“クリエイター・山下智久”――作品を動かす発想力と実行力
──山下さんは本作に製作としても名前を連ねていらっしゃいますね。
今回、山下さんは“クリエイター”として、さまざまな形で作品に関わってくれています。アメリカロケでも、「こういう風にやってみたい」といった演出面の提案や、「永瀬が英語を話せるようになったらどうか」といったアイデアを積極的に出してくれました。
映画の中には、永瀬がギターを弾きながら“正直ソング”を歌うシーンがあるのですが、「どんな曲にするか」という話になった際、「ぜひ作詞をやらせてください」と自ら申し出てくれて、実際に詞も手がけています。
現場ではリハーサルをほとんどしなかったのですが、当日に僕が「こんな感じでやりたい」と伝えると、すぐに意図を理解し、その場でアレンジしながら、ギターも自然に弾いて、そのまま歌い上げたんです。通常、歌唱シーンは事前に収録した音源に合わせて口パクで撮影することが多いのですが、今回はすべて同録。それでもまったく緊張した様子がなく、カメラを2台、3台回して「せーの」で一発撮りでした。しかも、ギャグを織り交ぜながら、お芝居でもアドリブを入れてくる。本当にすごい人だなと思いましたし、まさにエンターテイナーだと感じました。

──さすが山下さんですね。
本当に凄まじいですよ。スペシャルドラマでのミネルヴァ不動産との対決シーンで、笹野高史さんの前でラップを披露する場面があったのですが、あれも実は僕が現場でいきなり振ったんです。
もともと、あの大家さんのキャラクターを「カラオケ大好き人間」にしたいというアイデアがあって、現場にカラオケマシンを置いてもらっていました。そこで、風が吹くタイミングで山下さんに「はい」ってマイクを渡してみたんです。「マイクを持って喋ったら面白いかな」くらいの気持ちだったのですが、そうしたら彼、いきなりラップでワーッとやり始めて(笑)。
台本には「ラップ」なんて一言も書いてなかったんですよ。いつものように風が吹いて正直な心の声を喋るシーンだったのですが、マイクを渡された瞬間にラップで返すという……。あの瞬発力とサービス精神には「面白い人だなあ」と脱帽しましたね。
──山下さんは座長の視点で、作品全体のクオリティや「観客にどう届くか」といった俯瞰した意見を出されることもありましたか。
俳優さんも、僕ら演出家も、現場にいると「主観」で物事を見て突き進んでしまいがちです。それなのに、山下さんのすごいところは、演者としての主観だけでなく、常に「客観的な視点」を持って作品を俯瞰で見ているところです。
「このシーンを物語全体の中で捉えた時、こうした方がより面白くなるんじゃないか」といった視点で意見をくださる。一つのシーンに固執するのではなく、映画全体がどう観客に届くかを冷静に、かつ深く考えている。その「物語として捉える力」は、本当に素晴らしいなといつも感心させられます。

