あやかしと人間が共存する世界を舞台に、運命に翻弄されながらも惹かれ合う二人を描くラブストーリー『鬼の花嫁』。W主演の永瀬廉と吉川愛が演じる玲夜と柚子は、どのようにしてスクリーンの中で息づいたのか。キャスティングの裏側から俳優たちへの演出、そして物語に込めた「運命とどう向き合うのか」というテーマまで、池田千尋監督に撮影の舞台裏を聞いた。(取材・文/ほりきみき)

吉川愛が柚子を立体的にした──役作りの舞台裏

──続いて、吉川さんについてもうかがいます。「脚本を深く読み込む吉川さんの理解力は、柚子像の立体化を強固なものにしてくれた」とのことですが、彼女の解釈によって柚子というキャラクターがより深まったと感じる部分はありましたか。

いくつもありますね。脚本については、永瀬君とも吉川さんとも、撮影の途中で何度も話し合いながら進めていったんです。「このセリフは少し通らない気がする」とか、「実際にやってみると違和感がある」とか、そういうことを共有しながら、「じゃあ言い方を少し変えてみようか」と調整していきました。

その中でも特に印象に残っているのは、終盤のダンスシーンのあと、玲夜が去り、花梨が近づいてきて「お姉ちゃん、一緒に帰ろう」と声をかける。そのあとに柚子が言うセリフがあったのですが、そこがずっと自分の中で落ちきらなくて、どうしたらいいのか考えていたんです。

すると吉川さんが、「このセリフ、意味はわかるんですけど、少し言い過ぎている気がします。説明になってしまっている気がする」と相談してくれて。柚子の気持ちとして、もっと自然に出てくる言葉にできないか、一緒に考えたいと言ってくれたんです。そこは本当に時間をかけて、二人で何度も話し合いました。

「今はこう考えているんですけど、どう思いますか」と柚子を積み上げる中で生まれた感情を伝えてくれたり、「このときの柚子の気持ちはきっとこうだと思う」と彼女なりの解釈をたくさん聞かせてくれたりして。最終的には、本番当日の段取りの段階でようやく答えが見えてきました。

その前に、柚子と花梨がキャンプ場でぶつかり合うシーンを撮ったんです。花梨が「お姉ちゃん、家に戻ってきてよ」と訴えるあの場面ですね。そのシーンでの吉川さんの芝居を見たことで、答えに通じる感情を掴めたんです。、。当日にその話をして、「これだ!」と二人で確認し合って撮影しました。

結果としてたどり着いたのは、たくさん言葉を重ねなくても、柚子が何に後悔し、何を得て、そして花梨というずっと気がかりだった存在に何を伝えたいのか――その三つの感情を含んだ、とてもシンプルな言葉でした。

画像1: 吉川愛が柚子を立体的にした──役作りの舞台裏

──ラストシーンの柚子には弾けるような輝きがあって、初めの頃の柚子とは別人のようでした。段階に応じて変化をつけて演じ分けた吉川さんは素晴らしいですね。

撮影のたびに、「この前のシーンではこういう気持ちだったよね」「そこから次はこう繋がっていくよね」といったことを、毎回一緒に確認しながら進めていました。じゃあ今回はこのくらいの変化かな、という具合に、少しずつ感情の段階を共有していった感じですね。

撮影が進むにつれて、彼女の中に柚子という人物の太い軸がしっかり生まれていたので、途中からは彼女に任せて進んで良いという確信を持っていました。ただ、序盤はお互いに大変でしたね。というのも、撮影順がかなり前後していたんです。

吉川さんのクランクインも、玲夜と柚子が出会う歩道橋の場面からだったんですよ。あの日は、撮影の準備をスタッフが進めている間に、二人でかなり話をしました。柚子として積み上げたシーンも感情もまだない中で、柚子がなぜ死のうとするのかということについて、彼女自身も「自分はそういう感覚を持ったことがないから、つかむのが難しい」と言っていて。

そこで、「きっとこういう気持ちだったんじゃないか」「こういう状況だったんじゃないか」と、お互いに想像を重ねながら共有していったんです。そうやってずっと対話しながら一緒に役を作っていったことが、結果的によかったのかなと思います。

──永瀬さん、吉川さんだからこそ生まれたシーンのようなものはありましたか。

やはり、玲夜が柚子に用意した誕生日プレゼントを見せたシーンですね。あの場面は撮影の終盤に撮ったんです。そこまでに二人の関係性もできていて、いろいろなシーンを積み重ねてきた後だったんですね。

実はあのシーン、台本にはそこまで細かく書き込んでいなかったんです。玲夜が柚子にプレゼントを渡すこと、どういう言葉を伝えるか、そして手紙の内容――その大枠だけが決まっていて、あとは現場で「今日はどうしようか」と三人で話しながら作っていきました。

ですから、基本的な流れと手紙の言葉の内容だけを二人に伝えて、あとはその場で即興的に芝居を作っていったんです。もし二人の間に関係性ができていなかったら、あそこまで気持ちが通い合うシーンにはならなかったと思います。

