笑えるのに怖い──山元環監督が語る身体的ホラーの“表裏一体”の演出
──砂田将宏さん演じる流星の「大炎上シーン」や坂巻有紗さん演じる千明の「屋上での異様な動き」など、ハードな身体的な動きを伴う恐怖シーンがありました。コミカルな動きの中に怖さも感じさせる演出は、難しかったのではないでしょうか。
ものすごく難しかったですが、実は「観ていて思わず笑ってしまってもいい」と思いながら演出していました。もともとホラーとコメディは表裏一体だと思っていて、「そんなのアリ?」という突飛さを面白がる要素がホラーにはあるはずだからです。
真面目にやりすぎてまとまるよりも、「一見コメディに見える動きも、切り取り方や撮り方次第で強烈な恐怖や気持ち悪さに化けるんじゃないか」という実験精神を大切にしました。
身体の不気味な動きに「パキッ」という首の音響を乗せることで一気に生理的な恐怖へ昇華させるなど、ホラー専門ではない自分だからこその手探りのアプローチで、バラエティ豊かな身体的恐怖表現に挑戦できたと思っています。


──スマホ内のAI動画から、シュールな可笑しさと残酷な恐怖が同居する独特な映像美を感じました。どのようなバランスで作られたのでしょうか。
ベースに持っていたのは、「何に恐怖を感じるかは人それぞれ全く違う」という考え方でした。僕にとっては犬がすごく可愛く見えても、別の人にとっては恐怖の対象だったりするように、感覚のベースは一人ひとり違いますよね。
だからこそ「一般的にはこれが怖いよね」というステレオタイプな恐怖は極力排除しました。それよりも、僕自身が感覚的に思う「個人的な怖さや気味悪さ」を、どうすれば映画というフォーマットに乗せて観客へ届けられるかを一番重要視したんです。
AI動画のシーンなどは僕自身もかなり楽しみながら作っていたので、面白さやシュールさの要素も多分に入っています。でも、もし自分が見たことも作った記憶もない「自分が映った不気味な動画」がスマホに届き、「これを見たら死ぬ」と分かっていたら、笑うよりも「え、なにこれ気持ち悪い…」というゾッとする感覚が勝つと思うんです。
そこをベースラインとして不気味な世界観を担保しながら、自分の中にある個人的な不快感や恐怖をどう拡散させて届けるか。そこが今回の映像表現において一番の肝でした。

<PROFILE>
山元環 / 監督・脚本
1993年1月22日生まれ、大阪府出身。大阪芸術大学映像学科を卒業。文化庁委託事業「ndjc2018:若手映画監督育成プロジェクト」で短編映画『うちうちの面達は。』を監督。2020年、短編『ブラック』が京都国際映画祭 2020クリエイターズファクトリーエンターテイメント映像部門にてグランプリを受賞。BUMP配信ドラマ「今日も浮つく、あなたは燃える。」の切り抜き等がSNSで総再生回数4億回を超え話題に。近年は日本テレビ「夫婦が壊れるとき」、テレビ東京「沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call」などを監督。さらに映画『この夏の星を見る』で商業映画デビューを果たし、第17回TAMA映画賞で最優秀新進監督賞を受賞した。

『呪いのスマホ』11月13日(金) 全国公開
映画『呪いのスマホ』予告/. (金)公開
www.youtube.com<STORY>
事故で親友を亡くしたことをきっかけに“視える”ようになってしまった孤独な女子高生・榊ユラ(早瀬憩)は、同級生たちと立入禁止の旧校舎を掃除することになった。
そこで彼らが見つけたのは、ボロボロになった一台のスマホ。
突如起動した画面から流れる〈不気味な動画〉を見てしまったユラたちは、呪いのスマホと繋がってしまう。そして届き始める【自分が死ぬAI動画】──それを受け取った者から順番に、“同じ最期”を辿っていく──。
同級生たちが次々と殺されていく中、ユラは呪いの元凶【木の下さん】の存在を知る。しかし、それはさらなる恐怖の幕開けに過ぎなかった──。
果たしてユラは、この呪いとのつながりを断ち切ることができるのか?そして、その先に待ち受ける【恐るべき結末】とは──。
ほら、今も──この呪いは、いつでも【あなた】を見ている。
<STAFF&CAST>
監督:山元環
脚本:山元環 森野マッシュ
音楽:網守将平
出演:早瀬憩、窪塚愛流、井手上漠、坂巻有紗、萩原護、砂田将宏(BALLISTIK BOYZ)、平松想乃、菊地姫奈、戸田彩巴、朝日奈まお、伊礼姫奈、片桐涼、篠原篤
主題歌:「Call」ao(ビクターエンタテインメント)
配給:松竹
©「呪いのスマホ」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/noroi-sumaho/