──10代の頃から山下さんを知る監督から見て、改めて彼の「成長」や「変化」をどのように感じていらっしゃいますか。
「成長」なんて言うのはおこがましいくらいですが、彼は昔から根本的な部分は変わらないですね。ただの役者ではなく、歌って踊れて、演じられて、そして自ら「クリエイト」もできる。僕にとっては、単なる演者を超えて、共に作品を創り上げる「相談相手」のような存在です。
ドラマのシーズン2の最終話だったと思うのですが、当日の朝になって「このシーン、もっと面白くなるんじゃないか」と僕が迷ってしまったことがあって。メイク中の山下さんのところへ行って「ごめん、台本と違う気がするんだけど、こういう風にできないかな?」と相談したんです。彼は「もっと早く言ってくださいよー(笑)」なんて言いながらも、本番では台本とは全く違う、けれど「なるほど、そう来たか!」と思わされる見事な表現をしてくれました。台本には「日常に戻って営業している永瀬」と一行書いてあるだけだったのですが、彼は自分から「風」を吹かせて、「嘘だけど本当はさ……」と永瀬の本音を爆発させたんです。彼が加わることで、ドラマも映画も何倍にも面白くなる。演出側の意図を正確に汲むだけでなく、それを軽々と飛び越えてくる面白さを提示してくれる、非常に貴重な表現者だと思います。
それは、彼が高校生で「ランチの女王」(2002)に出ていた頃も同じでした。竹内結子さん、江口洋介さん、妻夫木聡さん、堤真一さんといった凄い顔ぶれの中でも、彼は全く気後れせず、飄々と芝居を楽しんでいた。その「いい意味で変わらないスタンス」が、今の彼の凄みにつながっているのだと感じます。
<PROFILE>
川村泰祐(かわむら たいすけ)
1968年9月27日、千葉県野田市出身。
NHKで放送されたドラマ「正直不動産」から演出を務める。
<監督作品>
『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』(2010年)
『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 〜勝どき橋を封鎖せよ!〜』(2011年)
『映画 ひみつのアッコちゃん』(2012年)
『L♡DK』(2014年)
『海月姫』(2014年)
『ガールズ・ステップ』(2015年)
『きょうのキラ君』(2017年)
『愛唄 -約束のナクヒト-』(2019年)
『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』(2019年)
『東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ』(2022年)
『映画おそ松さん 人類クズ化計画!!!!!?』 (2026年6月12日公開予定)

映画『正直不動産』5月15日(金) 全国公開
5月15日(金)公開‼【予告60秒】映画『正直不動産』正直者は“夢”を見る!?
www.youtube.com<STORY>
登坂不動産の営業マン・永瀬財地(山下智久)は、かつて地鎮祭の準備中にある祠(ほこら)を壊した祟りにより、嘘をつこうとすると強烈な風が吹き、本音しか言えなくなってしまった男 。嘘がつけないせいで契約を破談にしながらも、カスタマーファーストがモットーの後輩・月下咲良(福原遥)や仲間たちの助けを借りて、何とか正直な営業スタイルを模索し続けている。高級車に乗り再びタワマンに住むという野望を抱きつつ、課長昇進をかけて同僚たちと競争する一方、永瀬と月下は、嘘と陰謀が渦巻く巨大な不動産問題に直面する―。
顧客が巻き込まれた海外の不動産投資詐欺、かつて嘘もいとわず営業成績を勝ち取っていたライアー永瀬時代に仲介した物件をめぐる家賃滞納や近隣トラブル。元同僚の不動産ブローカー桐山貴久(市原隼人)が故郷であるけやきの市で東京ドーム4個分に相当する6万坪の土地を舞台に進める、謎の大規模開発計画。そして、「不動産売買は殺し合いだ」と豪語するライバル会社、ミネルヴァ不動産が仕掛ける、悪質かつ巧妙な史上最悪の地上げ。
嘘がつけない男・永瀬財地は、己の「正直」を武器に、月下と共に、不動産を巡る様々な思惑や人間模様などかつてない難題に「正直」に向き合い、人々の笑顔と街の未来を守るために立ち向かっていく―。
<STAFF&CAST>
脚本原作:大谷アキラ(漫画)夏原武(原案)水野光博(脚本)『正直不動産』(小学館「ビッグコミック」連載中)
監督:川村泰祐
脚本:根本ノンジ
音楽:佐橋俊彦
出演:山下智久 福原遥 市原隼人 泉里香 長谷川忍 見上愛 松本若菜 西垣匠 伊藤あさひ 財津優太郎 馬場徹 松田悟志 山﨑努 吹石一恵 岩﨑大昇(KEY TO LIT) やべきょうすけ 福士誠治 吉澤健 市毛良枝 ディーン・フジオカ 大地真央 / 倉科カナ 高橋克典 草刈正雄
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©大谷アキラ・夏原武・水野光博/小学館
©2026 映画『正直不動産』製作委員会