あのシーンは丸一日かけて撮影しました。最後の「俺の名前で呼んでほしい」というくだりもワンカットで撮ったのですが、本番の一回目がとても良くて。あの瞬間、「この二人だからこそ撮れたシーンだな」と感じました。嘘のない、本当に自然なやり取りになったと思います。

画像2: 吉川愛が柚子を立体的にした──役作りの舞台裏

──そのシーンの序盤、玲夜が「柚子がきっと喜んでくれるだろう」と胸を弾ませ、どこか緊張しながらも期待に満ちた表情を浮かべているのが印象的でした。とても人間らしく、彼の心が大きく動いていることが伝わってくる素敵な場面だと思います。最後に、これから本作をご覧になる皆さんへ、見どころや注目してほしいポイントをお聞かせください。

そうですね。本作は、“あやかしと人間が共存する”という、誰も見たことのない世界を描いています。ただし、完全なファンタジーとして遠い世界を描くのではなく、「もし現代の私たちの世界にあやかしが存在していたら、こんなふうに生きているのかもしれない」と感じてもらえるような、地続きのリアリティを大切にして作りました。まずは、そのあやかしの世界観そのものを楽しんでいただけたら嬉しいです。

そして、その世界の中で、永瀬さんと吉川さんが演じる二人が出会い、恋に落ちていきます。この感情の動きはきっと誰にでも通じるもので、観る方それぞれの記憶や経験に重なる瞬間があるのではないかと思っています。ぜひ、その恋の行方を楽しみながら見届けていただきたいですね。

この作品で最も描きたかったのは、「人は運命とどう向き合うのか」というテーマです。大きく複雑な運命を背負った玲夜という男性がいて、同じく悲しい運命を抱えた柚子という女性がいる。二人は出会いますが、本当に難しいのはその“出会った後”なんです。

いわゆる「王子様と出会って幸せになるお姫様」の物語ではありません。王子様と出会った普通の女の子が、本当の意味で“お姫様”になるためには、自分自身の覚悟を決め、自分の運命を自分のものとして受け止め、掴み取っていかなければならない。そんな姿を描いています。

その部分にもぜひ注目してご覧いただけたら嬉しいです。若い方はもちろん、大人の方にも楽しんでいただけるラブストーリーになっていると思います。ぜひ劇場で『鬼の花嫁』の世界を丸ごとお楽しみください。

<PROFILE> 
監督:池田千尋 
1980年、静岡県出身。「大豆田とわ子と三人の元夫」(21/KTV・CX)、「40までにしたい10のこと」(25/TX)でザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞を受賞。「初恋、ざらり」(23/TX)で第50回放送文化基金賞ドラマ部門優秀賞を受賞。主な作品に、『スタートアップ・ガールズ』(19)、『君は放課後インソムニア』(23)、『九龍ジェネリックロマンス』(25)など。

『鬼の花嫁』3月27日(金)公開

画像: 映画『鬼の花嫁』本予告(60秒)【2026.3.27(fri)公開】 youtu.be

映画『鬼の花嫁』本予告(60秒)【2026.3.27(fri)公開】

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<STORY> 
あやかしと人間が共存する世界。優れた容姿と能力で人々を魅了するあやかしたちは、時に人間の中から花嫁を選ぶ。あやかしにとって花嫁の存在は唯一無二。一度見初めたら、生涯その花嫁だけに愛を捧げる。特にあやかしの中でも最も強く美しい“鬼”の花嫁に選ばれることは、最高の名誉と言えた。  
妖狐の花嫁である妹と比較され、家族から愛されず虐げられてきた柚子(吉川 愛)が出会ったのは、あやかしの頂点に立つ“鬼”だった。  
「見つけた、俺の花嫁――」  
鬼の一族の次期当主・玲夜(永瀬 廉)に花嫁として見出された柚子。突然の事態に戸惑いながらも、徐々に玲夜の不器用だけど優しいところや誠実な姿に惹かれていき、玲夜もまた、生まれながらに一族の行末を背負い、一人抱えてきた重責と孤独が柚子によって癒されていく。互いに居場所を見つけ、愛を確信していく2人。しかし、柚子が“鬼の花嫁”になったことを面白く思わない妹の花梨(片岡 凜)が、約者の妖狐・瑶太(伊藤健太郎)と一緒に2人を引き離そうと画策する。 柚子は玲夜の花嫁として自分がふさわしいのか、そして玲夜は、柚子が急激にあやかしの世界に巻き込まれてしまうことが本当に幸せなのか、不安を覚える。そんな中、玲夜の花嫁として柚子がお披露目となる舞踏会に瑶太と花梨が現れ… 果たして運命に導かれた2人は、真実の愛を掴むことができるのか―

<STAFF&CAST> 
監督:池田千尋 
脚本:濱田真和 
音楽:小山絵里奈 
主題歌:「Waltz for Lily」King & Prince(ユニバーサル ミュージック) 
イメージソング:「Ray」由薫(ユニバーサル ミュージック) 
出演:永瀬 廉 吉川 愛  伊藤健太郎 片岡 凜 兵頭功海 白本彩奈 田辺桃子 谷原七音  尾美としのり 眞島秀和 陽月 華 橋本 淳 嶋田久作 尾野真千子 
配給:松竹株式会社 
©2026「鬼の花嫁」製作委員会

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