あやかしと人間が共存する世界を舞台に、運命に翻弄されながらも惹かれ合う二人を描くラブストーリー『鬼の花嫁』。W主演の永瀬廉と吉川愛が演じる玲夜と柚子は、どのようにしてスクリーンの中で息づいたのか。キャスティングの裏側から俳優たちへの演出、そして物語に込めた「運命とどう向き合うのか」というテーマまで、池田千尋監督に撮影の舞台裏を聞いた。(取材・文/ほりきみき)

キャスティングで感じた確信


──鬼龍院玲夜を永瀬廉さん、東雲柚子を吉川愛さんと聞き、どのように思われましたか。

まず永瀬君に関しては、鬼という存在が現実にはいないものであり、さらに“あやかし”の世界の頂点に立つ高貴な存在でもあります。そうした意味で必要な存在の特別感が彼にとても合っていると感じました。

それから永瀬君は、繊細さを持っている方だという印象があって、その繊細な部分が玲夜という人物には大切だとも思っていたんです。そういう意味でも、ぴったりのキャスティングでした。

吉川さんに関しては、しっかりお芝居ができる、芯の強い方という印象がありました。柚子という人物を、ただ守られるだけの弱い存在ではなく、自分の意思をきちんと持った人間として描くことができるだろうと感じました。

──実際に作品で組むのは今回が初めてのお二人だと思いますが、顔合わせをしてみて、これまで作品から受けていた印象と実際に会ってみた印象に違いはありましたか。

もともと様々な作品でお二人を拝見していたので、イメージが大きく変わったということはありませんでした。ただ、実際にお会いしたことで、その人となりの深さがより見えてきたという感覚です。

永瀬君は、繊細さを持ちながらも、どこかお兄ちゃんのような軽やかさも併せ持っているんです。その絶妙なバランスが、場面ごとにふっと現れる。すごく不思議な魅力を持った方だなと思いました。同時に、自分の中にきちんと世界を持っていて、そこに簡単には踏み込ませないような雰囲気もある。だからこそ、「もっと知りたい」「その世界に触れてみたい」と思わせる魅力がある方だと感じました。

吉川さんについては、最初にお会いしたときに柚子というキャラクターについてかなり深く話をしたんです。そのときに、役をかなり的確に捉えていると感じました。脚本を読み解く力もありますし、役に対する解像度の高さが印象的でした。彼女は「柚子は家族に虐げられているけれど、それでも家族が好きで、妹のことも好きで、諦めきれない気持ちを持っている」と話してくれて。その言葉を聞いたときに、私自身も「そうか、柚子ってそういう人なんだ」と、キャラクターを実在感を持って掴むことができたんです。。

吉川さんと話したこと、そして永瀬君と話したことによって、玲夜と柚子という人物がよりリアルに立ち上がってきたという感覚でしたね。「きっとこの二人なら、こういう玲夜、こういう柚子になっていくんだろう」という膨らみが見えたというか、キャラクターの基盤をもらったような気持ちでした。

画像1: キャスティングで感じた確信

──今、柚子については吉川さんと話すことで、柚子というキャラクターの輪郭がさらに膨らんでいったとおっしゃっていました。では、永瀬さんと話すことで、玲夜という人物について脚本を読んだとき以上に膨らんだ部分はありましたか。

永瀬君は、最初にお会いしたときはあまり多くを語らず、私が監督として何をしようとしているか探っているような印象でした。

映画全体のトーンをまずは理解しようとしていたんだと思います。彼の中にもきちんとイメージがあって、特に衣装や“あやかし”という存在の立ち上げ方について、とても気にかけていました。あやかしをどういうプランで作っていくのかという部分について、かなり話し合ったんです。私自身としては、この作品で“妖怪”を作りたいわけではなくて、あくまでもラブストーリーの中にある存在として美しいあやかしを描きたかった。リアリティラインを慎重に押し上げる方向で、現実世界の延長線上にある存在として表現したいと思っていました。やりすぎることなく繊細に作っていきたいという話をしたんですけれど、永瀬君もそれを聞いて「安心しました」と言ってくれて。霊力の使い方にしても、「派手にやりすぎるのは違うと思う」と話していましたし、繊細なバランスを探りたいという考えを持っていたんですね。そこはお互いに感覚が共有できたので、「これでいけるな」という手応えはありました。

その上で、彼が持っている存在感やスター性を最大限に活かすことができるか、それが肝だと思いました。


──あやかしと人間が共存する世界を描いた作品と聞き、拝見するまではファンタジー色の強い作風なのかと思っていました。ですが実際に観てみると、冒頭はとても現実に近い世界が描かれていて驚きました。だからこそ共感しやすいと感じました。

ありがとうございます。実はそこは、この作品を作るうえで一番気をつけたところなんです。あやかしと人間が生きている世界だからといって、私たちとはまったく違う別の世界として描くのではなく、観ている方が「もしかしたら、こういう世界が本当にあるのかもしれない」と感じられるようにしたかったんですね。

もし現代の日本にあやかしが生きていたら、こんなふうに共存しているのかもしれない。あるいは、自分もその世界の一員なのかもしれない。そんな感触から物語の中に入ってもらえたらと思っていました。ですから、虚構とリアリティのバランスを取ることをいつも以上に慎重に探りながら、作品全体を作っていきました。

画像2: キャスティングで感じた確信

──永瀬さんは本格的なラブストーリー映画の主演は初めてとのことですが、監督はどんな演出やアドバイスをされましたか。

これまでラブストーリーを何作か作ってきて思うのは、ラブストーリーで一番大事なのは、好きな人に対して生まれる非常に繊細な心の揺れを取り落とさず掴めるかということなんです。大切に思う人の言葉やちょっとした反応ひとつで、こちらの気持ちが嵐のようにも揺れてしまう。そうした繊細なやり取りや感情の変化を丁寧に掬いとっていきたいという話はしました。

それから玲夜は高貴な存在で、人に簡単に心を許さない人物でもあります。でも柚子と出会ったことで、戸惑ったり、間違えたり、時には可愛らしい一面が見えたりと、これまでとは違う感情が少しずつ表れてくる。その不器用さの中に多面的な感情が見えてくるところを、いかに魅力的に、豊かに描けるかということは特に意識していました。

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