〜今月の3人〜
斉藤博昭
映画ライター。カンヌの是枝さんにzoom取材した翌日、ウルトラマンのドキュメンタリー観たら是枝さん登場で驚き。
米崎明宏
映画ライター/編集者。今月は『シラート』にも注目。往年の『恐怖の報酬』や『眼には眼を』を思い起こさせる!
渡辺麻紀
映画ライター。グローグーのおっきな耳がついたカチューシャがお気に入り!
斉藤博昭 オススメ作品
『シラート』
見終わった後、多くの観客が
受け止めきれない感情で呆然となるのでは?

評価点:演出5/演技3/脚本4/映像5/音楽5
あらすじ・概要
砂漠でのレイブパーティに参加し、行方不明になった娘を探そうと、父親とその息子がモロッコの奥地へ到着。さまざまな証言から、娘が向かったとされる辺境の地へ車を走らせる父子だが、その先で思わぬ悲劇が待つ。
ここ数年の傾向で、冒頭から大がかりな「見せ場」を用意する映画が増えている。緩やかな滑り出しだと、観る側にすぐ飽きられる…という強迫観念。配信が一般化したことで、つまらなければすぐストップ。別の作品に移られる危惧が増幅しているからか。そんな潮流に、本作は一切、乗る気配を見せない。正直言って、冒頭からしばらくは、どんな物語に発展するかカオスな状態。野外レイブの混沌さも相まって、登場人物たちの言動もやや落ち着かない。しばらくその状態に身を委ねていると、中盤あたりで、思わず声が漏れる衝撃のシークエンスが用意され、そこからラストまでは緊張感と恐怖、生きる喜びなど、あらゆる要素がハイテンション。観終わった後、多くの人が受け止めきれない感情で呆然となるのでは?
絶壁、砂漠といったアフリカの地形も効果的だし、何より全編にわたって、重低音のサウンドデザインが本能を刺激しまくる。突発的で不条理な悲劇も次々起こるが、見方によっては、じわじわとした苦しみより幸せかも…と錯覚させるのも、本作の魔力!
(公開中、トランスフォーマー配給)
© 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,
FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L., 4A4 PRODUCTIONS
米崎明宏 オススメ作品
『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』
アクの強い名優2人が
横綱級の演技合戦を見せる異色のスリラー

評価点:演出4/演技5/脚本4/映像4/音楽3
あらすじ・概要
老判事のステファンは脳卒中のリハビリを兼ねてケアハウスに入所する。そこにはセラピー用の指人形、ジェニー・ペンを手に、他の入所者にいじめや虐待を行うデイヴという老人がおり、ステファンに目をつける…。
老人向けケアハウスを舞台にしたスリラーで、ジョン・リスゴーとジェフリー・ラッシュというベテラン2人が入居者役で激突する、と聞いただけで元々老人映画好きの私などはワクワクしてしまう。ラッシュがジェームズ・アシュクロフト監督から「『何がジェーンに起ったか?』に『カッコーの巣の上で』を足したような作品」と最初に説明されたそうで、確かにわかるが、そこに人形が加わることで、リチャード・アテンボロー監督の『マジック』で味付けしたような独特の異色作になった。
リスゴーもラッシュもアクの強い名優だが、今回はお互いに他人を寄せ付けない頑固爺さんを演じ、この二者の戦いぶりが大きな見どころになる。人形と共に施設の入居者をいびって支配するリスゴーが勿論悪役だが、自分が絶対正義と信じている老判事のラッシュも一歩も引かず対抗する。横綱同士の大一番を見ているような演技合戦で、それだけでも見応えがある上に、ジェニー・ペン人形の悪魔を思わせる存在感も面白く、長く記憶に残りそうな一作だ。
(公開中、エデン配給)
©2024 Hyenas Rule Ltd
渡辺麻紀 オススメ作品
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』
シリーズ始まって以来のモンスター映画であり
父と子の物語でもある

評価点:演出4/演技5/脚本4/撮影4/音楽4
あらすじ・概要
帝国の崩壊から5年ほどが経った銀河。帝国の残党を追う共和国軍のウォード大佐に、行方不明のジャバ・ザ・ハットの息子ロッタの捜索と救出を依頼されたディン・ジャリン。彼は相棒のグローグーとともにある惑星に向う。
「スター・ウォーズ」7年ぶりの劇場映画! ということで期待が高まっていた『マンダロリアン・アンド・グローグー』だったが見事に裏切られてしまった。ただし、いい意味で。というのも本作、シリーズ始まって以来のモンスター映画になっていたからだ。「スター・ウォーズ」ならではのキャラクターはほぼ登場せず、主人公のディン・ジャリンはひたすらモンスターたちとバトルを繰り広げる。さらに、助演的役割を果たすのが、あのジャバ・ザ・ハットの実子ロッタ。そう、だから、描かれるのは巨大ナメクジの悩みや葛藤なのだが、本作のストーリーとメッセージを支えているのはまさにそこ。宇宙の犯罪王だった父親の生き方を嫌い、まっとうな人生を歩もうとするロッタと、血のつながりもなければ種族も違うのに強い絆で結ばれているディン・ジャリンとグローグーを対比させ、父子の在り方を問いかけてみせる。

無邪気でちっちゃなグローグーの頭を撫でながらロッタが口にする「いいお父さんだな」というセリフが胸に迫ってしまった。
(公開中、ウォルト・ディズニー・ジャパン配給)
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