいたいですね。今回は特殊な設定の役でしたよね。だからこそ思うんですが、今度は何でもない普通の人間の役というか。
永瀬君が本来持っているものって、すごく色とりどりだと思うんです。ただ、役によって出せる部分はどうしても限られてしまうじゃないですか。だから、彼の内面にあるいろいろな色を、できるだけたくさん出せるような役を一緒に作れたらいいなと思います。
たとえば、家族とぶつかったり、好きな人に一生懸命になったり――そういう日常の中で揺れる普通の感情を持った人物ですね。そんな役を演じる彼の表情を見てみたいな、という気がしています。
